【ほんのさわり】吉田千亜『孤塁』

-吉田千亜『孤塁-双葉郡消防士たちの3・11』(2023年1月、岩波現代文庫)-
 https://www.iwanami.co.jp/book/b618320.html

【ポイント】
 原発事故のために他県消防の応援も得られないなか、生まれ育った地域を守り続けた福島県双葉消防本部の125名の消防士の活躍と葛藤の様子が描かれています。

著者は1977年生まれのフリーライター。福島第一原発事故後、被害者・避難者の取材とサポートを続けられている方。本書は2020年に本田靖春ノンフィクション賞を受賞、2023年には文庫化されています… 続きを読む

【ほんのさわり】小田切徳美『にぎやかな過疎をつくる』

-小田切徳美『にぎやかな過疎をつくる-農村再生の政策構想』(2024年8月、農山漁村文化協会)-
 https://toretate.nbkbooks.com/9784540231841/

【ポイント】
 農村は簡単には消滅しない強靭性を有しており、各地における「にぎやかな過疎」づくりの取組みは、人口減少下でも地域で幸せに住み続けるための日本全体のモデルとなるものです。

著者は明治大学農学部教授で、農村政策論、地域ガバナンス論の分野における第一人者です。… 続きを読む

【ほんのさわり】宮本常一『忘れられた日本人』

-宮本常一『忘れられた日本人』(1984年5月、岩波文庫)-
 https://www.iwanami.co.jp/book/b246167.html

【ポイント】
 宮本常一は全国をくまなく歩き、古老たちから技や知恵、みんなで助け合って暮らしてきた様子などを丹念に聴き取り、記録してきました。忘れてはならないものがたくさんあります。

宮本常一は、1907年、山口・周防大島の海岸に近い農家に生まれました。大阪で小学校の教員をしていましたが病を得て帰郷、「百姓」として過ごし、戦後は大阪府農地部の嘱託として農地解放や農業協同組合創設等の指導に当たりました。個性豊かな宮本民俗学は、農業指導、農村調査から始まったとも言えます。… 続きを読む

【ほんのさわり】金子美登・友子『有機農業ひとすじに』

−金子美登・友子『有機農業ひとすじに』(2024年3月、 創森社)−
 https://www.soshinsha-pub.com/bookdetail.php?id=437

【ポイント】
 故・金子美登さんと妻の友子さんによる取組みは、日本の有機農業の歩みそのものでした。友子さんは「いのちを守る農場」が続いていくことを願っておられます。… 続きを読む

【ほんのさわり】小倉武一『誰がための食料生産か』

−小倉武一『誰がための食料生産か』(1987年10月、家の光協会)−
 https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN01427367

【ポイント】
 戦後日本の農政、経済政策の中枢を担った著者が40年近く前に提起している問題の多くが、そのまま現在にも通じる(解決されていない)ことに驚かされます。

300号の節目にふさわしい本がないか探していたところ、本棚の奥から出てきたのが本書です。農林水産省に入省してから間もない頃に読んだ本の一冊で、何重にも多くの線が乱雑に引かれています。… 続きを読む

【ほんのさわり】末松広行『日本の食料安全保障』

−末松広行『日本の食料安全保障−食料安保政策の中心にいた元事務次官が伝えたいこと』(2023/4、育鵬社)−
 https://ikuhosha.co.jp/book/ikh093143.html

【ポイント】
 食料安全保障施策の「現場」にいた元農水省行政官が、消費者を含む関係者に向けて忌憚のない意見(私見)を述べるとともに、傾聴すべき提言を行っています。

著者は1959年埼玉県生まれ。2008年に新設された農林水産省・食料安全保障課の初代課長、後には農林水産事務次官を歴任するなど、まさに日本の食料安全保障施策の立案と運用の「現場」の中心にいた元行政官です。… 続きを読む

【ほんのさわり】寮 美千子(文)『ぼくが子どものころ戦争があった』

−田中幹夫(原作)、寮美千子(文)、真野正美(絵)『ぼくが子どものころ戦争があった−「いくさの少年期」より』(2024/7、ロクリン社)−
 https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=258550

【ポイント】
 実話を基にした絵本。淡々とした文と絵が、79年目の8月に、改めて平和や食べものの大切さを教えてくれます。

1933年福井県生まれの原作者(弁護士)の体験を基にした絵本。帯には「戦争体験を語れる最後の世代から、これからの日本をつくる世代へどうしても伝えたいこと」とあります。… 続きを読む

【ほんのさわり】太田昌秀『決定版写真記録 沖縄線』

−太田昌秀『決定版写真記録 沖縄線』(2014/5、高文研)−
 https://www.koubunken.co.jp/book/b202015.html

【ポイント】
 沖縄戦では、動員された学徒を含む多くの子どもたちが命を落としました。その惨劇の記憶が、現在も子どもを「宝」として大切にする想いにつながっているような気がしてなりません。… 続きを読む

【ほんのさわり】河合雅雄『子どもと自然』

−河合雅雄『子どもと自然』(1990/3、岩波新書)−
 https://www.iwanami.co.jp/book/b267932.html

【ポイント】
 著者は、子ども時代には、36億年もかかって創り出された様々ないのち(自然)の中に自分を位置付けて考える機会が必要としています。

著者は1924年兵庫県生まれの霊長類学者。京都大学名誉教授、(財)日本モンキーセンター所長等を歴任し、2021年に逝去されました。… 続きを読む

【ほんのさわり】アリス・ウォータース『スローフード宣言』

−アリス・ウォータース『スローフード宣言−食べることは生きること』(2022/11、海士の風)−
 https://shop.ruralnet.or.jp/b_no=05_90993402/

【ポイント】
 著者はファストフードとスローフードを対峙させつつ、「食べることは生きること」「何を食べるかが世界に大きな影響を与える」と主張しています。

1971年、著者はアメリカ・カリフォルニア州バークレーに「シェ・パニーズ」をオープンしました。オーガニックとローカルをコンセプトに「顔のみえる食材」を提供するレストランは、現在、最も予約が取りにくい店と言われているそうです。… 続きを読む

【ほんのさわり】岩井吉彌『山村に住む、ある森林学者が考えたこと』

−岩井吉彌『山村に住む、ある森林学者が考えたこと』(2021/5、大垣書店)−
 https://www.books-ogaki.co.jp/post/38904

【ポイント】
 日本の林業・森林が急速に荒廃している元凶は林業経営の採算の厳しさにあるとし、今後は「家族林業」による副業を重視し、さらに都市住民の森に対する関心の高まりに注目しています。

著者は1945年京都生まれ。実家は北山杉で有名な京都市北山で代々林業を営んでおり、自身も林業経営と大学教授という「二足のワラジ」を履いてこられた方。… 続きを読む

【ほんのさわり】真田純子『風景をつくるごはん』

【ポイント】
 都市と農村の不平等な関係を解消するためには、環境や風景に配慮した農産物が生産され、それらを消費者が積極的に選択すること(風景をつくるごはんを食べること)が必要としています。

−真田純子『風景をつくるごはん−都市と農村の真に幸せな関係とは』(2023.10、農山漁村文化協会)−
 https://toretate.nbkbooks.com/9784540231247/

著者は1974年広島・福山市生まれの東京工業大学教授(景観工学)。2013年には農地の石積み技術を継承するため「石積み学校」を立ち上げられました。… 続きを読む