本田由紀『社会を結びなおす-教育・仕事・家族の連携へ』(2014/6、岩波ブックレット)
実証的な教育社会学を専門とする本田先生が、「私たちが今、立っている場所」「日本社会のかたち」 を俯職的に把え、目の前に迫っている「社会の維持さえ難しくなっているような危機」に警鐘を鳴らしています。
本田先生の目に映っている現在の日本社会とは、例えば「粗雑な『改革』が思いつきのようにばらばらと実施され」「締め付けや精神論が持ち込まれ」「うまくいかない状況をごまかすために分かりやすい『敵』を見つけ出して叩くことでうっぷんを晴らそうとするような振る舞いが広がっている」といったものです。
戦後の日本経済の高度成長を実現させたのは、仕事・家族・教育の間が堅牢に、一方的な矢印によって結合されていた「戦後日本型経済モデル」でした(新規学卒一括採用、長期安定雇用と年功賃金、家庭による教育支出等)。
しかし現在、不安定就業の増加、賃金・雇用時間の劣悪化、家庭間格差の拡大など、このモデルは破綻しているとのこと。
そして本田先生は、今後の方向性として「新たな社会モデル」を提示されています。
これは仕事・家族・教育が一方的な矢印ではなく、お互いに役割分担し助け合うもので、リカレント教育やワークライフバランスを重視し、さらに、政府が責任を持ってセーフティネットとアクティベーションという2枚の『布団』を準備するというものです。
さる7月16日(日)には、東京・四ツ谷の上智大学で本田先生のお話を直接伺う機会がありました。
現在の社会のあり様に対する先生の義憤と、よりよい方向に変えていきたいという熱意が、ふつふつと伝わってくる内容でした。
[参考]
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-ほんのさわり」
http://food-mileage.jp/category/br/
【F.M.Letter No.123, 2017.7/23配信】掲載