【ほんのさわり】植木美江『7色野菜の便利図鑑』

-植木美江(絵と文)『7色野菜の便利図鑑』(2016.10、幻冬舎)-
  http://www.gentosha.co.jp/book/b10373.html

著者は「自然がたくさん残り、湧き水も豊富で野菜がおいしい」東京・小金井市在住のイラストレーター。
 数年前、近所の友人たちと野菜を主役(野菜の料理・スイーツ、アクセサリー、イラストなど)にしたマルシェを行ったのをきっかけに「野菜オタク」になられたそうです。
 その後、江戸東京野菜コンシェルジュの資格も取得され、自作の紙芝居を携えて学校を回る等の食育活動にも取り組んでおられます。… 続きを読む

【ほんのさわり】岩手県農村文化懇談会編『戦没農民兵士の手紙』

岩手県農村文化懇談会 編『戦没農民兵士の手紙』(1961/7、岩波新書)

1950年代末、岩手県農村文化懇談会は、戦争で亡くなった農家出身兵の手紙を収集する運動に着手しました。それは、日本の歴史の上に、異郷で戦死した若い農民の「たましい」による戦争証言を加えたいという意図からでした。… 続きを読む

【ほんのさわり】野坂昭如『火垂るの墓』

-野坂昭如『火垂るの墓』(1972/1、新潮文庫)-
http://www.shinchosha.co.jp/book/111203/

1930年、鎌倉市に生まれた野坂昭如(2015没)は生後半年で神戸に養子に行き、1945年の神戸大空襲に遭遇。『火垂るの墓』(ほたるのはか)は、その原体験に基づく小説として1967年に発表され、姉妹作の『アメリカひじき』とともに翌年、直木賞を受賞しました。その後、映画化・ドラマ化も何度かされています。

主人公は、野坂自身がモデルとされる清太少年。
 父親は出征中で音信不通、6月5日の空襲で母親を亡くし、4歳の妹・節子とともに西宮の遠い親戚にいったん身を寄せるものの、酷い扱いを受け、親戚宅を出て防空壕で自活するなか、妹を栄養失調で失います。… 続きを読む

【ほんのさわり】本田由紀『社会を結びなおす』


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本田由紀『社会を結びなおす-教育・仕事・家族の連携へ』(2014/6、岩波ブックレット)

実証的な教育社会学を専門とする本田先生が、「私たちが今、立っている場所」「日本社会のかたち」 を俯職的に把え、目の前に迫っている「社会の維持さえ難しくなっているような危機」に警鐘を鳴らしています。
 本田先生の目に映っている現在の日本社会とは、例えば「粗雑な『改革』が思いつきのようにばらばらと実施され」「締め付けや精神論が持ち込まれ」「うまくいかない状況をごまかすために分かりやすい『敵』を見つけ出して叩くことでうっぷんを晴らそうとするような振る舞いが広がっている」といったものです。… 続きを読む

【ほんのさわり】國分功一郎『暇と退屈の倫理学』


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-國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(増補新版、2015/3、太田出版)-

読書の醍醐味の一つは思いがけず刺激的な本に巡り会うことです。本書も奇抜なタイトルにひかれて読み始めたのですが、ぐいぐいと引き込まれました。
 440ページに及ぶ哲学・倫理学書を簡潔に紹介する力量はありませんが、ポイントは概ね以下のようなものです。
 人間は部屋でじっとしていられないため、熱中できる気晴らしを求める。それが全ての不幸の源泉となる(ファシズムやテロリズムにさえ通じる)。現代の消費社会はそこにつけ込んで、現代人は「終わりなき消費のゲーム」を強要され、その結果、私たちは「非人間的状況」(疎外)に陥ってしまっている。… 続きを読む

【ほんのさわり】山下惣一『小農救国論』


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山下惣一『小農救国論』(2014/10、創森社)

著者は1936年、佐賀・唐津市の生まれ。家業である農業を営まれつつ、農村の実情を踏まえた小説、エッセイ、ルポルタージュ等を発表してこられた方です。
 本書のテーマ・結論は「小農こそが国と国民を救う」。「大規模農業を否定するつもりはないが、小さいからこそ農業はやっていける」というのが山下さんの主張です。
 ちなみに小農(家族農業)とは「暮らしを目的として営む農業」のことだそうです。… 続きを読む

【ほんのさわり】浅見彰宏『ぼくが百姓になった理由』


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-浅見彰宏『ぼくが百姓になった理由(わけ)-山村でめざす自給知足』
  (2012/11、コモンズ)-

著者は1969年千葉県の生まれ。
 バブル景気まっただ中、上智大学文学部を卒業して大手鉄鋼メーカーに就職。アジアへの輸出業務等に携わるなか、次第に行き過ぎた市場経済と、そのために生まれた貧困や格差、環境問題など社会の矛盾を感じるようになったそうです。… 続きを読む

【ほんのさわり】松瀬学『東京農場-坂本多旦 いのちの都づくり』


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東京湾の埋立地(ごみ処分場)を農場にしようという壮大な構想を立てた方がいます。坂本多旦(かずあき)さんです。
 坂本さんは1940年、山口市(旧 阿東町)生まれ。家業の農業を継ぎ、64年には仲間5人と農業法人・船方総合農場を立ち上げられました。日本における農業法人の先駆けであり、「6次産業化」「道の駅」「都市農村交流」等を発案し、最初に取り組んだのも坂本さんです。
 また、日本における農業経営体の中では少数派であった農業法人の組織化を図り、1996(平成8)年8月8日には全国農業法人を設立、さらに1999年には公益法人に衣替えした日本農業協会の初代会長に就任されました。… 続きを読む

【ほんのさわり】飯田泰之ほか『地域再生の失敗学』

-飯田泰之、木下斉、川崎一泰、入山章栄、林直樹、熊谷俊人
『地域再生の失敗学』(2016.4、光文社新書)-

1975年生まれの気鋭のマクロ経済学者・飯田恭之氏が、5人の有識者(プレーヤー、研究者、首長)との対談等を通じて、今後の地域再生策について鋭く考察しています。

著者は「地域再生」を、地域における平均所得が向上することと定義づけています。
 所得向上がなければ地域の存続すら危ぶまれるとのこと。一方、地域の平均所得が増加することは、文化や伝統、コミュニティ再生等より広義の地域再生にとっての必要条件であるとしています。… 続きを読む

【ほんのさわり】三浦しおん『神去なあなあ日常』

-三浦しおん『神去なあなあ日常』(2012年9月、徳間文庫)-

直木賞・本屋大賞作家の三浦しをんさんによる「青春林業小説」です。
 主人公の平野勇気クン(18歳、横浜在住)は、高校卒業後、適当にフリーターでもして食っていこうと思っていたのが、ひょんなことから三重県の山奥にある神去村(かむさりむら)に林業研修生として放りこまれてしまうんだ。
 ちなみに「なあなあ」とは、「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」ってニュアンスの村の人たちの口癖。神去の人たちが「なあなあ」を大事にしているのは、百年単位でサイクルする林業に携わっている人が多いためらしい。

都会っ子の主人公には林業の仕事はキツく、ダニやヒルも襲来するし、ケータイも使えずコンビニもない田舎の生活にも馴染めない。最初のうちは何とか逃げ出すことばかり考えていた。… 続きを読む

【ほんのさわり】速水健朗『フード左翼とフード右翼』

速水健朗(はやみず・けんろう)さんは1973年、石川・金沢市生まれのライター・編集者。
 メディア論、都市論、ショッピングモール研究等を専門とする著者が、ユニークな視点から日本と世界の「食」の問題に鋭く切り込みました。

「国民食」という言葉で象徴されるように、もともと「食でつながる民族」であった日本人は、近年、急速に二極分化しているとのこと。
 そこで食の好みをマッピングすることで、日本人の食にまつわる政治意識をあぶりだすことを試みます。
 横軸の右側がグローバリズムで左側が地域主義。縦軸の上は健康志向で下は価格志向。… 続きを読む

【ほんのさわり】荻原 浩「ストロベリーライフ」

荻原 浩『ストロベリーライフ』(2016年9月、毎日新聞出版)

グラフィックデザイナーの望月恵介(36歳)は、農業なんか格好悪いと父親と大喧嘩して静岡・富士山麓の実家を飛び出し、東京の美大に進学・卒業して広告代理店に就職。その後独立したものの、注文の電話はなかなか鳴りません。
 そのようなある日、父親が倒れたとの連絡。慌てて実家に戻ると、救急車で病院に運ばれた父親は脳梗塞で半身不随。2棟の苺のハウスは、正に収穫期を迎えていました。

やむを得ず手伝い始めた農作業。ところが父親が丹精込めた苺をかじり、思わず「うまい」と声が洩れます。… 続きを読む

【ほんのさわり】畑村洋太郎「未曾有と想定外」

畑村洋太郎『未曾有と想定外-東日本大震災に学ぶ』(講談社現代新書、2011年7月)

著者は1941年生まれの東京大学名誉教授・工学博士で、「失敗学」の提唱者として著名な方です。
 本書は東日本大震災の直後、東電福島原発事故調査・検証委員会(いわゆる政府事故調)の委員長に就任されるまでの短い期間に、一般読者向けに書かれた啓発本です。
 私は本書を2012年に1度読んでいたのですが、このたび再読し、その内容が全く色あせていないどころか、むしろ6年目を迎えた今こそ改めて胸に刻むべき多くの教訓が含まれていることが分かりました。

その一つは、「人は忘れる」という大原則があるということです。… 続きを読む

【ほんのさわり】テツオ・ナジタ「相互扶助の経済」

テツオ・ナジタ『相互扶助の経済-無尽講・報徳の民衆思想史』(五十嵐暁郎監訳、福井昌子訳)

著者は1936年ハワイ生まれの日系アメリカ人で、シカゴ大学教授を長く務められた方(専攻は近代日本政治史・政治思想史)。

大阪の町人学問所・懐徳堂における教えや、山片蟠桃、三浦梅園、石田梅岩、弘世助三郎、和田耕斎など、必ずしも有名ではない在野の実践者を含む様々な人の思想や事績を丹念に辿り、近世から江戸時代の日本社会には、相互扶助的な経済や思想の伝統が存在していたことを明らかにしています。なお、巻末には11ページに及ぶ膨大な参考文献リストが収録されています

相互扶助的な経済や思想の背景には、「経済は道徳と無関係であってはならない」「自然はあらゆる知の第一原理であらねばならない」等の確固とした認識があったとし、その具体例として「講」と「報徳運動」が取り上げられています。

鎌倉時代や平安時代には宗教的活動を目的としていた講(伊勢講、念仏講等)は、江戸時代には飢饉等に対する経済的な相互扶助を目的とする頼母子講、無尽講等に深化しました。信頼・契約に基づくセーフティ・ネットの仕組みが実践されていたのです。… 続きを読む

【ほんのさわり】祖田修「鳥獣害」


-祖田修「鳥獣害-動物たちと、どう向き合うか」(2016.8、岩波新書)-

著者は1939年島根県に生まれ、京都大学大学院大農学研究科教授、福井県立大学学長等を歴任された農業経済学の分野における第一人者の方です。
公務を退かれた後、京都府南部のある村に半移住し田畑を耕し始められた時に直面したのが「憎らしい鳥獣達」(シカ、イノシシ、サギ、アライグマ等)でした。研究者として現場をみてきたはずの鳥獣害の深刻さを、自ら痛切に体験されたそうです。

本書では各地における鳥獣害の現状や先進的な取組事例が豊富に紹介されていますが、本書の特色は、宗教学や民俗学の成果も引用しつつ、鳥獣害問題の本質と意味、人間と動物のあり方等を考察していることです。

著者は、動物と人間の「共棲の場所」の形成が必要と訴えられています。… 続きを読む