【ほんのさわり】枝廣淳子『地元経済を創りなおす』

-枝廣淳子『地元経済を創りなおす』(2018.2、岩波新書)-
 https://www.iwanami.co.jp/book/b345708.html 

 著者は東京都市大学教授で、幸せ経済社会研究所所長。
 アル・ゴア『不都合な真実』を翻訳・紹介するなど地球環境・エネルギー問題の分野を中心に活躍されてきた著者ですが、近年は地域経済に強い関心を持っておられるようです。
 著者によると「未来は地域にしかない」とのこと。

 まず、地域経済を取り戻すための分析モデルやツールとして、地域産業連関表や地域経済分析システム(RESAS)による「域際収支」や「地域経済循環マップ」の理論と分析事例が分かりやすく説明されています。
 また、NEF(イギリス・ロンドン)が提唱する「漏れバケツ」理論も紹介され、地域経済の漏れ穴(地域外へのお金の流出)を少しでも小さくする取組みの重要性を指摘しています。
 この関連で、地産地消ならぬ「地消地産」(地域で消費しているものを地域で作ろう)という考え方にも言及があります。

 さらに「地域経済を創りなおしている」具体的な事例として、島根・海士町(観光協会の子会社によるクリーニングや土産品開発)、北海道・下川町(独自の産業連関表に基づくエネルギー自給)、富山・入善町(地場産による学校給食)等のほか、海外ではアメリカのスロー・マネー運動、イギリス・トットネス地方(「地元経済の青写真」)などの豊富な取組み内容が、経済を地元に取り戻すための具体的なノウハウとともに紹介されています。

 本書は「分析・診断・対策」という副題にある通り、著者が「地域経済を取り戻すために実際に使ってもらいたい」という強い思いで、3年をかけて完成させた「実用書」です。

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-No.172
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/