【ブログ】「いまこそ語ろう!生きたい社会のポリティクス」

2024年2月3日(土)は、埼玉・西所沢の子どもマルシェ等(素晴らしい循環・交流の取組みでした)を訪ねた後は、東京・世田谷区下北沢に向かいました。
 かつて、ふくしまオルガン堂があった頃にはしばしば訪れた地ですが、久しぶりです。

 小田急の線路が地下化してできた広いスペースでは、ライブや豆まきイベントが行われており、多くの人で賑わっていました。

徒歩数分の北沢タウンホールへ。
 ここで14時から開催されたのは「いまこそ語ろう!生きたい社会のポリティクス」。ビッグイシュー日本語版創刊20周年記念のトークイベントです。
 受付で、この日、登壇される岩本さん、さこうさんも登場されている “The Big Issue, vol.459” も配って下さいました。広いホールはほぼ満席です。

冒頭、『ビッグイシュー日本版』編集長・共同代表の水越洋子さんから、
 「様々な市民が『生きたい』と思える社会を目指すために一人ひとりに何ができるのか。みんなで最後まで熱い時間を過ごしたい」との開会挨拶。

続いて、岸本聡子さん(杉並区長)、岩本菜々さん(NPO 法人POSSE学生メンバー)、さこうもみさん(武蔵野市議会議員)が登壇されました。

トークは3名の自己紹介から始まりました。
 以下は、特に印象に残ったご発言の一部です(順不同。文責中田)。

 岸本さん
 「ヨーロッパで市民運動を支援するNGOに勤務していたが、縁があって2022年7月から杉並区長を務めている。1年半、自治体の中で社会正義、環境正義を実現するために働いてきた」

 さこうさん
 「クラウドファンディングで資金集めをサポートする仕事をしていた。やりがいもあったが、給食のない夏休みになると子ども食堂のプロジェクトが増えるなど、民間ではなく本来は公的に対応する課題も多いのではないかと思うようになり、2023年4月から市議に」

 岩本さん
 「NPO法人POSSEの学生ボランティア。若者の貧困問題に取り組んでおり、『奨学金帳消しプロジェクト』等に携わってきた」

続いて、お互いに質問し合うかたちで議論が深められていきます。
 活動の原動力について聞かれた岸本さんは
「社会不正に対する怒り。グローバル化の進行等により権力・資源配分の不平等が拡大している。“NO”ではなく“YES”で、民主的にみんながかかわる自治で現状を変えていきたい」等の発言。

 さこうさん
 「生きられるようにすることが基礎自治体の義務。野菜の値上りで暮らしが苦しくなっているが、スーパーの野菜の値段も知らないような議員が多いことには違和感を覚える」

 岩本さん
 「2010年代は『生きづらい世の中』と言われたのが、現在は『生きていけない世の中』になっている。貧困問題は底が割れてしまっている」

ケアワークが重要な話題となりました。
 さこうさん
 「風呂にしても洗濯にしても、ケアが存在していること自体に気付いていない人(高齢男性?)が多いのではないか。保育士が兼業していたことを理由に解雇されたというニュースがあったが、兼業しなければならないような仕組みを変えていくことが必要」

 岩本さん
 「介護に携わる方たちの賃金は低いことからも、ケアが軽視されていることは明らか。一度に30人以上がやめた地域もあるなど、人手不足も深刻化している。労働者自らが声を上げることも必要と痛感している」

 岸本さん
 「ケアワークの多くは女性、あるいは非正規職員が担ってきた。ケアされるばかりで、ケアしたことのない人が政治の意思決定を行っている。
 ケアに携わる事業者は民間であっても公的資金が入っており、納税者として運営の透明化、民主化を求めていくことが必要。経営の論理だけで運営しているような事業者が淘汰されていくような社会にしていくことが必要」

住まいについても議論が深められます。
 さこうさん
 「武蔵野市では家賃もどんどん上がっている。断熱が進んでいないことも問題」

 岩本さん
 「国の統計によると路上のホームレスは減っていることになっているが、ネットカフェ難民は増えている。『家あって当たり前でしょプロジェクト』を立ち上げ、行政と交渉して宿泊施設を確保できた経験がある」

 岸本さん
 「住むことは権利で、生存権は全ての人に保証されなければならない。住まいは公共交通と同じか、それ以上に重要。日本ほど断熱が進んでいない国はない。低所得者にも暖かくて快適な住まいが保証されるべき」

(チラシより。)

会場との間での質疑応答では、多くの人の手が一斉に挙がりました。
 現場で様々な課題に取り組んでいる方たちも多く、社会問題や選挙に関心のない人をどのように巻き込んでいくか、地域コミュニティを再生するにはどうすればいいか等の、切実な質問が出されました。
 順次、3名の登壇者から丁寧な回答。

岩本さん
 「余裕のない若い人たちが選挙に関心を持てないのは、ある意味で当然ではないか。生きるのに精いっぱいということ自体が政治的イシューなのに、代弁してくれる候補者はいない」

 さこうさん
 「かつての地域コミュニティの核となっていたのは、専業主婦とリタイアした元気な高齢者だった。これからのコミュニティは、近所や世代ではなく、課題(イシュー)を意識することでつながっていくのがいいのではないか」

 岸本さん 
 「自分が持っている権利を意識し、当事者同士がつながることが重要。ヨーロッパでは農民によるトラクターデモ等が盛んに行われている。声を上げなければ社会は変わらない。小さなことからでも声を上げ、経験値を積んでいくことが重要。
 区の職員も含めて、地域に入って体験することが楽しいと思えるような、クリエイティブなアクターを増やしていきたい」

ちなみに私も途中で手を挙げ、以下のような趣旨で発言させて頂きました。
 「野菜が値上がりして大変という話があったが、エネルギーや資材の高騰により生産者も苦しんでいる。消費者は値上がりを嘆くだけではなく、ぜひ、再生産が可能となるような価格を受け入れてほしい。学校給食を含め、地元や地方の生産者との連携も進めて頂きたい」
 この日は「食」にかかわる議論が少なかったのが少々残念でした。もう少しご発言を引き出すように、うまく質問できれば良かったと反省。

 熱気のこもったトークイベントは、あっという間に2時間が終了。
 若い世代の女性の活躍(しっかりとした発言と行動)の様子を目のあたりにした高齢男性(私)としては、早く社会からリタイヤした方がいいのか、それとも邪魔しないことを意識しつつ、できることを地道に続けていけばいいのかなど、個人的に考えさせらることも多い有意義なイベントでした。

ちなみに、この日は節分でした。
 西所沢の「こどもマルシェ」で求めてきた長ネギも具材にして、巻き寿司をつくりましたが、今年も綺麗にはできませんでした。もっとも、見た目はともかく味は上々(長ネギもアクセントとなって美味でした。自画自賛)。
 もうすぐ和暦でも新しい年を迎えます。(節分の日に長々とした拙文、失礼しました。)

(ご参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、登録無料)
 https://www.mag2.com/m/0001579997