白石さん(練馬)×菅野さん(二本松)@オルガン堂

彼岸も近い2013年9月21日(土)は東京・下北沢へ。
駅から徒歩で10分強、大勢の人で賑わう商店街を抜けた辺りに「ふくしまオルガン堂」があります。
通りには「祭」の旗が掲げられています。
郷土料理が食べられるカフェと有機農産物や加工品等の直売所を兼ね、福島からの避難者同士、あるいは東京の市民との交流の場、農の文化を伝えるイベント等の場でもあります。
特定非営利活動法人・福島県有機農業ネットワークが今年3月に開設しました。
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店内には、飲食ができる18席のテーブルと直売スペースがあります。
この日の14時からは、「大泉 風のがっこう」主宰の白石好孝さん(東京・練馬区)と、福島県有機農業ネットワーク理事長の菅野正寿(すげのせいじ)さん(福島・二本松市)のお二人によるトークイベントが開催される予定です。
それに先立ち「ふくしま定食」を頂きました(なかなか好評で予約が必要です)。
この日の献立(日替わりです。)は、いしかわ牛の肉じゃが、ナスとピーマンの揚げ浸し、そうめんカボチャと生キクラゲの和えもの、トマトサラダ。それに五穀米のご飯と漬け物、ネギとミョウガの入った味噌汁が付きます。さらに、デザートに豊水梨と桃。
馴染みが薄いはずの福島の郷土料理ですが、なぜか懐かしく感じられます。栄養的にもバランスの取れた和食です。ご馳走さまでした。
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直売スペースには、この日も、福島から届いた多くの新鮮な野菜や様々な加工品が並べられていました。
これら商品には全て放射能の検査結果が表示されています。
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さて、14時からの白石と菅野さん、都市部と中山間地という対照的な地域におけるリーダーお二人による豪華なイベントの開会が近付き、どんどん人が集まってきました。
店内の椅子だけでは足りず、ご近所から椅子やソファーを借りてきて、何とか25人ほどが座ることができました。
大江正章さん(コモンズ、アジア太平洋資料センター)の司会により、経営の経緯等についての話からトークショーはスタート。
○ 白石さん
江戸中期から続く農家。継ぐのが嫌で、迷いながら妻と農業をするうちに面白い部分が見えてきた。継いだ時は市場向けのキャベツ専業だったが、現在は直売が中心。
バブルの時代、都市に農業はいらないという議論が盛んになり、何とか地域住民と共存する方法はないかと友人と考えたのが「農業体験農園」。自分の畑を使った野菜作りのカルチャースクールのようなもの。
現在、練馬区内だけで16戸・1800区画ほどある。都内で80戸、京都や福岡など全国で150戸位が取り組んでいる。
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○ 菅野さん
自分も地域の閉鎖性に抵抗を感じて東京の大学に進学した。しかし、4年間で東京は住むところではないと思い、逆に家業を継ぐ決心がついた。
1980年代の旧東和町では青年団活動が盛んで、それが現在のNPO等による地域作りや産直の取組につながっている。福島市内の消費者等と提携する中で、多品種、旬のものを中心とする経営内容に変わってきた。もともと養蚕地帯で、あまり農薬は使っていなかった。
話は、震災後の状況に進みます。
○ 白石さん
震災と原発事故の直後に体験農園の第1回講習会を予定していたのだが、東京でも放射能に不安をもつ人が多く、一時、開催するか迷った。しかし、私たちの祖先は、戦争中を含むどんな環境でも農業を続けてきたことを思い起こし、まずは種を播き、利用者と一緒に考えていくことにした。検査機器も導入し、講師を呼んで学習会もした。
130921_5_convert_20130922231404.png○ 菅野さん
今も山の汚染は深刻。山菜やキノコなどでは、昨年よりベクレル数が高いものもある。
汚染実態の調査も進んでいない。土壌の調査も必要。肥沃な土壌ほどセシウムを固定化することが明らかになっているが、砂地では出やすい。
南相馬の85歳の農家の方は「春が来れば種を播くのが百姓にとって当然、放射能くらいで米作りをやめられるか」と、原発事故後も米の作付けを続けている。農民の魂を色々と教わっている
そして、今後の展望等について。
○ 白石さん
都会の人は「遠い親戚づくり」をしていくべき。福島から売りに来てくれるのを待つばかりではなく、こちらからも求めていきたい。来年は福島へのツアーも企画したい。都会の人と福島をつなげるのは、私たち都市の農家の役割の一つと考えている。
福島を大変な状態のままでは終わらせない。新しい出発の原点になるよう、支援するのではなく、同じ百姓として共に生きていきたい。
○ 菅野さん
福島のことを知りたがっている人は多い。特に若い人たち、女性に多い。首都圏等から移住してきた人もいる。都会に比べれば農地も格安で借りられる。このような若い人たちとの間で、地域で新しい関係を作っていきたい。
15年前、娘が小学生になったのをきっかけに「田んぼの学校」の先生をした経験がある。将来は大人も含めて農業を五感で体験できるような「農業小学校」を作っていきたい。耕せば分かる。
お2人の永い実践に基づいた話は深く、とても全てをここに書き記すことはできません(言うまでもありませんが、以上の文責は中田にあります)。
司会の大江さんがうまく流れを作られたこともあり、参加者との意見交換も含めて、大変、貴重な内容のトークとなりました。
トークショーの後は、菅野さんの発声で懇親会に。まずは猪苗代ビールで乾杯。
この日は福島・喜多方の名門「大和川酒造」の若杜氏が見えられており、手ずから大吟醸や純米酒を注いで頂きました。2週間後には仕込みが始まるそうです。
料理は、福島産の有機野菜を使った郷土料理など。イカにんじん、野菜の天ぷら、枝豆、ジャガイモの煮付けなどが並びました。
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福島の農産物復興サイト「ふくしま新発売。」に携わっておられる方、福島に新規就農したいという若い女性の方も見えられており、色々と興味深い話を伺うことができました。
この「ふくしまオルガン堂」、阿部店長を始めとする皆さんの献身的な尽力もあり、様々な意味での重要な拠点として育ちつつあります。
イベント情報や本日の定食の献立も掲載される「ふくしまオルガン堂」のフェイスブックページはこちら
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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