今年は三寒四温を繰り返しながらも、春の訪れが早いと感じられます。
2019年3月1日(金)の夜は、珍しく東京・神楽坂へ。多くの人が行き来しています。善国寺(毘沙門様)の門前にはハート型のオブジェ。
久しぶりに伺ったのはレザミ。
昨年9月、八幡名子さんボランティア報告会の会場として使わせて頂いた以来です。
選りすぐりの銘酒・比翼鶴(福岡・久留米市)に、ムール貝やお造りを頂きました。
山本シェフ、ご馳走様でした。
翌2日(土)も好天。東京・経堂の生活クラブ館へ。
この日、14時から開催されたのは、「世界都市農業サミットがやって来る~都市だから農業!~」と題する講座。
主催は、食育など学びの場をコーディネートするNPO法人CSまちデザインです。
この日の講師は毛塚久さん(練馬区都市農業課長)と白石好孝さん(「大泉風のがっこう」主宰)。
白石さんはCSまちデザインの理事でもあります。
司会の榊田みどりさん(農業ジャーナリスト、CSまちデザイン理事)から開会の挨拶がありました(文責・中田)。
「都市農業基本法が制定されるなど、都市農業には追い風が吹いている一方で危機もはらんでいる。今日は、市民も都市農業に積極的に関わっていく視点から、会場の皆さんとも話し合いたい」
まず毛塚さんから、「練馬区の都市農業のこれから」と題するスライドと資料により説明がありました。
「練馬区では市民生活と融合したビジネスとしての農業が営まれており、農業体験農園や『果樹あるファーム』など、都市住民のニーズに応え発展してきた。
全国の都市農業を牽引、世界的にも稀有」
「23区内の農地の約4割は練馬区にある。面積当たりの収入も高い。キャベツや果樹栽培が盛ん。観光農園も多い」
「一方、この23年間で農地面積は52%減(特別区では61%減)し、農業従事者は高齢化といった課題も。区民の農業体験に対するニーズは高いが70%は体験したことがない」
「区として国に制度改正を働きかけ、2015年には都市農業振興基本法が制定され、2018年には生産緑地の貸借も可能となった。
意欲的な農業者への支援(『農の学校』によるマッチング、都市型認定農業者制度)も実施」
「都市農地・農業は、今後の都市生活をさらに豊かする可能性がある。
そのことを世界に発信するとともに、相互に学び、発展させていくため、本年11月には世界都市農業サミットを開催する予定」
「昨年11月にはプレイベントを実施。
ニューヨークとロンドンからの招待者(行政担当者、研究者)からは、市街地の中で活きた農業が営まれていることを高く評価して頂いた。特に『農の学校』の取組みや直売所等には、強い関心を持たれていた」
「世界農業都市サミットは、11月29日(土)~12月1日(日)に練馬文化センター等を会場に開催。
国際シンポジウム(ニューヨーク、ロンドン、ジャカルタ、ソウル、トロントから招聘)、マルシェ、ジャズコンサート等を予定。練馬大根引っこ抜き国際競技大会も」
「1992年に指定された生産緑地は2022年に30年を迎える。
今後は、生産緑地の貸借制度の活用、特定生産緑地制度の周知と指定の推進等が課題」
続いて、白石好孝さんからの報告。
白石さんは約2haの畑で約40種類の野菜を生産。市場出荷はせず、庭先やJA直売所、スーパーとの契約等で販売し地域の小中学校にも学校給食として納入されているという方。
主宰されている「風のがっこう」は、全国に広がりつつある農業体験農園を先駆けです。
地球の夜景の衛星写真から話は始まりました。
日本は明るく、都市的地域が多いことが分かります。
「世界都市農業サミットは、亡くなった前区長と農業者との懇談会で出てきたアイディアがきっかけ。いよいよ本年11月には本サミット開催の運びとなった」
「練馬区の農業は、規模は零細だが生産性は高い。自然を搾取しない持続的な農業が営まれている。
農地は経営や労働の場であるだけてはなく、神事・祭事の場でもある。ほとんどの農家は江戸時代から続いており、先祖から受け継いた農地を子孫に継承していきたいという信念がある」
「農家だけではなく、区民や行政とも一緒に都市農業を育てていくことが重要」
都市農業のリーダーとして実践・活躍しておられる方だけに、言葉には重みがありました。
後半は榊田さんの進行により、会場の参加者を含めた質疑応答。
生産緑地についても議論になりました。
多くは2022年に納税猶予の期限(指定から30年後)を迎えることから、多くが宅地化する恐れがあるとのこと。アンケートによると後継者問題が課題となっているようです。
制度改正により「貸す」という選択肢もでき、練馬区としては、制度の周知と、新規就農希望者とのマッチングにも取り組んでおられるとのこと。
会場からは、練馬大根についても質問がありました。
白石さん始め4軒で交配し種採りをし、小中学校や施設、希望する区民に配布しているそうです。
また、昨年のプレイベントにも参加されたという方からは、本イベントの国際シンポジウムへの参加方法等についても質問がありました。
最後に榊田さんからは、
「都市農業に関わる法律や制度は、都市の農家自らが勝ち取ってきたもの。それを活かしていくためには、都市住民と農業者との間に新しい関係を作っていくことが必要」等のまとめがありました。
かつて「市街化すべき土地」としてのみ位置づけられていた都市農地は、近年、防災面も含めて重要な役割を有していることについての認識が高まってきました。
それ自体は間違いなく良いことで、都市農地・農業の重要性も全く否定するものではありません。
一方、個人的には、東京圏への人口の一極集中を廃し、宅地と農地(市民と農業者)とがバランスの取れた国土の姿を実現していくことが、根本的・構造的には重要ではないかとも感じました。
CSまちデザインの講座は、参加するたびに多くの学びと発見があります。
ちなみに3月19日(火)には、この日の講師だった白石さんを再びお呼びし、「ベランダからはじめる野菜づくり~春夏野菜をつくってみましょう~」という、より実用的なセミナーが予定されているそうです。