【メルマガ】F.M.Letter No.196

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.196◇
 2020年7月5日(日)[和暦 皐月十五日発行]
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◆ F.M.豆知識  外食の売上げの推移
◆ O.カレント  国産農林水産物等販売促進緊急対策等
◆ ほんのさわり 古沢 広祐『食・農・環境とSDGs』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 一年の折り返しでもある半夏生(はんげしょう)は、田植えも終えて体調を整える頃とされています。熊本等では大雨で大きな被害。新型コロナウイルス感染の再拡大も気がかりです。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−外食の売上げの推移−

(一社)日本フードサービス協会(JF)は、毎月、会員の飲食関連会社を対象として売上高等を調査しています。
 これによると、2020年2月頃まではほぼ前年同月並みで推移していた売上高(全店舗)は、新型コロナウイルスの感染が拡大してきた3月は前年同月に比べ17%減少し、さらに緊急事態宣言が発出された4月には40%と大幅に落ち込みました。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2020/07/196_gaishoku.png

 その後、徐々に緊急事態宣言が解除された5月には32%減と4月よりいくぶん回復したものの、引き続き大幅な減少となっています。
 また、客数は38%減少している一方、客単価は逆に前年同月を9%上回っています。

 この状況は、業態別に大きな差があります。
 比較的少ない減少幅にとどまっているのはファストフードです。特にハンバーガーなど洋風ファストフードはもともと持ち帰りが大きい業態でしたが、2020年5月のファストフード全体の売上高は前年同月の1割減にとどまっており、客単価は23%上昇しています。
 また、宅配ピザを含む「その他」も客単価は上昇しています。

 一方、特に深刻なのは居酒屋/パブレストランで、売上高は前年同月を9割下回っており、客単価も14%低下しています。
 居酒屋等でも持ち帰り販売等に取り組むなど努力されている店舗は多く、全国的に緊急事態宣言が解除されたのちの6月以降は回復することが期待されますが、ここにきて再び新規感染者が増加していることが懸念されます。
 心ある外食事業者の方たちを応援したいと思います。

[資料]
(一社)日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」
 http://www.jfnet.or.jp/files/getujidata-2020-05.pdf

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−国産農林水産物等販売促進緊急対策等−

農林水産省では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い様々な活動が自粛されるなか、国産農林水産物の販売促進を支援する取組みを実施しています。
 これには次の4つの支援プログラムがあります。

1 インターネット販売推進事業
 インターネット販売サイトを通じて販売を行う際の配送費を支援。

2 食育等推進事業
 食材の説明など食育の取組みを行う子ども食堂等で使用する食材費等を支援。

3 農林水産物の販路の多角化推進事業
 デリバリーやテイクアウト等、飲食店の販路多角化で使用する食材費・容器包装費を支援。

4 地域の創意による販売促進事業
 地域の創意工夫で、直売所やスーパーの販促キャンペーンで使用する食材費等を支援。

 具体的な内容については以下の特設サイトをご覧頂き(プログラムごとの特設サイトへのリンクも貼られています)、もし活用できそうなプログラム等があれば、積極的に活用して下さい。
 なお、これらとは別に、飲食店の需要喚起を目的とした「Go to eat」キャンペーンも近く開始される予定です。

[参考]
 国産農林水産物等販売促進緊急対策 特設ウェブサイト
 https://www.kokusan-ouen.jp/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−古沢 広祐『食・農・環境とSDGs−持続可能な社会のトータルビジョン』(2020.2、農山漁村文化協会)−
 http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54019209/

著者は1950年東京生まれ。京都大学大学院農学研究科で博士課程(農林経済)を習得、現在は國學院大學経済学部教授(本書「おわりに」によると、3月末で定年退職とのこと)。

 環境社会経済学や持続可能社会論を専門とする研究者であると同時に、NGO等で地球市民的な活動にも積極的に取り組んで来られた方で、様々な国際的な会合(1992年地球サミット、2015年COP15会合、国連総会等)にも参加されています。

 著者の問題意識と提言内容は明確です。
 マネー・金融資本優先の現代資本主義社会は、地球環境問題、経済格差、社会的軋轢等を生み出しており、持続可能性の視点から根本的な転換を求められているという歴史的な認識。その上で、第一次産業を中核とする有機的連携・循環共生社会への変革を目指すべきとしています。
 そして食と農の復権は、下からの社会変革の具体的な舞台になる可能性を秘めているとし、「有機農業の展開こそが、新しいライフスタイルやパラダイムを展望するための先駆的形態を体現しているのではないか」としているのです。

 著者は、食と農を、大地(自然)と人間をつなぐ「へその緒」に例えています。
 農業は、歴史的に自然の多様性と呼応し合いながら、精神的・宗教的意味を含む文化的な多様性を育むなど、人間と社会の根幹を支える土台を形成してきました。食とは、単なる栄養のかたまりではないのです。
 その意味で、現在、注目されている食料主権(food sovereignty)という言葉は、「食の尊厳性」という訳の方が適当ともしています。

 また、消費者サイドの価値観の変化(環境配慮、エシカル消費等)が、社会を大きく変える時代になっているとの指摘もあります。

 比較的分厚い学術書でもありますが、国内外の事例等が豊富に紹介されるなど記述は平易で、持続可能な将来社会に向けての考察と実践を模索している人にとっては必携のテキストです。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇パソコンの不調、夏至の畑、「障がい」関連の本。[6/25]
 https://food-mileage.jp/2020/06/25/blog-270/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ オンライン市民科学講座
 シリーズ「生活のなかの科学技術リスク」(第1期)全13回
 日時:2020年4月23日(木)19:00〜最長21:00、
   〜7月16日(木)
 (直近は7月10日(金)、16日(木))
 場所:オンライン(ZOOM)
 主催:市民科学研究室
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/online_csijseminar_2020/

○ オンラインきき酒会/第2回「能登のお酒と里山まるごとホテル」
 日時:2020年7月9日(木)19:00〜20:30
 場所:オンライン(ZOOM)
 主催:農業情報総合研究所/農業ビジネス研究会
 (詳細等)
 メール info(アットマーク)sp-senryaku.org までお問い合わせ下さい。

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 「レジ袋への対応で、企業の通信簿をつけられるね」
 「えっ、どういう風に?」
 「優、良、可(有料化)」

 コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載してあります。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.197は7月21日(日)[和暦 水無月朔日]に配信予定です。世の中は落ち着きをみせているでしょうか。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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