【ほんのさわり】小松理虔『新復興論』

-小松理虔『新復興論』(2018.9、ゲンロン叢書)-
 https://genron.co.jp/books/shinfukkou/

東日本大震災と原発事故による被災が今も継続している「福島」の復興について、心に引っかかりを感じている人にとっては必読の書です。
 潮目の地・いわきの歴史と宿命、アート、障害福祉などの広範な観点から、復興(イコール地域づくり)が語られています。なお、400ページ近い大著ですが、文章は平易かつ明晰で、非常に読みやすい本です。

小松さんは食品メーカーに勤務する「当事者」だったこともあり、食についても多くのページが割かれています。… 続きを読む

【ほんのさわり】蔦谷栄一『未来を耕す農的社会』

蔦谷栄一『未来を耕す農的社会』(2018/9、創森社)

著者は1948年宮城県生まれ。(株)農林中金総合研究所で永く調査・研究に携わられた後、現在は自ら設立した農的社会デザイン研究所の代表を務めておられます。
 本書は著者にとっての13冊目の単著で、前著『農的社会をひらく』から2年半の間の実践や思索の成果を踏まえ、農的社会(生命原理を最優先する社会)をいかにして創造していくかを、理論と実践(ノウハウ等)両面から広範に論じられています。… 続きを読む

【ほんのさわり】国木田独歩『武蔵野』

-国木田独歩『武蔵野』(1949/5、新潮文庫)-
 https://www.shinchosha.co.jp/book/103501/

国木田独歩(1871~1908)は千葉・銚子に生れ、山口、広島で少年時代を過ごした後に上京。新聞記者を経て詩人・小説家になりましたが、自然主義文学の先駆者と位置づけられています。

独歩の代表作である『武蔵野』は明治31(1898)年に刊行されました。

当時、渋谷に住んでいた独歩は、画や歌に描かれるほどの武蔵野の現状を自分の目で確かめるため、ある年の秋の初め、汽車を境で降り、そこから歩いて桜橋に向かいました(現在、文学碑のある場所です)。… 続きを読む

【ほんのさわり】正岡子規『仰臥漫録』

-正岡子規『仰臥漫録』(1983/11、岩波文庫)-
 https://www.iwanami.co.jp/book/b248901.html

 病床において子規は多くの優れた随筆・日記文学を残しますが、その一つ『仰臥漫録』(ぎょうがまんろく)は他人に見せることを想定していなかった私的な日誌であるため、子規自身の率直な思いや身の回りの出来事が綴られています。
 自ら寝返りを打つこともできない子規は、仰向けに寝たまま、日々食べたものについても克明に記録しました。

例えば, … 続きを読む

【ほんのさわり】原田信男『コメを選んだ日本の歴史』

-原田信男『コメを選んだ日本の歴史』(2006/5、文春新書)-
 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166605057

1949年生まれの著者の専門は生活文化史で、食文化についても多くの著作があります。本書は、日本の歴史を通して、いかに米が大きな役割を果たしてきたかを明らかにしています。

弥生時代に渡ってきた水田稲作システムは、日本の人口や社会に大きなインパクトを与えました。
 その生産力の高さにより社会的剰余を生み出すことで、クニ(古代国家)の形成が始まり、やがて激しくなった戦争(軍事力の背景にも米がありました。)を経て統一国家(ヤマト政権)が成立します。… 続きを読む

【ほんのさわり】藤原 彰『餓死した英霊たち』


-藤原 彰『餓死(うえじに)した英霊たち』(ちくま学芸文庫、2018/07)-
 http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480098757/

1922年東京に生まれた著者は、陸軍士官学校を卒業して中国各地を転戦。復員後に東京大・文学部史学科に入学し、後に一橋大教授等を務められ、2003年に逝去されました。

太平洋戦争における日本軍人の戦没者は … 続きを読む

【ほんのさわり】斎藤 美奈子『戦下のレシピ』

斎藤 美奈子『戦下のレシピ-太平洋戦争下の食を知る』(2015/7、岩波現代文庫)
 https://www.iwanami.co.jp/book/b256540.html

1956年新潟生れの文芸・社会評論家である著者による「戦争中の食の世界へあなたを誘うガイドブック」です。
 著者は、戦下においても発行され続けた婦人雑誌に掲載された食や料理に関する記事をたんねんに調べました。… 続きを読む

【ほんのさわり】イリイチ『コンヴィヴィアリティのための道具』

-イヴァン・イリイチ著、渡辺京二/梨佐翻訳『コンヴィヴィアリティのための道具』(2015/10、ちくま学芸文庫)-

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480096883/

著者は1926年、オーストリアに生まれ、神学、哲学、歴史学を学びカトリック司祭として活動した後、メキシコを拠点に産業社会への批判を展開した思想家です。
 1973年に刊行された本書は、その後のエコロジー運動や脱成長論の思想的な源泉の一つと位置づけられています。

本書のキーワード「コンヴィヴィアル」(convivial)は、一般的に耳に馴染みはなく、書くのも発音するのも大変です。… 続きを読む

【ほんのさわり】岩佐勢市「食育の祖 石塚左玄物語」


 岩佐勢市「食育の祖 石塚左玄物語」(2010/3、正食出版)
 http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=05_92116606/

著者は1949年福井市の生まれ。JA厚生連に勤務されていた時、住民検診の結果(偏食、運動不足等)に愕然として食育の活動に取り組み始められました。その活動の中で地元出身の偉人・石塚左玄に巡り会い、以後、左玄の研究を続けておられます。
 現在、NPO法人フードヘルス石塚左玄塾の代表も務められています。… 続きを読む

【ほんのさわり】江守正多『異常気象と人類の選択』


 江守正多『異常気象と人類の選択』(2013.9、角川SSC文庫)
  https://www.kadokawa.co.jp/product/301308000810/

著者は1970年生まれの気象学者で、国立環境研究所の地球環境研究センター気候変動リスク評価管理室長。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)第5次報告書(2013)の執筆にも参加されています。

著者は、地球温暖化問題を、近年異常気象が頻発している状況も踏まえて、「少しも大げさないい方ではなく、現代文明の運命に関わる問題」「今生きているわれわれが、現代文明の運命をどうしたらいいかという価値判断にかかわる問題」と位置づけています。

温暖化に対するいわゆる「懐疑論」については、著者は科学的には否定できるとしていますが、一方、政策論としては、対策積極派(行き過ぎた現代文明を見直すべき)と慎重派(現実主義、経済価値重視)対立しており、その解決のためには、政府(政策立案)と市民との間の信頼醸成が不可欠としています。… 続きを読む

【ほんのさわり】日本フードシステム学会 監修『医福食農の連携とフードシステムの革新』


日本フードシステム学会 監修、斎藤修・高城孝助 編著『医福食農の連携とフードシステムの革新』(2018/3、農林統計出版)
 http://www.afsp.co.jp/syoseki-annai.html#040533

高齢化の進行は日本のあらゆる分野に大きな影響を及ぼしていますが、食との関連をみると、在宅高齢者の約40%は低栄養であり、70歳以上層においては20~30%が「個食」とのこと。また、高齢者を中心とした「買い物難民」の問題が顕在化する一方、介護食の市場規模は、今後、大きく拡大することが見込まれています。… 続きを読む

【ほんのさわり】五十嵐泰正『原発事故と「食」』


-五十嵐泰正『原発事故と「食」-市場・コミュニケーション・差別』(2018/2、中公新書)-
 http://www.chuko.co.jp/shinsho/2018/02/102474.html

著者は1974年千葉・柏市生まれの筑波大学大学院人文社会系準教授(都市/地域社会学)。
 原発事故でホットスポットとされた千葉・柏市で「安全・安心の柏産柏消」円卓会議事務局長を務められた時の経験は、編著『みんなで決めた「安心」のかたち』(亜紀書房)としてまとめられています(これも多くの示唆に富む本です)。

本書では、東日本大震災から7年以上が経過し、「風化」と「風評の残存」が同時進行するという複雑な状況にあるという認識の下、まず、福島県産農水産物の「風評」被害が市場の中で固定化されていくメカニズムが分かりやすく分析されています。例えば、季節性や保存性、あるいは代替産地の有無の点でキュウリと米は違う状況にあることがデータに基づき明らかにされます。… 続きを読む

【ほんのさわり】広井良典『コミュニティを問いなおす』


-広井良典『コミュニティを問いなおす』(2009/8、ちくま新書)-
 http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480065018/

著者は1961年岡山市生まれ。現在は京都大学こころの未来センター教授として、環境や社会保障に関する政策研究からケア等をめぐる哲学的考察まで、幅広く発信されています。

著者によると、これからの日本社会の課題を考えて行く上で中心に位置するテーマが「コミュニティ」とのこと。
 経済成長期を支えていたのは“都市の中のムラ社会”とも言うべき閉鎖性の強いコミュニティ(カイシャ、核家族)でしたが、経済が成熟し定常化社会を迎える中で、地域に根ざした新たなコミュニティの創造が必要としています。… 続きを読む