【ブログ】夢育て農園オープンデイ、中山間地域フォーラム

2023年7月。九州など西日本では記録的な豪雨が続く一方で、関東地方では猛暑日も。
 家の近くを散歩していると、突然、何かが目の前にポトリと落ちてきました。見ると、タマムシ。指で突くとひっくり返りました。裏(腹)側も鮮やかな色彩です(ごめんなさい)。

自宅近くに一画を借りている市民農園。
 今年も日本の気候・風土の植物生産力の高さを思い知らされています(雑草でジャングル状態)。

キュウリ、ナス、トマト、ピーマン、ししとう、オクラなど夏野菜が真っ盛り。
 枝豆も今のところ豊作です。しかし、あちらこちらにカメムシの姿。早めに収穫してしまった方がいいかも知れません。 

7月7日(金)は七夕。空からお金でも降ってこないかな(それはタナボタ)。
 翌8日(土)はロシアがウクライナに侵攻して500日目、この間1万人以上の市民が犠牲となっているそうです。
 ウクライナの反転攻勢が始まる中、ロシアは原発に爆発物を設置し、アメリカは「禁じ手」クラスター爆弾を提供するとのニュース。ますます事態は混迷化しているようです。

さて、この日は世田谷区桜丘にある「夢育て農園」の月に1度のオープンデイ。
 NPO法人ユメソダテ代表の前川哲弥さんとは「農あるまちづくり講座 in 世田谷」で知り合い、この日のオープンデイのことも教えて頂いていたのです。

 夢育て農園では、知的障害のある方々を対象に、畑作業をしながら、認知・身体機能を高める活動などを実践されています。いわゆる「農福連携」の取組みといえます。

小田急線の千歳船橋駅から、徒歩10分ほどで到着(日差しはありませんが、蒸し暑いな~)。
 障害のある方を含め、前川さんご夫妻とつながりのある20名ほどの方たちが、除草や畝づくりなどの活動中。やはり講座でご一緒だった小谷あゆみさん(農業ジャーナリスト)の姿も。
 畑の脇はみかん畑になっていて、冬の収穫祭は近所の方で賑わうそうで、加工品も作っておられます。

 点と点をペンでつないでかたちを作る、認知能力を強化していくというフォイヤ―シュタイン教材も見せて下さいました。面白そうです。

 お忙しい前川さんご夫妻の手を休めさせ、お話を伺うこともできました。この日は何のお手伝いもせず、早々に失礼。
 なお、次回のオープンデーは8月6日(日)10時からとのこと。次の機会には、しっかりと作業モードで伺いたいと思います。

文京区の根津へ。小田急線はメトロ千代田線と相互乗り入れしており、乗り換え不要で便利です。

13時から、東京大学弥生講堂の一条ホールで中山間地域フォーラムの設立17周年記念シンポジウム「ポストコロナ期の集落の未来~ローカルコモンズの役割は何か~」が開催されました。
 冒頭、野中和雄副会長により「弥生講堂での開催は4年ぶり。基本に立ち返って議論したい」との開会挨拶(なお、文責は全て中田にあります)。

図司直也氏(法政大学現代福祉学部 教授)による解題。
 「ポストコロナ局面での中山間地域では高齢化・人口減少が一段と進行。定点的に調査に伺っている地域でも人がいなくなっている印象。中山間直払いのアンケートでは集落機能維持の実感が低いとの結果も。地域の問題が農業・担い手の問題に矮小化されているのではないか。
 現場へのプッシュ型支援の必要性が高まっているが、農政だけではなく多様な周辺主体からの関わり方が課題では」等の問題提起。

続いて生源寺眞一会長(日本農業研究所、前 福島大学食農学類長)から、「中山間地域の現代的価値を考える~ローカルな知恵に学びながら」と題して特別講演。

 ご自身の調査・研究、中山間地域との交流を振り返りつつ、概要、以下のような講演をして下さいました。
 「日本の農業は二本立て(市場経済・ビジネスの上層と、コミュニティの共同行動のもとで機能してきた基層)。共同行動の典型は農業用水の維持管理と公平な配分。これは日本型のコモンズと呼べるもので、多くの都会では失われてしまった日本の文化的資産としての側面もあるのでは。中山間地域は、人と人がつながる共同の価値を実感できる空間であることが再認識され始めた

 「日本のローカルなコモンズの経験をグローバルに活かす構想が現代の課題。一方、輸送・通信手段が格段に発達した今日では、集落を共同行動の基礎単位とすること自体も再考の対象」

「農業の多面的機能について、そもそも金銭に換算しなければ価値が分からないとすれば情けない話。(金銭に換算できない)歴史との出会いや各地域の個性への共感こそが大切」

 「成長一本鑓の時代は終焉しつつあり、ロシアの軍事侵攻により国際環境も激変。日本らしいローカルな知恵の継承と創造が問われている。農地への逆転用などゾーニング制度の再チャレンジも必要では」

 「農業自体の価値を再認識することも大切。人間の思い通りにならない生き物を相手にする農業の難しさ・面白さ・達成感。農業の本質は教育にも通じる。
 極度に便利で効率的な現代社会に住み慣れ、食料を何の苦労もなく手にできる私たち現代人は、生き物としての能力に劣化が生じている面もあるのではないか」

続いて田口太郎氏(徳島大学)から「地域づくり~集落自治の枠組みを問い直す」と題する研究報告。「最初に百貨店が無くなった」徳島県の農村地域に移住されているそうです。
 「地域にとって『人口』の意味を再整理(労働力・消費者、地域社会の担い手、地方交付税の算定基準等)した上で、地域にとって『人口減少』がどのように問題になるかを捉えることが重要」であるとし、
 「地域の維持に必要な労力と、価値観の多様化もあってさらに減少する担い手との間のギャップ(地域の衰退感、自治の空白)が問題。この自治の空白を埋めていく方策として、地域外の者を含む多様な担い手によるネットワーク型自治の可能性があるのではないか。フェーズごとに支援していくことが必要」等と、分かりやすく報告して下さいました。

後半の事例報告とパネルディスカッションは、所用のために失礼させて頂きましたが、久々のリアルの大会場でのフォーラム参加は刺激的でした。
 生源寺先生や小田切徳美先生とも改めてご挨拶させて頂き、思いがけず懐かしい方に再開することもできました。

 何より生源寺先生のご講演は、中山間地域への愛情と、日本/世界の現状への危機感が溢れており、心の奥に重くしっかりと響いてくる内容でした。