【豆知識273】米の生産・消費量と食料自給率の推移

戦中戦後は、日本の歴史上もっとも深刻な飢餓に見舞われた時代でした。
 米は1941年4月に配給制に移行し、成人の配給量は一人一日当たり二合三勺 (約330g)と定められました。これを1年間に換算すると約120kgになります(1945年には約108kgに削減)。
 遅配・欠配が常態化していたとはいえ、実はこの量は、現在の米消費量(50kg超)の2.3倍に当たります。それでも、多くの戦災孤児等が飢えて亡くなっていきました。
 添付先の折れ線グラフにあるように、米の消費量は、現在まで一貫して減少しています。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/08/273_kome.pdf

ちなみに、やや余談ながら、宮沢賢治『雨ニモ負ケズ』には「一日ニ玄米四合ト 味噌ト少シノ野菜ヲタベ」とありますが、これだと年間約200kgに相当します。肉体労働が中心で副食が乏しかった時代は、必要なカロリーのほとんどを米から摂取していたのです。

戦後、日本人のライフスタイルと食生活は大きく変化しました。肉体労働が減少する中、畜産物や油脂の消費を数倍に増加させることで、米から摂取するカロリーの減を補って余りあるカロリーを畜産物や油脂から摂取してきたのです。
 しかし、畜産物や油脂等の生産のための飼料や原材料の多くは輸入に依存しています。食料自給率も低下を続け、先日公表された2022年度においてはカロリーベースで38%となっています。

一方、米の国内生産量は、消費減に対応して生産調整を続けてきた結果、現在は約730万トンにまで減少しており、すでに戦中戦後の水準を下回っています。一方、人口は1.7倍に増加しており、一人当たりに換算すると、米の生産量(配給可能量)は50kg程度と戦中戦後の半分以下に過ぎません。
 万が一の最悪の事態(輸入食料の途絶)に備えるのが安全保障であるとすれば、現在は危機的な状況と言えるのではないでしょうか。

データの出所:以下の資料から筆者作成。
 農林水産省「食料需給表」、同「作物統計(作況調査、長期累年)」、食糧庁「食糧管理史 各論別巻(参考資料編)」等
   https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html
   https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kome/index.html
   https://rnavi.ndl.go.jp/mokuji_html/000001167911.html

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.273、2023年8月16日(水)[和暦 文月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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