【メルマガ】F.M.Letter No.134

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.134◇
 2018年1月1日(月)[和暦 霜月十五日]発行
────────────────────
◆ F.M.豆知識  お節を食べた人の割合は過去最低
◆ O. カレント 『和暦日々是好日』
◆ ほんのさわり 『サケが帰ってきた!』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
────────────────────
 明けましておめでとうございます。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信してきた本メルマガ、今号は霜月十五日の配信です。偶然にも西暦2018年の元旦に重なりました。
 本年も分かりやすく役に立つ情報発信に努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いします。
 さて、今号はせっかく(?)ですので「お正月」特集にしました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるようなデータの断片を、毎回一つずつ、コツコツと紹介していきます。

-年中行事として「お節料理を食べた」人は過去最低を更新中-

 お正月の料理といえば、お節。これについて注目される調査結果があります。
 博報堂生活総合研究所は、1992年から隔年で生活者の意識調査を実施しています。同じ質問を繰り返し投げ掛けることにより、その回答の変化を定点観測できるというものです。
 その内容は暮らし向き、衣・食・住、遊び・学び・働き、日本の行方、地球環境など幅広いものを含んでいますが、「02暮らし向き」なかに「1年以内にした年中行事は何ですか?」という質問があります。

注目されるのは「お節料理を食べる」と答えた人の割合です。
 1992年には86.6%であったのが、ほぼ一貫して低下しており、2016年には70.9%となりました。調査開始以来、最低の水準です(リンク先の図88)。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2017/12/88_oseti.pdf

これを年代別にみると、60代では78.1%と比較的高いのに対して、20代は全体より約11ポイント低い59.8%となっており、1992年に比べて20.4ポイントと大きく低下しているのです(実は40代は、20.6ポイントさらに大きく低下)。

一昨年、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
 これは単に献立としてではなく、多様で豊かな自然に育まれた「日本人の伝統的な食文化」として登録されたものです。
 しかし、その世界に誇るべき和食の文化は、肝心の日本国内(特に若い世代)においては衰退しつつあるのかも知れません。

[参考]
 博報堂生活総研「生活定点1992-2016」(お節料理を食べる)
 http://seikatsusoken.jp/teiten/answer/316.html

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。

-『和暦日々是好日』-

お正月といえば、新しいダイアリー。私が毎年愛用しているのは和暦手帖『和暦日々是好日』です。
 江戸から明治期の和本から収集された豊富な図版は美しく、その楽しい解説を読むことで自然に季節感を身につけることができます。

明治時代に導入された現在のカレンダー(太陽暦、グレゴリオ暦)は、世界共通の時間軸としては便利ですが、日付と曜日だけが意識され、自然界のサイクルを感じにくいものとなっています。
 これに対して和暦(太陰太陽暦)は、太陽と月の周期を併用した暦で、月のリズムで日にち(1日は新月、15日はほぼ満月)を、太陽のリズムで季節(二十四節気等)を知ることができるというものです。日本人は、長い間、月の満ち欠けと季節の変化という異なる2重の時間軸を感じながら生活していました。暮らしも農作業も年中行事も、暦を意識して行われていたのです。
 つまり「月と暮らす、季節と暮らす、地球の呼吸を感じる」ことができるのが「和暦」なのです。

製作者である高月美樹さん(ルナワークス)は、最新版(2018年版)のなかで、
 「これからの時代は、右肩上がりの経済成長や目先の利便性を追い求めても、永続的な幸福は手に入らないことに多くの人が気付き始めている」「この地球で私たちが永続していくためには、命のつながりや多様性を重んじる新しいパラダイムの構築が必要」等と述べられています。

まずは和暦を生活の中に取りいれることから、自然に寄り添う暮らしを目指していきませんか。

ところで今日(2018年1月1日)は和暦では霜月十五日。まだ去年だと思うと少し安心したりして。2018年版『和暦日々是好日』は2月16日(睦月朔日)スタートです(まだまだ間に合います)。

[参考]
 『和暦日々是好日』
 http://www.lunaworks.jp/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。

-奥山文弥著、木戸川漁協監修『サケが帰ってきた!』(2017年10月、小学館)-
 https://www.shogakukan.co.jp/books/09227191

お節料理に欠かせない魚といえば、サケ(西日本出身の筆者にはブリの方が馴染みですが)。
 サケは産卵のために生まれた川に戻ってくるという習性があります。この時に親魚を捕獲して採卵・受精させ、ふ化・飼育した稚魚を川に放流するという事業によって、日本のサケ資源は守られています。

福島・楢葉町にある木戸川は、かつて本州太平洋側において最も多くのサケが遡上してくる川として有名で、木戸川漁業協同組合は毎年1000万尾以上の稚魚を放流していました。
 ところが、2011年3月11日に発生した東日本大震災による津波で大きな被害を受け、さらに福島第一原発事故もあり、ふ化放流事業は中断されていました。

本書は、2000年に福島・いわき市の水産高校を卒業して木戸川漁協に就職した鈴木謙太郎青年(現ふ化場長)の奮闘の記です。
 小さい頃から釣りが大好き、夢だった水産関係の仕事に就けて「サケまみれ」の日々を送っていた鈴木青年は、突然の大地震でふ化場が津波に飲み込まれる様子を目の当たりにします。さらに、原発事故で立ち入ることさえできなくなった時の絶望感と混乱は、想像することも困難です。

しかし謙太郎青年と木戸川漁協は、いま、着実に復興の歩みを始めています。
 2015年夏には避難指示が解除され、再建されたふ化場により2017年から放流事業が再開されました。モニタリング検査の結果、放射能汚染の問題はないこと(検出限界以下)も明らかとなっています。

2017年11月26日、木戸川漁協を訪ね、鈴木謙太郎さんから直接話を伺う機会がありました。穏やかな表情で、放流事業の現状等について丁寧に説明して下さいました。
 遡上してくるサケの数は、放流事業の中断により、震災前の10万尾近くから2017年は3400尾へと激減しているそうですが、鈴木さんは「今年帰ってきたサケは、全て人の手を掛けていない天然のもの。自然の力に感動した」と述べられていたのが印象的でした。

大自然は大きな災いをもたらすこともありますが、命もつないでくれるのです。未曾有の困難のなか、真摯に命にかかわる仕事に向き合っておられる鈴木さんならではの言葉かも知れません。

[参考]
 木戸川漁協を訪問した時の様子(拙ブログより)
 http://food-mileage.jp/2017/12/09/blog-63/

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 群馬・南牧村伝統食づくりツアー[12/24]
 http://food-mileage.jp/2017/12/24/blog-67/

○ 第7回品川蕪品評会[12/29]
 http://food-mileage.jp/2017/12/29/blog-68/

○ 江戸東京の旬を味わう(豊島屋酒造×オギプロファーム)[12/30]
 http://food-mileage.jp/2017/12/30/blog-69/

○ 東北食ベる通信車座座談会+忘年会[12/31]
 http://food-mileage.jp/2017/12/31/blog-70/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 農村と都市とSDGs ~福島・浜通りから有機農業の未来を描く~
 日時:1月11日(木)18:30~20:30
 場所:国際青年環境NGO A SEED JAPAN(東京・台東区上野5)
 主催:結イレブン
 (詳細、お問合せ等↓)
  https://www.facebook.com/events/535298130174484/

○ 食農交流で地方を元気に!
 日時:1月11日(木)18:30~20:00
 場所:毎日新聞東京本社(東京・千代田区ーツ僑1)
 登壇:大塚洋一郎さん
 主催:毎日メディアカフェ
 (詳細、お問合せ等↓)
  https://mainichimediacafe.jp/eventcal/?yy=2018&mm=1#l3810

○ 東京いちじくのチャレンジ!~都市農業と「発信力ある」商品づくり~
 日時:1月25日(木)17:00~21:00
 場所:ちよだプラットフォームスクウェア(東京・千代田区神田錦町3)
 主催:農業情報総合研究所/農業ビジネス研究会
 (詳細、お問合せ等↓)
  http://m-motegi.at.webry.info/201712/article_3.html

────────────────────
*今号のコツコツ小咄。
「改訂新版は、どんなデザインになるんですか」
「色々と想定(装丁)はしているんですが」
 今月半ば、10年ぶりに拙著の改訂版が出版されます。デザインも一新される予定。

コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
  http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.135は1月17日(月)、和暦 師走朔日の配信予定です。
 より役立つ情報発信に努めていきたいと考えていますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
────────────────────
◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  http://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
  http://food-mileage.jp/category/blog/
 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/