【ほんのさわり】井出留美『私たちは何を捨てているのか』

-井出留美『私たちは何を捨てているのか-食品ロス、コロナ、気候変動』(2025年3月、ちくま新書)-
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480076779/

【ポイント】
 著者は食べものを捨てることは自分のたましいを捨てることであり、目の前の食べものとどう向き合うかは自分自身の生き方そのものあるとしています。

著者は外資系食品工業の広報やフードバンク活動に携わった食品ロス問題ジャーナリスト。… 続きを読む

【ほんのさわり】古沢広祐『今さらだけど「人新生」って?』

-古沢広祐『今さらだけど「人新生」って?-知っておくべき地球史とヒトの大転換点』(2024.3、WAVE出版)-
 https://www.wave-publishers.co.jp/books/9784866214306/

【ポイント】
 著者は、人間自らが引き起こした自滅の危機を免れるためには、世界全体の地球市民的な連帯と、グローバル資本主義の変革が不可欠としています。

著者は1950年東京生まれの國學院大學客員教授、農学博士。… 続きを読む

【ほんのさわり】赤坂憲雄『東北学/忘れられた東北』

-赤坂憲雄『東北学/忘れられた東北』(2023年6月、岩波現代文庫)
 https://www.iwanami.co.jp/book/b626374.html

【ポイント】
 著者は濃密な東北の「野辺歩き」を通じて、「単一の瑞穂の国」ではない「いくつもの日本」を発見しました。

著者は1953年東京生まれの民俗学者で、東日本大震災と東電福島第一原発の事故が起こった当時は福島県立博物館長を務められていました。… 続きを読む

【ほんのさわり】田中優子『一揆を通して社会運動を考える』

-田中優子『一揆を通して社会運動を考える』(田中編『そろそろ「社会運動」の話をしよう』(2019年4月、明石書店)所収)
 https://www.akashi.co.jp/book/b450429.html

【ポイント】
 江戸時代の百姓一揆と現代の社会運動とは様々な面で異なるものの、多様な人々がこの社会に生きるために何が必要かについて学ぶところは多いとしています。

著者は1952年横浜市生まれの法政大学名誉教授(江戸文学、江戸文化論)。… 続きを読む

【ほんのさわり】菅野芳秀『生きるための農業 地域をつくるための農業』

-菅野芳秀『生きるための農業 地域をつくるための農業』(2024年11月、大正大学出版会)
 https://www.tais.ac.jp/guide/research/publishing/chiikijin_list/002/

【ポイント】
 「令和の百姓一揆」実行委員会代表による、悪戦苦闘する農業の現場からの「ホンネ」の報告であり、消費者・生活者に連携を呼び掛けています。… 続きを読む

【ほんのさわり308】吉田太郎『シン・オーガニック』

-吉田太郎『シン・オーガニック-土壌・微生物・タネのつながりを取り戻す』(2024年7月、農山漁村文化協会)
 https://toretate.nbkbooks.com/9784540231674/

【ポイント】
 著者はいわゆる「スマート農業」的な有機農法ではなく、「自然への畏敬」を基底とする「ローカル、風土立脚型」の有機こそが重要と主張しています。

著者は1961年東京都生まれ。筑波大学大学院で地質学を専攻した後、埼玉県、東京都、長野県に農業関係の行政職員として勤務。この間、業務とは別に自ら有機農家で研修を受けたり、キューバの事例を調査・紹介したりするなど、有機農業の啓発普及に熱心に取り組んで来られた方です。定年退職後は晴耕雨読の生活を送りつつ、「フリーランサーとして好き勝手なことを言える人間にしか書けない」ものとして発表されたのが、この力作です。… 続きを読む

【ほんのさわり】2024年の振り返り

年初の号[No.283]では写真集『いつもののと』を紹介。
 原発関連では、青木美希『なぜ日本は原発を止められないのか?』[No.288]、吉田千亜『孤塁』[No.304]、小原浩靖監督の映画『原発をとめた裁判長』[No.305]を、戦争関連では寮 美千子(文)『ぼくが子どものころ戦争があった』[No.297]、太田昌秀『決定版・写真記録 沖縄線』[No.295]を紹介しました。

 農業・農政全般については、小倉武一『誰がための食料生産か』[No.300]、蔦谷栄一『生産消費者が農をひらく』[No.287]、末松広行『日本の食料安全保障』[No.298]、 … 続きを読む

【ほんのさわり】吉田恵美子『想いはこうして紡がれる』

-吉田恵美子『想いはこうして紡がれる-「古着を燃やさないまち」を実現した33年の市民活動を通して伝えたいこと』(2024年12月、英治出版)-
 https://eijipress.co.jp/products/2360

【ポイント】
 一人の人間としてもがき苦しみながら、市民運動に取り組み、実績を積み上げられてきた著者からの、後進たちへのメッセージです。

12月14日(土)に発売されたばかりの本書は、吉田さんご自身が執筆された最初のまとまった本であり、同時に、残念ながら最後の本となってしまいました。年内に計画されていた出版記念祝賀会への参加も楽しみにしていたのですが、これも叶わなくなりました。… 続きを読む

【ほんのさわり】吉田千亜『孤塁』

-吉田千亜『孤塁-双葉郡消防士たちの3・11』(2023年1月、岩波現代文庫)-
 https://www.iwanami.co.jp/book/b618320.html

【ポイント】
 原発事故のために他県消防の応援も得られないなか、生まれ育った地域を守り続けた福島県双葉消防本部の125名の消防士の活躍と葛藤の様子が描かれています。

著者は1977年生まれのフリーライター。福島第一原発事故後、被害者・避難者の取材とサポートを続けられている方。本書は2020年に本田靖春ノンフィクション賞を受賞、2023年には文庫化されています… 続きを読む

【ほんのさわり】小田切徳美『にぎやかな過疎をつくる』

-小田切徳美『にぎやかな過疎をつくる-農村再生の政策構想』(2024年8月、農山漁村文化協会)-
 https://toretate.nbkbooks.com/9784540231841/

【ポイント】
 農村は簡単には消滅しない強靭性を有しており、各地における「にぎやかな過疎」づくりの取組みは、人口減少下でも地域で幸せに住み続けるための日本全体のモデルとなるものです。

著者は明治大学農学部教授で、農村政策論、地域ガバナンス論の分野における第一人者です。… 続きを読む

【ほんのさわり】宮本常一『忘れられた日本人』

-宮本常一『忘れられた日本人』(1984年5月、岩波文庫)-
 https://www.iwanami.co.jp/book/b246167.html

【ポイント】
 宮本常一は全国をくまなく歩き、古老たちから技や知恵、みんなで助け合って暮らしてきた様子などを丹念に聴き取り、記録してきました。忘れてはならないものがたくさんあります。

宮本常一は、1907年、山口・周防大島の海岸に近い農家に生まれました。大阪で小学校の教員をしていましたが病を得て帰郷、「百姓」として過ごし、戦後は大阪府農地部の嘱託として農地解放や農業協同組合創設等の指導に当たりました。個性豊かな宮本民俗学は、農業指導、農村調査から始まったとも言えます。… 続きを読む

【ほんのさわり】金子美登・友子『有機農業ひとすじに』

−金子美登・友子『有機農業ひとすじに』(2024年3月、 創森社)−
 https://www.soshinsha-pub.com/bookdetail.php?id=437

【ポイント】
 故・金子美登さんと妻の友子さんによる取組みは、日本の有機農業の歩みそのものでした。友子さんは「いのちを守る農場」が続いていくことを願っておられます。… 続きを読む

【ほんのさわり】小倉武一『誰がための食料生産か』

−小倉武一『誰がための食料生産か』(1987年10月、家の光協会)−
 https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN01427367

【ポイント】
 戦後日本の農政、経済政策の中枢を担った著者が40年近く前に提起している問題の多くが、そのまま現在にも通じる(解決されていない)ことに驚かされます。

300号の節目にふさわしい本がないか探していたところ、本棚の奥から出てきたのが本書です。農林水産省に入省してから間もない頃に読んだ本の一冊で、何重にも多くの線が乱雑に引かれています。… 続きを読む

【ほんのさわり】末松広行『日本の食料安全保障』

−末松広行『日本の食料安全保障−食料安保政策の中心にいた元事務次官が伝えたいこと』(2023/4、育鵬社)−
 https://ikuhosha.co.jp/book/ikh093143.html

【ポイント】
 食料安全保障施策の「現場」にいた元農水省行政官が、消費者を含む関係者に向けて忌憚のない意見(私見)を述べるとともに、傾聴すべき提言を行っています。

著者は1959年埼玉県生まれ。2008年に新設された農林水産省・食料安全保障課の初代課長、後には農林水産事務次官を歴任するなど、まさに日本の食料安全保障施策の立案と運用の「現場」の中心にいた元行政官です。… 続きを読む