【ほんのさわり】伏木亨、山極寿一『いま食べることを問う』

-伏木亨、山極寿一 編著『いま食べることを問う』(2006.11、農山漁村文化協会)
 http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_4540062670/

本書は、伏木先生と山極先生が10人のゲスト(食文化、食育、農業政策等の専門家)と対談した内容等を収録したもので、「食」について非常に幅広く、かつ興味深い(目からウロコ的な)多くの論点が提示されています。

伏木先生(栄養科学)は、生命を維持するためのものであった食は、今や楽しみや快感のためのものに変わったとしています。… 続きを読む

【ほんのさわり】垣谷美雨『農ガール、農ライフ』


-垣谷美雨『農ガール、農ライフ』(2016.9、祥伝社)-
 http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396635060

32歳の水沢久美子は、派遣ギリに遭ったその日に、何年も同棲していた相手から突然別れを切り出されます。
 絶望の底に落ち込むなか、偶然、放映されていたTVの「農業女子特集」に触発されて農業を目指すことを決意。さっそく農村部に引っ越して農業大学校に入学、仲間とともに研修を受け、充実した日々を送ります(ここまでのストーリー展開は、やや安易とも感じられました)。

ところが、いざ就農しようという段階になって、久美子の前に多くの壁が立ちはだかります(この辺りから物語は生々しいリアリティを帯びてきます)。… 続きを読む

【ほんのさわり】山本紀夫『ジャガイモのきた道』

山本紀夫『ジャガイモのきた道』(2008.5、岩波新書)
https://www.iwanami.co.jp/book/b225922.html

民族植物学を専門とする筆者(国立民族学博物館名誉教授)の「ジャガイモ愛」に溢れている本です。
「イモ」については、日本人は「洗練されていない」等の良くないイメージを持っているだけではなく、ヨーロッパでは「悪魔の植物」「聖書に載っていない植物」として忌み嫌う国さえあるなど、二流の食べものといった偏見に満ちているとのこと。

しかし、ジャガイモは世界中で広く栽培されている重要な作物(栽培面積は第4位)として、多くの地域の食料供給と人口を支えていることについて、原産地であるアンデス、導入されたアイルランドやヒマラヤ等の丹念な現地調査を通して明らかにしています。… 続きを読む

【ほんのさわり】小田切徳美ほか『田園回帰がひらく未来』


小田切徳美、広井良典、大江正章、藤山浩
 『田園回帰がひらく未来-農山村再生の最前線』(2016.5、岩波ブックレット)
 https://www.iwanami.co.jp/book/b243801.html
 本書は2015年11月に開催されたシンポジウム(3名の基調スピーチ及びパネルディスカッション)の内容をまとめたもの。

まず広井良典さん(京都大こころの未来センター教授)は、現在、若い世代のローカル志向が顕著になっているのは、これからの時代に発展が期待される領域(福祉、環境、農業等)がローカルな性格を有しており、問題解決もローカルなレベルにシフトしていることを反映しているためと分析されています。… 続きを読む

【ほんのさわり】植木美江『7色野菜の便利図鑑』

-植木美江(絵と文)『7色野菜の便利図鑑』(2016.10、幻冬舎)-
  http://www.gentosha.co.jp/book/b10373.html

著者は「自然がたくさん残り、湧き水も豊富で野菜がおいしい」東京・小金井市在住のイラストレーター。
 数年前、近所の友人たちと野菜を主役(野菜の料理・スイーツ、アクセサリー、イラストなど)にしたマルシェを行ったのをきっかけに「野菜オタク」になられたそうです。
 その後、江戸東京野菜コンシェルジュの資格も取得され、自作の紙芝居を携えて学校を回る等の食育活動にも取り組んでおられます。… 続きを読む

【ほんのさわり】岩手県農村文化懇談会編『戦没農民兵士の手紙』

岩手県農村文化懇談会 編『戦没農民兵士の手紙』(1961/7、岩波新書)

1950年代末、岩手県農村文化懇談会は、戦争で亡くなった農家出身兵の手紙を収集する運動に着手しました。それは、日本の歴史の上に、異郷で戦死した若い農民の「たましい」による戦争証言を加えたいという意図からでした。… 続きを読む

【ほんのさわり】野坂昭如『火垂るの墓』

-野坂昭如『火垂るの墓』(1972/1、新潮文庫)-
http://www.shinchosha.co.jp/book/111203/

1930年、鎌倉市に生まれた野坂昭如(2015没)は生後半年で神戸に養子に行き、1945年の神戸大空襲に遭遇。『火垂るの墓』(ほたるのはか)は、その原体験に基づく小説として1967年に発表され、姉妹作の『アメリカひじき』とともに翌年、直木賞を受賞しました。その後、映画化・ドラマ化も何度かされています。

主人公は、野坂自身がモデルとされる清太少年。
 父親は出征中で音信不通、6月5日の空襲で母親を亡くし、4歳の妹・節子とともに西宮の遠い親戚にいったん身を寄せるものの、酷い扱いを受け、親戚宅を出て防空壕で自活するなか、妹を栄養失調で失います。… 続きを読む

【ほんのさわり】本田由紀『社会を結びなおす』


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本田由紀『社会を結びなおす-教育・仕事・家族の連携へ』(2014/6、岩波ブックレット)

実証的な教育社会学を専門とする本田先生が、「私たちが今、立っている場所」「日本社会のかたち」 を俯職的に把え、目の前に迫っている「社会の維持さえ難しくなっているような危機」に警鐘を鳴らしています。
 本田先生の目に映っている現在の日本社会とは、例えば「粗雑な『改革』が思いつきのようにばらばらと実施され」「締め付けや精神論が持ち込まれ」「うまくいかない状況をごまかすために分かりやすい『敵』を見つけ出して叩くことでうっぷんを晴らそうとするような振る舞いが広がっている」といったものです。… 続きを読む

【ほんのさわり】國分功一郎『暇と退屈の倫理学』


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-國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(増補新版、2015/3、太田出版)-

読書の醍醐味の一つは思いがけず刺激的な本に巡り会うことです。本書も奇抜なタイトルにひかれて読み始めたのですが、ぐいぐいと引き込まれました。
 440ページに及ぶ哲学・倫理学書を簡潔に紹介する力量はありませんが、ポイントは概ね以下のようなものです。
 人間は部屋でじっとしていられないため、熱中できる気晴らしを求める。それが全ての不幸の源泉となる(ファシズムやテロリズムにさえ通じる)。現代の消費社会はそこにつけ込んで、現代人は「終わりなき消費のゲーム」を強要され、その結果、私たちは「非人間的状況」(疎外)に陥ってしまっている。… 続きを読む

【ほんのさわり】山下惣一『小農救国論』


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山下惣一『小農救国論』(2014/10、創森社)

著者は1936年、佐賀・唐津市の生まれ。家業である農業を営まれつつ、農村の実情を踏まえた小説、エッセイ、ルポルタージュ等を発表してこられた方です。
 本書のテーマ・結論は「小農こそが国と国民を救う」。「大規模農業を否定するつもりはないが、小さいからこそ農業はやっていける」というのが山下さんの主張です。
 ちなみに小農(家族農業)とは「暮らしを目的として営む農業」のことだそうです。… 続きを読む

【ほんのさわり】浅見彰宏『ぼくが百姓になった理由』


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-浅見彰宏『ぼくが百姓になった理由(わけ)-山村でめざす自給知足』
  (2012/11、コモンズ)-

著者は1969年千葉県の生まれ。
 バブル景気まっただ中、上智大学文学部を卒業して大手鉄鋼メーカーに就職。アジアへの輸出業務等に携わるなか、次第に行き過ぎた市場経済と、そのために生まれた貧困や格差、環境問題など社会の矛盾を感じるようになったそうです。… 続きを読む

【ほんのさわり】松瀬学『東京農場-坂本多旦 いのちの都づくり』


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東京湾の埋立地(ごみ処分場)を農場にしようという壮大な構想を立てた方がいます。坂本多旦(かずあき)さんです。
 坂本さんは1940年、山口市(旧 阿東町)生まれ。家業の農業を継ぎ、64年には仲間5人と農業法人・船方総合農場を立ち上げられました。日本における農業法人の先駆けであり、「6次産業化」「道の駅」「都市農村交流」等を発案し、最初に取り組んだのも坂本さんです。
 また、日本における農業経営体の中では少数派であった農業法人の組織化を図り、1996(平成8)年8月8日には全国農業法人を設立、さらに1999年には公益法人に衣替えした日本農業協会の初代会長に就任されました。… 続きを読む

【ほんのさわり】飯田泰之ほか『地域再生の失敗学』

-飯田泰之、木下斉、川崎一泰、入山章栄、林直樹、熊谷俊人
『地域再生の失敗学』(2016.4、光文社新書)-

1975年生まれの気鋭のマクロ経済学者・飯田恭之氏が、5人の有識者(プレーヤー、研究者、首長)との対談等を通じて、今後の地域再生策について鋭く考察しています。

著者は「地域再生」を、地域における平均所得が向上することと定義づけています。
 所得向上がなければ地域の存続すら危ぶまれるとのこと。一方、地域の平均所得が増加することは、文化や伝統、コミュニティ再生等より広義の地域再生にとっての必要条件であるとしています。… 続きを読む

【ほんのさわり】三浦しおん『神去なあなあ日常』

-三浦しおん『神去なあなあ日常』(2012年9月、徳間文庫)-

直木賞・本屋大賞作家の三浦しをんさんによる「青春林業小説」です。
 主人公の平野勇気クン(18歳、横浜在住)は、高校卒業後、適当にフリーターでもして食っていこうと思っていたのが、ひょんなことから三重県の山奥にある神去村(かむさりむら)に林業研修生として放りこまれてしまうんだ。
 ちなみに「なあなあ」とは、「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」ってニュアンスの村の人たちの口癖。神去の人たちが「なあなあ」を大事にしているのは、百年単位でサイクルする林業に携わっている人が多いためらしい。

都会っ子の主人公には林業の仕事はキツく、ダニやヒルも襲来するし、ケータイも使えずコンビニもない田舎の生活にも馴染めない。最初のうちは何とか逃げ出すことばかり考えていた。… 続きを読む

【ほんのさわり】速水健朗『フード左翼とフード右翼』

速水健朗(はやみず・けんろう)さんは1973年、石川・金沢市生まれのライター・編集者。
 メディア論、都市論、ショッピングモール研究等を専門とする著者が、ユニークな視点から日本と世界の「食」の問題に鋭く切り込みました。

「国民食」という言葉で象徴されるように、もともと「食でつながる民族」であった日本人は、近年、急速に二極分化しているとのこと。
 そこで食の好みをマッピングすることで、日本人の食にまつわる政治意識をあぶりだすことを試みます。
 横軸の右側がグローバリズムで左側が地域主義。縦軸の上は健康志向で下は価格志向。… 続きを読む