公文書でみる「高度成長」の時代

 2014年5月1日(木)は初夏のような陽気でした。
 GWの合間の出勤日、懸案が何とか片づいて一区切り。
 18時15分の定時に退庁できたので、東京・北の丸にある国立公文書館に足を運んでみました。
 国の公文書等を歴史資料として保存し、展示等を通じて広く国民の利用に供することを主な任務とする独立行政法人だそうです。
 メトロ・竹橋駅を地上に出ると、正に暮れなずむ時間。
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140501_2_convert_20140502221929.png 清水掘を渡ると北の丸公園のエリアです。東京国立近代美術館の並びに国立公文書館がありました。初めてきました。
 現在、平成26年春の特別展「高度成長の時代へ 1951-1972」が開催中(5月11日まで、入場無料)です。
 1951年のサンフランシスコ平和条約の調印により主権を回復、その後、劇的な経済成長を遂げた日本の歩みを、新幹線、東京五輪、大阪万博等に関する公文書によりたどるというもの。
 展示されているのは、とにかく本物の公文書。貴重な歴史的資料です。
 閉館(木、金は20時)近い時間でしたが、熱心な方たちがケースの中を覗き込んでこんでいます。 
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 入口近くに展示されていたのは、サンフランシスコ平和条約の公布原本。
 日付は昭和27年(1952)4月28日。GHQによる占領が終了し、主権が回復した日です。
 (おそれながら)御名御璽を始め、吉田茂総理大臣や閣僚の直筆の署名や花押も鮮やかです。ストロボ禁止とされていますが撮影は自由のようです。
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 その隣には、日米安保条約の関連文書
 展示されているのは、昭和35年6月23日付けので改訂された「新・安保条約」の公布原本で、岸信介総理大臣の署名。
 
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 日本国憲法についても展示されていました。公布時の閣議書、日付は昭和21年11月3日です。
 これは、全ての頁(条文)が閲覧できるように展示されていました。むろん、前文も九条も読むことができます。
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 興味をひいたのは、「経済自立五ヶ年計画」「国民所得倍増計画」など、1950~60年代に閣議決定された経済計画に関する資料。
 「もはや戦後ではない」との記述が有名な昭和31(1956)年度の年次経済報告(経済白書)も展示されています。
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 その「国民所得倍増計画」との関連で昭和36(1961)年に公布されたのが、農業基本法です(この展示会に足を運んだ私のお目当てはこれ)。
 展示されているのは、閣議請議(国会に法律を提出するために閣議決定を求めること)に関する農林省の決裁文書。また、基本法に定められた農業白書の第1号も展示されていました。
 昭和36(1961)年6月12日に制定された農業基本法ですが、その成立過程は決して平穏なものではありませんでした。
 野党(主に社会党)は政府案を「貧農切り捨て」「山吹基本法」(花はあっても実がないとの意)と批判、対案を提出します。委員会の審議は紛糾し、結局、最後は強行採決となり、本会議も社会党が欠席する中で採決されたのです。
 池田勇人総理も討論に参加した当時の農林水産委員会等の議事録(これらは国立国会図書館のウェブサイトで閲覧できます。)を読むと、当時の緊迫感が伝わってきます。
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 その農業基本法は平成11(1999)年に廃止、基本法の役割は現在の「食料・農業・農村基本法」に引き継がれています。
 そして、新基本法に基づいて5年ごとに策定される「食料・農業・農村基本計画」が、現在、4回目の改訂作業中。1960年代と比べる必要もありませんが、農業や食料に対する一般国民(特に消費者)の関心は、残念ながら高いものとは言えません。
 それもある意味当然で、GDP(国内総生産)に占める農林水産業のシェアは、1960年当時は13%だったのに対して現在は1%強。1960年頃は4割近くあった農家人口の割合は現在は5%弱。
 国民経済や社会における農業のシェアは、著しく低下しているのです。
140501_8_convert_20140502222159.png ところで特別展は、高度成長の光の面ばかり強調しているわけではありません。
 高度成長の負の面についてもしっかりと取り上げられており、昭和42(1967)年に制定された公害対策基本法に関する展示もなされていました。
 人口が明らかな減少局面に転じ、エネルギーや地球環境の面で制約に直面している現在、かつてと同じような「高度成長」を実現することは困難です。
 その一方で、経済(カネ)だけではない豊かさを追求していくに当たって、「農」の役割がますます重要になっていると感じるのは、私だけでしょうか。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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