【ほんのさわり No.211】田尾陽一『飯舘村からの挑戦』

−田尾陽一『飯舘村からの挑戦−自然との共生をめざして』(ちくま新書、2020.12)−
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480073631/

著者は1941年神奈川県生まれ。東京大学大学院で物理学を専攻した後、ITベンチャーを起業し、大手セキュリティ会社の役員まで務めらた方。エネルギー研究者になった背景には、4歳の頃に広島市郊外に疎開した時に原爆の光を目撃した原体験があるそうです。

2011年6月、原発被災地を訪ねた著者たちは、全村避難指示が出されていた福島・飯館村の地元の農家の方たちと連携して「ふくしま再生の会」を立ち上げました(翌年にNPO化)。それから何度も現地を訪ね、村内の放射線量の測定活動を始められたのです。それから10年、住民目線で原発被害地域の再生に取り組んでこられました。
 なお、著者は2017年に避難指示が解除された直後、飯舘村に移住されています。

著者は、田中正造翁の「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」という言葉を引用し、「現代は真の文明社会ではない」と断じています。
 そして、自然の中で再び生きようとする飯舘村の人たちと協働することによる新しい生き方を提案しています。それは「自然と人間の共生を取り戻す」こと。「近代文明を見直す壮大な哲学的課題」であり「原発事故とコロナ禍を考察する最大の切り口」でもあるとしています。

著者は読者に「現地に足を運んで、ともに考え、豊かな自然の中で試みている再生の活動に参加してもらいたいと切に願っている」と訴えています。

参考:NPOふくしま再生の会 
 http://www.fukushima-saisei.jp/

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.211、2021年2月12日(金)[和暦 睦月朔日]
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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