【ブログ】基本法改正と生物多様性(今夜はご機嫌@銀座で農業)

2023年の季節の歩みは早く、4月中旬には「夏日」も出現。
 自宅近くに一画を借りている市民農園。昨年は夏野菜の作付けが遅れたので今年は早めにと思い、4月17日(月)、いつもお世話になっている種苗店に行くと、野菜苗の販売は22日(土)からとのこと。
 この日は枝豆の種だけ求めて、播種しました。
 マルチは数年使っており、ぼろぼろ。ネット張りは、いつまでたっても上手にできません。

19日(水)の夕刻は、中央区立環境情報センター(東京・京橋)へ。18時半から「今夜はご機嫌@銀座で農業」が開催されました。
 蔦谷栄一先生(農的社会デザイン研究所)を中心に、おおむね月1回開催されている勉強会です。

主催者の高安和夫さん((一社)トウヨウミツバチ協会)から、開会挨拶と講師の紹介。
 この日は(公財)日本自然保護協会の藤田 卓さんから、「持続可能な農業の実現に向けて-生物多様性の観点から、食料・農業・農村基本法改正に期待すること」と題して報告を頂きました。
 藤田さんは日本オーガニック会議にも実行委員として参画されており、基本法改正に向けての農水省との意見交換会(3月29日)にも参加されたそうです。

(以下、文責中田)
 「これまで農業にはあまり関わってこなかった。生物ばかり追いかけ、レッドデータブック作成等に携わってきたのだが、里山の危機的な状況をみて、自然資源、生物多様性を活かした持続可能な社会・農業への転換が必要と強く思うようになった」

 「農業は、生物多様性を基盤とする生態系サービスの恩恵に受けて成り立っている。ハチやハナアブなど野生種を中心とした昆虫の作物生産(受粉)への貢献は、日本の農業産出額の8%に相当。天敵として病害虫を抑制する役割も」

「農地における生物多様性の状態は、土地改良、化学農薬・肥料の使用、耕作放棄等により急速に失われつつある。モニタリング調査結果では、身近なチョウの1/3が急激に減少していることが明らかになった。持続的な農業を支える基盤(生物多様性)が劣化している」

 「子どもの健全な成長のためにも自然体験は不可欠。人口の変遷等を見ても、現代は歴史的な大転換の真っただ中にあるのでは。自然資源を守り、生かしながら、地域の社会的課題の解決に貢献するという考え方(Nature-based Solution)が必要」

「イギリスやEUでは、環境支払制度の生物多様性保全への効果についてのアウトカム評価を行い、制度改善に活かしている。環境保全が交付金の受給条件となっている」
 一方、日本の多面的支払い交付金は、施設の長寿命化による資源保全に資するとの名目で水路のコンクリ化にも支出されているなど、生物多様性の低下を招いている面もある」

「日本自然保護協会は、本年3月28日、食料・農業・農村基本法改正への提言を行った。
 法律の目的に自然環境保全を位置づけ、農地の生物多様性の保全と持続的な農業を実現させること、多面的機能の定義(現在は農業は環境へのプラスの機能のみを想定)を見直すこと等が内容」

最後に、自然保護協会の活動についても紹介して下さいました。
 モニタリング調査は市民(地域の専門家、NPO、自然観察指導員(ボランティア)等)の参加を得て実施しているからこそ、調査データは地域における保全活動や普及活動に活かされているとのことです。

(一社)日本自然保護協会のホームページより。

後半は、参加者との間で意見交換。
 モニタリング調査に、ぜひ参加したいという方も。

私からは、
 「食料自給率ひとつとっても、日本とヨーロッパでは大きく水準が異なる(カロリーベース食料自給率(2019年):日本38%、イギリス70%、フランス131%等)。日本では高齢化や農地の荒廃化も進んでおり、日本では農業自体の持続可能性をより重視せざるを得ない状況にあるのではないか。
 また、農業は環境に大きな負荷を与えているというのが世界標準の認識。
 生物多様性についてのヨーロッパと日本の政策が異なってる背景には、これらの事情もあるのではないか」とコメントさせて頂きました。

最後に蔦谷栄一先生からは、
 「生物多様性の議論は重要。有機農業の拡大をうたう農林水産省『みどり戦略』には、自然循環機能の考え方が欠落している。日本ではヨーロッパと異なり、水田や里山における土壌微生物の働き等を通じて、農業は自然と一体的に営まれてきた。日本の豊かな自然は農業が育んできた面がある。
 これが分業化、近代化により失われないよう、基本法見直しに臨んでいく必要がある」等のまとめのコメント。

終了後は、同じビルの中にある(いつものお店は予約できず、ちょっと高級な)中華料理屋さんで懇親会。このお店、昨年6月に来たときにはガラガラで、ほぼ貸し切り状態だったのですが、この日は何組かのグループが盛り上がっていました。
 コロナ禍も一段落し、街も飲食店も賑わいを取り戻しつつあります。この状況が続けばいいのですが。