−白川真澄著『脱成長のポスト資本主義』 (2023/4、社会評論社)−
https://www.shahyo.com/?p=11707
著者は1942年京都市生まれ。かつて60年安保闘争、ベトナム反戦運動、三里塚闘争等に関わり、現在はピープルズ・プラン研究所などで研究・普及、ネットワークづくり等に取り組んでおられます。私も、高坂勝さん(SOSAプロジェクト)と共催されている「脱成長研究会」に何度も参加させて頂くなど、多くの学びを頂いています。
本書によると、現代の世界は深い危機(ウクライナ戦争、新型コロナの流行、気候危機、社会内部の格差の拡大と分断等)のただ中にあり、資本主義という現代の支配的なシステムは行き詰まりを見せているものの、予想以上の強い延命力を持っており、その手直しや自己修正では問題は根本的に解決できないとしています。
処方箋として著者が提示しているビジョンが、脱成長経済への転換です。
経済活動を自然生態系の循環の中に埋め戻す(グリーン化)とともに、蓄積されたストックを活用する共有型(シェアリング)経済へとシフトするというものです。
また、経済の中心を、社会的に必要性が高いモノやサービスを供給する部門に移すべきともしています。これは具体的には、ケア(医療や介護、子育て、教育等)の分野で、これらの比重が高まるにつれて経済成長はダウンするものの、今後の労働者の賃金は、社会的必要性という基準によって決定されるべきとしています。
<食>については、グローバル資本主義に対抗し、その支配に風穴を開けていくうえでカギになるとの記述もあります。食についての市民と農民の自己決定権を取り戻し強化することの重要性が強調されます。
さらに、住民の参加・協働と地方政府との連携によって、公共サービス<コモン>の民主的管理を実現すべきとして、ヨーロッパ等におけるミュニシパリズムの流れについての興味深い事例も紹介されています。
そして、著者は「多くの地域で市民が主導権を発揮して左翼・リベラル・グリーン派の地方政府を実現」させ、「グローバル資本と国家の支配体制を蚕食する拠点」とし、全国レベルの「よりましな政権」を目指すべきとしています。
しかし、その具体的なプロセスや手段については必ずしも十分には明確となっていないと感じました。本日(5月20日)の出版記念会で、ご本人に直接伺ってみようと思っています。
(参考)ピープルズ・プラン研究所
https://www.peoples-plan.org/
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.267、2023年5月20日(土)[和暦 卯月朔日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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