【豆知識】風評被害に関する消費者意識

原発事故から6年目に入りましたが、福島県産の農産物の価格は、きゅうりなどの一部を除き、米を含む多くの品目では震災前の水準にまで回復していません。いわゆる「風評被害」の払拭が引き続き重要な課題となっています。

消費者庁は、2013年2月以降半年ごとに「風評被害に関する消費者意識の実態調査」を実施しています。
 対象は被災地域(岩手、宮城、福島、茨城)と被災地産品の主要仕向先である大都市圏(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫)の消費者です(回答数は5000人余)。
 さる3月8日、最新(第9回)の調査結果が公表されました。
 消費者庁発表資料によると「食品の産地を気にする理由のうち『放射性物質の含まれていない食品を買いたいから』とする人は減少傾向」「放射性物質を理由に福島県産品の購入をためらう人の割合はこれまでの調査で最少に」等とされています。

しかし調査結果をよくみると、「放射性物質の含まれていない食品を買いたい」及び「福島県産品の購入をためらう」とする人の割合は、調査が始まった2013年2月から2回続けて低下した後にいったん上昇し、その後はおおむね低下傾向で推移しているものの、その水準は14年8月時点と大きく変わらない水準にあるのです(リンク先の図69の棒グラフ)。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2017/03/69_fuhyo.pdf

本調査では、さらに懸念される状況も明らかとなっています。
 例えば「出荷制限されている食品の品目と地域についての情報をどこから得ていますか」との問に対して、「情報は特に得ていない」とする回答が2013年2月の36.3%から2017年2月には46.0%へと、10ポイント近く上昇しています。
 また、食品中の放射性物質について「検査が行われていることを知らない」とする回答は、同期間に22.4%から35.2%へと13ポイント近く上昇しています(リンク先の図69の折れ線グラフ)。
 さらに「放射線等について、あなたが知っていることをお答え下さい」という問については、「α線、β線、γ線といった種類がある」「食品中の放射性物質に関する単位にはベクレルとシーベルトがある」「被ばくには外部被ばくと内部被ばくがある」等の選択肢が並ぶ中、「知っているものは特にない」とする回答も、30.3%から35.1%へと上昇しているのです。

消費者サイドの方で、的確な知識や情報を得ようとする意識が希薄になっているとすれば、いわゆる「風評被害」はいつまでも無く鳴らないことが憂慮されるのです。

[参考]
 消費者庁「風評被害に関する消費者意識の実態調査(第9回)について」(2017年3月)
  http://www.caa.go.jp/earthquake/understanding_food_and_radiation/pdf/understanding_food_and_radiation_170308_0001.pdf

F.M.Letter No.114, 2017.3/12掲載】