【ほんのさわり264】宮台真司『日本の難点』

−宮台真司『日本の難点』 (2009/4、幻冬舎新書)−
 https://www.gentosha.jp/store/ebook/detail/1599

著者は1959年宮城県生まれの社会学者、評論家。
 昨年11月29日夕、教授を務める首都大学東京での講義を終えて1人でキャンパス内を歩いていた際、男に襲われて重傷を負ったとのニュースには驚きましたが、その後、快復されて活動を再開されていると伺い安堵しています。なお、容疑者とみられる男は12月に死亡(自死)が確認されています。

本書は少し前の著作ですが、分析されている「難点」は、現在、さらに先鋭化・顕在化しているようです。
 著者の見立てによると、現代は「社会の底が抜けて」おり、その理由は「郊外化」にあるとのこと。

 郊外化とは、コンビニ・ファミレス的な〈システム〉が、地元商店的な〈生活世界〉を全面的に席巻していく動きのことを指します。この結果、家族や地域は空洞化し、社会は包摂性を失い、様々な事件や問題(例えば2008年の秋葉原連続殺傷事件)が生じているとするのです。
 これらを解決するための処方箋の一つとして、著者が掲げているのが「スローフード運動」です。これは、単に有機食品を食べるといったものではなく、「食が、近隣農業を支え、近隣農業が経済やライフスタイルや風景や町の匂いや近隣文化を支えることの自覚」であるとのこと。つまり「値段が少々高くなっても、顔の見える仲間のために作り、売り、買う」ことが、「世直し運動」につながるとして高く評価しています。
 一方、共同体には維持コスト(絆コスト)がかかるということにも言及されています。

そして、柳田圀男も参照しつつ、国土保全をキーワードに、農業、環境、道路、分権化、内需による経済成長等の面で、多くの消費者を「新しい社会運動」に動員することが必要としています。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
  No.264、2023年4月5日(水)[和暦 閏如月十五日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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