【ブログ】私が巻き寿司に巻き込んでいるもの(食と農の市民談話会 3-4)

2023年11月6日(月)の午後は、文京区内をぶらりプチ歴史散歩。わだつみのこえ記念館も訪ねました。今年は学徒出陣からちょうど80周年目に当たります。
 「心ならずも」戦場に散った先人たちの直筆の遺書や日記を前にすると、言葉にできることはありません。ぜひ多くの方に訪ねて頂きたい記念館です。

自宅近くに一画を借りている市民農園。
 妻がネットで勉強してチャレンジした「菌ちゃん農法」を試した畝では、白菜など冬野菜がすくすくと育っており、周りの区画と比べても一段と立派です。味も楽しみです。

11月8日(水)の19時から、東京・神田の47都道府県レストラン「箕と環」で、食と農の市民談話会 Season3 第4回「巻き寿司に巻き込んでいるもの−八幡名子さんの思い−」を開催しました。個人で手弁当での主催ですが、今回も約30名の方が集まって下さいました。
 早い時期に先着順で満席となり、お断りした方もおられました(申し訳ありません)。

これまでと同様、会費に含まれているワンドリンクを手に席に着いていただきます。
 まず私からスライドを用いて「食と農との距離を縮め、顔の見える関係づくり」を目指すという「食と農の市民談話会」の目的、これまでの開催実績等を説明。

当日の中田の説明資料より(抄)

さらにトピックス的に、お米の現状(長期的に消費量は大幅減、近年の資材価格の上昇、本年産の予想収穫量は「平年並み」であるものの一等米比率が低下していること)について説明。
 最後に、山形・長井市の「百姓」・菅野芳秀さんの言葉を紹介しつつ、「今日は菅野さんのお米もお出しするので、産地や生産者のことを想像しながら食べて頂きたい」とお願いしました。

続いて、箕と環の川野オーナーから、「地域の生産者や事業者の皆さんを応援したい。イベント等でも多くの人がつながっていく場ともしたい」等のお店の紹介。

そして、本日のゲストである八幡名子さんからのプレゼンに移りました(以下、名子さんと呼ばせて頂きます。ご発言内容等の文責は中田にあります)。
 「大阪出身で東京・主婦で本業は映像制作。2018年度から巻寿司(特任)大使を務めている。

 農に出会ったきっかけは『東北食べる通信』。今まで何も考えずに食べてきたが、あらゆる食べ物は誰かが作っていることを学び、農家さん、漁師さんに申し訳なく思った。
 まずは地元の八王子のことを調べ、高倉大根などの個性豊かな伝統野菜があることを知った。生産現場を訪ね、生産者に会いに行くようになり、農家さんのご苦労を目の当たりにした。消費者は農業生産現場のことをもっと知る必要があると思った」

スライドは当日の名子さんの説明資料から(一部)。

「微力ながら自分にできることとして、巻き寿司をツールに生産現場や農家さんの想いを伝えていこうと思った。巻き寿司の普及に取り組んでいる(株)あじかんさん(広島市)との出会いもあった。巻き寿司は、地域特産品など食材一つひとつの色や形が分かり、丸く仕上げることで平和にもつながると思う」

 「巻寿司(特任)大使となって、自宅や小学校での巻き寿司教室、豪雨被災地(広島、愛媛)や、野菜ソムリエなど団体からの依頼を受けての巻き寿司講座を実施してきている。
 2021年3月には『巻き寿司屋さん』をオープン。8つの丸からなるロゴは豊かな個性を表している。お預かりした大切な食材を美味しく販売した」

「本日のお寿司に使っているお米は磯沼ファーム、野菜は浜中園(いずれも八王子市)、ウサギの眼に使っているのは加藤淳さん(岩手・盛岡市)の黒千石大豆。ちなみに加藤さんの『秘伝枝豆』は、今年は猛暑で大不作だったとのこと。
 「生産現場を知ると美味しいものに出会える。知らなければ損。お金だけで価値は計れない」
 実際に生産現場を訪ね、生産者たちとの交流を続けてきた名子さんのお話は、参加者の皆さんの心に深く刺さったようです。

巻き寿司の実演(デモ)もして下さいました。
 お寿司を巻く名子さんの手元をスマホで撮影し、スクリーンに映写します(初めての挑戦でしたがうまくいきました!)。
 このタイミングて、2種類の巻き寿司を各テーブルに配膳。

 太巻きは「昨日の節分から1日遅れたため、具材はラッキーセブンから一つ多い8種類にした」とのこと。
 ウサギの飾り巻き寿司については、
 「ウサギは今年の干支。娘が生まれ、東日本大震災が起きたのも卯年だった。12年前の大震災は、多くの人にとって当たり前だと思っていたことを考え直すきっかけになったのでは。
 今年は20年近く住んだマンションから引越しするなど、私の人生は卯年をきっかけに何かが変わっているという気がしている。そんな想いを巻き寿司で表現したい」と語られました。

後半は、懇談と交流の時間です。
 箕と環さんが準備して下さったこの日のメニューは、塩蔵わかめ(岩手・大槌)、青パパイヤのサラダ(京都)、ヨコワの一口刺身(島根・浜田)、太刀魚とムシガレイの南蛮漬け(福島・いわき)、松坂牛の肉味噌そぼろ(三重・松坂)、雉の手羽先/元の甘辛煮(愛媛・鬼北)。あじかんのごぼう茶汁。そして菅野ファーム(山形・長井)のつや姫の新米です。
 追加ドリンクはキャッシュオンです(一杯500円程度)。

これも恒例、参加者一人ひとりから自己紹介や感想などをお願いしました。この日は八王子を中心に多くの名子さんファンも参加して下さっています。

「名子さんの巻き寿司に込める想いを受け取ろうと一生懸命に聞いていたのが、その想いは私の頭から溢れてしまうほどだった」
 「それぞれの食材の後ろに生産者さんがいることが見えるようになった。食材や生産者を大事に思えるきっかけを、巻き寿司というかたちでで私たちに知らせてくれてよかった」
 「具材は何でもいいということだったので、さっそく自分でも巻き寿司を作ってみたい」
 「育ち盛りの孫もいて食べ物には関心がある。初めて自宅で水菜などを作ってみたが、その大変さが分かった。しかし食べてみるとおいしくて感動した」
 「名子さんの魔法のような巻き寿司づくりに驚嘆しつつ、農業者への敬意や食料自給率の低さについて学び合う場にもなった」等のコメント。

名子さんの心のこもったお話のお陰で、この日も盛り上がりました。
 個人で手弁当での主催は色々と大変でもあり、また、多くの方にご迷惑もお掛けしたかと思いますが、参加者の皆さまの心に残る内容になったかと自負しています。

 「農の現場」は危機的な状況にあります。それはすなわち、私たち自身の「食」が危機に瀕していることでもあります。
少しでも「食と農の間の距離」を短縮し、消費者自らが(私自身も一消費者です)、食と農について主体的に考え、エシカルに実践できるようになっていくための取組みを、細々ながら、今後とも続けて行ければと考えています。