【ブログ】とよよんマルシェと東雲会(千葉大・園芸学部)

2023年の春の訪れは早く、様々な桜が各地で満開に(これから咲く品種もあります)。世界情勢が混沌の度を深める中、今年の花はいっそう心に沁み入ります。

写真は国立昭和記念公園(東京・立川市、2023.3/21)

3月25日(土)は、一転して冷たい雨になりました。
 そのなか、東京・江東区にあるUR豊洲4丁目団地で開催されていたのは「とよよんマルシェ」。初めて伺いましたが、毎月第4月曜日に定期的に開催されているとのこと。

強い雨が落ちていますが、キッチンカー “eat for” には行列ができていました。「食べることで、社会貢献に」と書かれた幟がはためていています。
 屋内では、北軽井沢から来られた生産者の方による野菜、ポップコーン、フラワーポットなど。なみへいさんは地域特産品等を出展されていました。

コミュニティとは縁遠く感じられる都会の大規模団地ですが、ここにも地域づくりの活動をされている方たちがいらっしゃいます。

ごはんパン(おから入り、長野・小海町)、鉄火味噌(秋田・潟上市)、くるみクッキーなど求めさせて頂き、千葉・松戸へ向かいます。
 園芸学部のキャンパスもソメイヨシノが満開。

13時30分から、千葉大・園芸学部100周年記念 戸定ヶ丘ホールで開催されたのは、第4回東雲会。
 園芸学部OBやゆかりのある方たちが中心となった研究会で、コロナ禍のため2019年の第3回以来の開催となりました。テーマは「園芸ビジネスのイノベーションの深化の方向をさぐる」、参加者は50名ほどです。

斎藤 修座長座長(千葉大・名誉教授)により開会。
 斎藤先生には大学院で指導を頂きました。著作も多く、最新著『果実のフードシステムと産地の戦略』における川中・川下分野と連携したクラスター(産地再編)論、ブランドなど知的財産管理の議論は、日本農業全体にとっても重要な示唆を含んでいます。

冒頭、松岡延浩 副学長による「千葉大学の研究・教育の新たな展開」について紹介。
 本年1月、大学院園芸学研究院の附属機関として宇宙園芸研究センターが開設されたそうです。

最初の報告は、佐藤和憲先生(東京農業大学教授)による「フードシステムの変化と生産・加工・流通のチェーン構築」。
 野菜消費量が減少傾向にある中、全国の様々な事例を紹介されつつ、農業法人の育成、新規就農者への所得補助、契約の標準化の取組等を通じたバリューサプライチェーン構築の重要性等を強調されました。

斎藤座長からは、早く出版をとの注文(?)とともに、ネットスーパーの拡大、量販店のバイヤーの減少等の動きについてコメントがありました。

第2報告は、秋葉一彦さんによる「30年後を考えて」と題する話題提供。農林水産省の政策情報分析官ですが、個人の立場からの報告とのこと。
 みどりの食料システム戦略、種苗産業の現状等について説明された後、「農業の担い手の減少は抗えない事実であり、30年後を想像して、それぞれの立ち位置を越えて連携して行動していきましょう」と訴えられました。

斎藤座長からは、生態系サービスの概念が政策においても重視されるようになったことは高く評価できる等のコメント。

最後は、佐藤哲哉さん(農事組合法人つまごいみのりファーム代表)から「キャベツ経営の革新と産地の戦略」と題する現地報告。
 キャベツ農家の長男で、2018年(32歳の時)に経営移譲され2021年に法人化。キャベツを中心に、周年就労のために花豆、馬鈴薯、アイスクリーム加工に取り組み。現在、鹿など獣害の増加、肥料など生産コストの増加、業務向けに対応した生産(1玉1kg→1.2kg)等が課題になっていること等を紹介して下さいました。

座長の進行により、会場の参加者との間で全体討論。
 第1報告をされた佐藤和憲先生からは、コロナ禍による業務用需要がどこまで回復するかがポイントであり、産地では安値時に補填するための基金設立の動きがあること等の紹介。

長野・佐久の野菜農家の方からは、気候変動が激しく、契約した数量の出荷が安定的にできなっている現状について話して下さいました。

農水省で新事業・食品産業を担当している方からは、価格転嫁の面等から注目されているフランスのエガリム法について、そもそも法体系が異なるなど直ちに日本に適用するには課題が多いことを含めて紹介。

東京大学の研究員の方からは、これまで日本で語られてきた水田農業中心の文脈(農業は環境保全に寄与)を世界標準である生態系サービス(農業は環境に負荷を与える産業)のロジックにすり合わせていくことが必要であること、管理不十分なため池をどうするか等の視点も重要であること等のコメント。

最後に斎藤座長から、千葉大学は園芸学部との制約はあるものの、土地利用全体、あるいは生態系の視点からの議論が必要である等の全体的なコメントがありました。

会場を移動。雨はほとんど上がり、満開の桜の木の下には近所の家族連れの姿も。
 17時過ぎから、緑風会館2階の大学生協食堂で立食の懇親会が開催されました。
 斎藤先生始め大学院で指導頂いた先生方に改めてお礼の挨拶もでき、新たに知り合いになった方と懇談もできました。リモートでは味わうことのできない喜びです。
 それにしても、研究室にこもる訳ではなく、政府の審議会等で活躍されるだけではなく、常に「現場」を重視し、現地を訪ね、現地の方たちと意見交換しながら研究を続けて来られた斎藤先生の人脈の広さに、改めて感服した次第です。

ちなみに、このような懇親会はどうしても食べ残しが多くなるのですが、この日は若い人たちを中心に食堂が準備して下さった容器に入れて持ち帰り、ほとんどロスは出ませんでした。
 自給率向上もバリューチェーン構築も、食べものを大切にすることが基本です。

追伸
 27日(月)、郷里である徳島の農家の友人・Kさんから春にんじんが届きました。
 Kさんは大学の同級生。勉強熱心で、卒業後も千葉大等で開催された学会や研究会に一緒に参加した仲です(斎藤先生とのお付き合いは、私より長いです)。
 さっそくスティックに切って頂くと、郷里の春の香りが感じられました。レンジでチンすると優しい甘みが引き立ちます。

周りの人達にもお裾分けさせて頂きます。有難うございました🥕