自宅近くに一画を借りている市民農園。
9月に入っても、ナスは元気です。というか、栽培方法もかけた手間も例年と変わらないのですが、今年は異常にと言っていいほど実を付けてくれます。気候条件が合ったのでしょうか。
右の写真の長ナスは30cm近くあります。先日、数日開けて岡山から帰省した際には、長さ50cm、太さ5cmを超えるものも収穫しました。ほとんど月刊「ムー」にある未確認生物です。
むろん、自然の恵みと思えば有難いことですが、まだしばらくナスざんまいの食生活が続きそうです。
2023年9月4日(月)の明け方は強い雨。
台風と熱帯低気圧の接近で天候不安定ななか、東京・新宿の K’s cinema(ケイズシネマ)へ。ミニシアターですが、椅子も広く新しく快適な空間です。
14時05分から上映されたのは、ドキュメンタリ映画『鯨のレストラン』。
『The Cove』への反論として2015年に発表され、国際的に大きな波紋を起こした「ビハインド・ザ・コーヴ」から8年越しとなる八木景子監督の新作ドキュメンタリ。様々な関係者の証言や科学的データが盛り込まれています。
かつて鯨肉は、日本人が最も多く消費していた食肉だったのが、現在は1%程度に減少しており、鯨産業や飲食店、さらには食文化が喪われつつあるという現状。
神田にある鯨料理店の大将は、外国人を含む様々な客に多彩な鯨料理を出しつつ(ハンバーガーやパスタやラーメンも!)、鯨肉が栄養豊富である食材であることをさりげなく説明します。
最初はためらいがちに箸を着けた子どもの表情が、美味しさにほころぶ瞬間。
国際的な場での反捕鯨論を「文化的帝国主義、環境植民地主義と一緒だ」と断ずる元ワシントン会議の事務局長。
人間の消費量以上の魚を鯨が食べているという現実、ヴィーガンの広がりが大豆畑造成のために森林伐採につながっている様子なども。
資源管理や環境問題を多角的に考えるヒントが満載されています。
上映後には、八木監督のトークもありました(文責・中田)。
「かつて最も多く消費されていた鯨が、現在、ぞんざいに扱われていることに危機感を抱いている。海外の環境保護団体等の『外圧』により、鯨の食文化が喪われかけている」
「前作は海外の大手メディアでも取り上げられたことに世界の反捕鯨活動家が反応、国際ハッカー集団の攻撃により映画館等のHPはダウンし、警察から私に警告の電話もあった。正直、今でも怖い。そのようななかケイズシネマさんが上映して下さっていることに感謝」
「国際的な世論が科学ではなく感情論で流されているなか、映画業界でも通常の配給は難しく、クラファンなど個人での活動が中心となっている。Netfrixで世界配信もしている」
「現在の日本で鯨肉がまだ高い理由は、水産庁が『外圧』を恐れていること、母線式捕鯨会社は1社のみになって競合がないこと、大手メディアがこれら問題点を報道しないこと等。問題はあまりにも大きく、どこを切り口にすれば分からない。心が折れそうに感じることも」
「それでも、本映画について多くの方が口コミやSNSで広めて下さっているのは有難い。ぜひ多くの方に観て頂きたい」と、語っておられました。
観客との間で質疑応答なども。
映画館を出ると、道路は濡れていましたが雲の合間から陽が射していました。
監督の熱意に触れてしまった以上、この日は鯨を食べずに帰る訳にはいきませんと、新宿の老舗のお店へ。
鯨の刺身全盛は、お店にある全ての部位(赤身、さえずり、本皮、ベーコン、ハツ、鹿の子、尾の身、美脂)が入っているそうです。
ナガス鯨竜田揚げはレアで柔らかく、山椒焼きは香ばしく、鯨ではありませんが「むきたて生ほやの刺身」は全くクセはありませんでした。
お酒は、この日は定番の浦霞ではなく、同じ宮城・塩竈市の阿部勘を。すっきりとして美味です。
最後は鯨汁と「まっくろおにぎり」まで頂いて、満腹、大満足です。ご馳走様でした。
映画館で求めさせて頂いたパンフレットには、日本では縄文時代以降、鯨の骨や髭が実用品や工芸品として使われてきたという歴史(「SDGsのモデルケース」)、各地に残されている供養塔(食べものへの感謝)、浮世絵に描かれているユーモラスな姿なども紹介されています。
世界的に食料危機が叫ばれている現在、世界中から大量の食べものを輸入している日本にとって、鯨は、歴史や伝統文化とも密接につながった持続可能な食料と言えるのかもしれません。
私はコオロギや人造肉ではなく、これからも美味しい鯨を食べ続けていきたいと思います。