【ほんのさわり】守友裕一ほか『福島-農からの日本再生』


 守友裕一、神代英昭、大谷尚之『福島-農からの日本再生:内発的地域づくりの展開』(2014/3、農山漁村文化協会)
http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54013207/

代表編著者の守友裕一先生は1948年富山県生まれの農学博士。
 宇都宮大学教授等を経て、現在は福島大学特任教授として「ふくしま未来食・農教育プログラム」等に携わっておられます。

守友先生によると、原発被害は、フローの損害、ストックの損害、社会関係資本の損害(以上は福島大・小山良太教授の整理)に加えて、循環の破壊の損害、自給(恵み、文化、豊かさ)の破壊による損害を与えたとのこと。
 そして「農業を軸として、自然と暮らしと経済の循環に目を向けていくことが、地域再生の不可欠の条件となっている」とされます。

また、飯館村に関する章においては、もともと飯舘村では村民参加の村づくり活動が活発に行われてきたという歴史があることを紹介されています。
 そして、原発事故により役場も全ての村民も避難を余儀なくされるという非常事態下においても、全村民アンケートの実施、行政区懇談会(行政区ごとのワークショップ)の連続開催、住民主体による放射線計測等に取り組んできており、守友先生は「これまでの村民主体の村づくりの伝統が、今、この困難な局面から地域の再生を目指すなかで生かされている」と評価されています。

さらに守友先生は、原発災害が人の心を分断する危険性を踏まえつつ、「ひとそれぞれ の生き方の選択を尊重し、それを相互に認めあって、互いに補い合いながら進んでいくと いう考え方を、原発被災地のみならず、これからの地域の再生、日本の再生に生かしていくことが重要」とされます。
 震災以前から、そして震災後も、飯舘村の方たちに寄り添ってきた守友先生ならではの言葉です。

[参考]
福島大学・ふくしま未来食・農教育プログラム
http://shokunou.net.fukushima-u.ac.jp/

ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-ほんのさわり」
http://food-mileage.jp/category/br/

(出典:フード・マイレージ資料室 通信 No.131、2017年11月18日(金)[和暦 神無月朔日]発行)