【ブログ】有機稲作セミナー(埼玉・小川町)

自宅近くに一画を借りている市民農園。
 大豊作だったナスはようやく勢いを失いつつあり、そろそろ片付け。お疲れ様でした。有難うございました。
 菌ちゃん畑の白菜等は豊作の予感。
 大根、ニンジン、ホウレンソウ、春菊は、結局、発芽は揃わないまま。やはり遅すぎたかも。

2023年11月21日(火)は久しぶりに埼玉・小川町へ。
 日記(ブログ)を確認すると、前回訪問したのは2019年9月の霜里農場見学会の際。故・金子美登さんもお元気だっことを思い出しました。

 正午前に東武東上線・小川町駅着。
 小川町の野菜が主役の日替わりシェフのレストラン・べりカフェに向かっていると、高橋優子さん(NPO生活工房つばさ・游)が出迎えて下さいました。
 金子農場等の野菜のサラダはお代わり自由。ごはんも食べ放題。
 ヘルシーハンバーグは、地元のお豆腐屋さんが地場産大豆で作った豆腐が使われているとのこと。ケーキの栗の渋皮煮も地元(スタッフの方のご自宅)産。
 地産地消ランチ、ご馳走様でした。

13時過ぎ、地元の農家の方の車に同乗させて頂いて向かったのは町内上横田にある田んぼ。
 今年から始まった有機稲作セミナーの6回目を、見学させて頂きました。

 ちなみにこの地域は、本年1月、「比企丘陵の天水を利用した谷津沼農業システム」として日本農業遺産に認定されています。
 谷津(やつ。谷戸とも)とは、丘陵地が浸食されて形成された谷状の地形のこと。この地では谷津ごとに天水のみを水源とする多数のため池(谷津沼)を築き、谷津田の農業用水を確保してきた地域です。

13時30分過ぎ、主催者のお一人である高橋さんから挨拶。
 参加者は地元の生産者など15名ほどで、県内の他の地域から参加されている方も。11月下旬とは思えない暖かさです。

 続いて、この日の講師である(公財)自然農法センターの三木専門技術員から、「美味しさと環境との親和性を実現させる稲作のためには、ストレスを少なくして気持ちよく育てることが必要。田んぼの状態をよく見て今から備えることが必要」等の説明。
 その後、早速、全員で田んぼに移動しました。

地元の方から地形などの説明。
 すぐ近くに上流(ため池)からの取水口があり、なだらかな傾斜に沿った14枚もの谷津田に水が供給されているうです。

 一番手前の田んぼには、ひこばえ(稲刈り後の株に再生した稲穂)が生え揃い、株間には様々な雑草が生えています。三木さんによると、雑草の種類である程度、土壌の状態が分かるとのこと。
 サンプラーを突き刺して土壌の状態を説明してくれる三木さん。鉄分の青い色は通気が不十分であることを示しているとのこと。

畔ぎわに水はけをよくするための溝を掘ることが有効として、実際に溝掘り器を使って実演して下さいました。この機器、触られてもらいましたが、思ったより軽くてスコップ等に比べれば簡単に溝を掘ることができます。 

 乾きやすい田んぼは深く、湿っている田んぼは浅く耕すのが基本とのこと。また、分解を促すためには、稲わらは持ち出し、ひこばえは根とともに細かく裁断して鋤き込むことがポイントだそうです。

2枚目の田んぼは、水が浮いていました。水分計も使って測定。田んぼによって全く土壌の状況は異なります。
 さらには1枚の田んぼでも、場所によって状況は異なるようです。

14時40分頃に田んぼでの研修は終了し、座学のために集会施設に徒歩で移動。日が傾いてきました。

 その前に、高橋さんがすぐ上にあるため池に案内して下さいました。
 天水のみに依存しているという、大きなため池です。多くの水鳥が驚いて羽ばたいて飛び立ちました。昨シーズン、猛威を振るった鳥インフルエンザの悪夢を思い出してしまいます。

地区の集会施設(上横田会館)に向かう途中、バイパスをくぐった先にも谷津田は続いています。なかには遊休化している田んぼも。
 途中にある輪禅寺は、武田信実(武田信玄の異母弟)一族の菩提寺とのこと。

集会施設では、まず、主催者である立正大学谷津田イノベーション研究会の後藤真太郎先生(地球環境科学部 教授)からの挨拶。日本農業遺産の認定に向けても尽力された方です。

 続いて三木さんから、「有機イナ作の安定生産に向けて-秋処理のポイント」と題する講義。詳しいレジュメも配って下さいました。
 有機稲作のスタートは秋であり、ごまかしは効かないとのこと。理想的な田んぼの状態、耕うんのメリット/デメリット、秋処理は土壌が濡れていれば無理をしないなど、具体的なデータとともに丁寧に説明して下さいました。

参加者からの熱心な質問も続き、終了したのは予定の17時を過ぎていました。
 外に出るとすっかり暗くなっていて、中天に半月が輝いています。冷え込んできました。

 町の中心部にある⼩川宿・鴻倫(こうりん)へ。昨年10月、築100年の老舗旅館をリノベーションしてオープンした素敵な建物です。
 三木さん、後藤先生も交えて、ビールと美味しい食事を頂きながらの交流会。私はプルコギ定食を頂きました(美味!)。
 歓談中も、地元の生産者の方からは来年作付けする品種をどうすればいいかなど、真剣な質問が出されていました。

左は小川宿・鴻倫HPより。

2021年3月に農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに有機農業に取り組む面積の割合を25%(現在は0.6%)まで引き上げるという意欲的な目標が掲げられています。
 この目標実現のためには、AIや除草ロボットなど先端技術の開発・応用も必要ですが、地域の実情に応じたきめ細やかな対応が必要であることを感じた研修会でした。気候や風土はもとより、同じ田んぼの中でも土壌は場所によって異なるのですから。