【ブログ】髙坂勝さん「適疎へ」(脱成長MTG)

2021年2月も後半。寒暖の激しい日が続きます。記録的な少雨で栃木・足利では大規模山火事も。
 蠟梅(ロウバイ)、辛夷(コブシ)、山茱萸(サンシュユ)など、低木に咲く黄色い花が目を楽しませてくれています。

2月23日(火、休日)の13時30分から、第21回脱成長ミーティングが開催されました。 
 昨年の1月(石井一也先生の回)以来、オンラインでの再開です。参加者は関西の方なども含めて40名ほど。

 代表の白川真澄さん(ピープルズ・プラン研究所)から開会挨拶と、今回の報告者である髙坂 勝(こうさか まさる)さんの紹介がありました。
 
 かつて池袋で14年間営んでいた ORGANIC BAR「たまTSUKI」を閉じ、現在は千葉・匝瑳市に活動の軸足を移されているという方。脱成長MTGの共同代表でもあります。

『「地方の過疎」と「都会の過密」を「過疎」へ』と題する髙坂さんの報告は、自宅周辺を歩きながらのスマホの映像からはじまりました。 

 都会とは異なる広々とした景色。庭には薪と太陽光発電パネル。玄関を入ると、テーブルには味噌づくりの道具などが並んでいます。 
 アナログとITを駆使しながら自給を目指している髙坂さんの生活を垣間見させて頂きました。

髙坂さんはパソコンの前に戻られ、報告がスタート(一部。文責、中田)。 

 「人口は今後100年で3分の1まで減少するとされるが、道路や福祉など求められるサービスはそれほど減らせない。そこに需給ギャップが生じ、仕事や役割が生まれる。
 みんな誰もが主役で、この世の中に必要な人となる時代が来る。利便性や幸福度も上がる。自分は人口や経済の減少をポジティブに捉えている」

 「行き過ぎた経済成長システムは破綻している。次の時代は、消費者が同時に生産者となる協働型コモンズ、ワーカーズコープ、シェアリングエコノミー、社会的共通資本等の概念が重要になる」

 「サラリーマン時代には600万あった年収は『退職者量産BAR』を始めて300万へ。それが現在は150万へとダウンシフト。
 現在はSOSA Project、小学生の米作り体験の受け入れ、微生物トイレ作りワークショップ、学園の非常勤講師などマルチワーカーとして活動している」 

 「匝瑳で米作りをした仲間が、全国で、様々な分野で活躍している。zoom等の発達で、場所を選ばず実践しながら生きていける世の中になった」

 「人が地方行くだけでは不十分。地域内で循環経済を創っていかないと地域は生き残っていけない。 
 地元の方たち、行政や銀行とも連携しつつ、ソーラーシェアリングなど再生エネルギーの地産地消に取り組んでいる。災害時の停電リスクも分散でき、電気の無償給電所の設置など、送電線の無い『ご近所電気』の構想も。
 高齢者の足も、自動運転の電気自動車で確保できる。当事者による共同介護の構想づくり等にも取り組んでいきたい」

「大事なものは暮らしであっておカネではない。できもしない経済成長を目指そうとするから格差が拡大し、財政負担も犯罪も増加する。 
 ブルシットジョブという言葉に象徴されるように、モノを消費するために働くようなライフスタイルから脱却することが必要。小さな額で良いもの、本物を買うという適量消費社会への転換が必要」 
 
 「東京は便利で住みやすいというのは、今や勘違いに過ぎない。地方にはいくらでも仕事や役割がある。都会と違い、小さな収入でも安心して暮らしていける。ベーシックインカムの議論もあるが、財源がなければベーシックフード、ベーシック田んぼでもいい」
 
 「世界でも、ローカルから大きなシステムを追い込んでいく動きが広がっている。ダウンシフトして小さく生きることで世界を大きく変えていける」 

 「都会の過密、地方の過疎をともに『適疎』に向かわせることが必要。こんな未来ビジョンを共有し、ともに勝ち取っていきたい。 
 自宅を改装して『Lazy Farmer’s Inn』を開業した。ミニマリストの幸せな後姿を、みんなに見てもらえればと思っている」
 
 久しぶりに髙坂さんのまとまったお話を伺いました。髙坂さんの取組みは、さらに「成長」を続けているようです。

15時からは参加者との間で質疑応答・意見交換。
 広島・福山から参加された方の「いったん移住しても戻る人もいるのでは。地方暮らしの課題は何か」との質問には、 
 「初期の頃は戻る人もいたが、今はほとんどいない。人と付き合うこと、土とまみれることわ苦にしない人なら大丈夫。仕事は、時給1000円位の仕事なら準備できるので安心してほしい。近隣に大きな病院もある」との回答。

 大阪からの参加者からの「世界では若者も気候危機に取り組んでいるが」との問いには
 「地域でソーラーシェアリングに取り組んでおり、古くなったいパネルを配ってもらえる。バッテリだけ調達すれば洗濯機も回せる。再生エネも、原発や石油よりはマシだが廃棄物は出る。省エネが最優先」

神奈川から那須に移住したという女性の「空き家や耕作放棄地が多いことを実感。農業を立て直す必要があるのでは」との意見には、
 「住宅も農地も、手が回らなくなっているものがあるのは事実。耕作放棄地を引き受けようとすると慣行・大規模農法しかできなくなる。都市部を含め、すべての人が半自給的な生活をすることが重要では」との回答。
 他の参加者からの「消費者がもっと米を食べるようにすればいいのでは」とのコメントも。

 他にもベーシックインカムの財源問題、地方政治のあり方、コンパクトシティ等についても活発な意見交換が続き、16時半を回っても終わる気配がありません。 

 残念でしたが、所用があって途中で退席。
 ぜひ匝瑳に(泊りに)伺いたいと思いました。

ところで同じ日(2021年2月23日)の21時からは「第7回 コンポストーク」というイベントにオンライン参加。12名が参加されています。 

 生ごみや落ち葉を微生物のはたらきで分解して堆肥に変えるコンポストについて、実践内容など情報交換などが行われました。私もジップロックでベランダで実験中です。

皆さんが作っているものは、単にたい肥だけではないようです。
 「コンポストづくりは暮らしのリズム。毎日、必ず出る生ごみを寝る前に片づける習慣ができた」
 「自分の世界を広げる第一歩になっている。新しい人たちと知り合うきっかけにも」
 「ごみは、ごみにしなければごみにならない。できるだけごみが発生しないように意識するようになった」等の感想が交わされました。

 ここにも、髙坂さんが提唱される「小さな循環」が確実に生まれ、拡がりつつあります。