【ブログ】ゆっくり農縁(東京・あきる野市)

2021年10月11日(月)は快晴。気温も10月とは思えない高さまで上昇。
 ドア点検で西武線のダイヤが乱れていたものの、何とかほぼ予定通り11時前にJR五日市線・武蔵増戸駅に到着。
 石川敏之さんが出迎えて下さいました。

石川さんは神奈川県のご出身。ブータン旅行等をきっかけにスローライフに目覚めて生協を早期退職。食べもの関連など様々な社会活動に参画されているうちに自ら生産者になることを決意され、4年ほど前に、この地に「ゆっくり農縁」を開園されたという方。
 私は7~8年前に江戸東京野菜をきっかけにご縁を頂き、八王子市内での市民講座映画上映会にお誘い頂いたこともあります。

かねて一度見学に伺いたいと念願していたところ、コロナ禍もあってままならなかったのが、ようやく実現しました。
 車で2分ほどで農園に到着。

ちなみに石川さんは、本年6月12日(土)に全国放映されたテレビ朝日「人生の楽園」にも出演・登場され、ますますご多忙になられた様子です。

(写真はテレビ朝日で放映された映像より)

さて、住宅に囲まれたゆっくり農縁の面積は400坪ほど。優に100種類を超える作物を自然栽培されているとのこと。ちなみに農「園」ではなく農「縁」という名称に、石川さんの思いが込められています。

 今は端境期だそうですが、多くの作物が栽培されています。圃場を回りながら一つひとつ説明して下さいました。
 多くは固定種だそうです。例えば後関晩成小松菜、三河島菜、埼玉青大丸茄子、青森の香り豆(枝豆)、赤い沖縄の島オクラ、珍しいイタリア野菜(スミマセン、名前は失念しました)など。
 今年は天候不順で、うまくできなかったものもあったそうです。

色とりどりの花をつけたハーブも、何種類も植えられています。
 ほとんど草に埋もれているかぼちゃは、固定種同士の自然交配でできたものだそうで(ゆっくりブランド?)、評判がいいそうです。
 サツマイモは、今月31日(日)のイベントで掘る予定とのこと。

農場の見学後は、せっかくだからと周辺を案内して下さることに(スマホにはひっきりなしに電話やメッセージが入ってきます。お忙しいところ申し訳ありません)。

まずは、農場のすぐ近くにある健康自然工房・みつばちファームへ(テレビ番組の中では、作業を手伝う石川さんが蜂に刺されたエピソードも紹介されていました)。
 建物の前には使用されていない巣箱が積み並べられています。
 東京多摩産のはちみつ(色んな種類)、プロポリス、ローヤルゼリー等が販売されており、養蜂についての資料展示コーナーもあります。何点か求めさせて頂きました。
 ジェラード等も頂けるカフェも併設されています。

 石川さんは、ショップの方と親しく挨拶を交わされていました。

車で五日市街道を東へ15分ほど。
 ランチに案内して下さったのは、イタリア食堂・共正(ともまさ)製作所という、ちょっと変わった名前のレストラン。天井が高く落ち着ける空間で、パスタやサラダのランチセットを頂きました(美味しかったです。ご馳走様でした)。

 石川さんが、若き代表の方を紹介して下さいました。
 著名なシェフの下で修業された後、この地で、地元産の野菜や廃棄物リサイクル(コンポスト)にこだわったレストラン経営をされているそうです。
 「社会を変えていくのは簡単ではないけれど、自分たちの取組みや思いを料理を通して伝えていきたい」等と、淡々と話しておられました。

西へ少し戻って、一段、坂道を登ると、思いがけず広い空間が開けました。
 畑の中には作業している人たちの姿。ここが東京地球農園です。

2000年に数家族で資源循環農法に取り組み始め、子ども達の農業体験も受け入れておられるとのこと。
 抜けるような青空のこの日も、何人もの子ども達が大きなサツマイモを掘り出して喜んでいました。スタッフの方が焼き芋の準備をされています。自分で掘ったばかりの焼き芋、美味しくないはずはないでょう。

 石川さんは、ここでも代表の方やスタッフの方と、永年の友人のように話を交わされていました。人脈の広さは、石川さんのお人柄によるものと思われます。

街道沿いに目立つ蔵が現れました。
 キッコーゴが屋号の近藤醸造です。今や東京都内唯一の醤油蔵だそうで、店内には木(木材も伝統的に西多摩の特産です。)が多用されていて、快適な空間です。
 ここではポン酢や醤油フィナンシェをゲット。

 駐車場には「歩きたくなる町・武蔵増戸」の看板(他に何か所にもありました)。ゆっくり農縁もロゴ入りで、スーパー・いな〇や等よりも大きく表示されていました(赤丸部分)。

武蔵増戸駅からさらに西、踏切を渡って少し山間に入ったところが横沢入里山保全地域です。
 7つの谷戸から構成される里山で、地域のNPOの方々により田んぼが保全されています(東畑ばかりの武蔵野では貴重です)。
 沢水が流れ、はざに吊るされた稲束が秋の明るい陽差しの下で輝いていました。

すぐ近くにある大悲願寺に参拝。
 1191年に創建されたという古刹の真言宗寺院で、大木の囲まれた境内は静けさに包まれています。観音堂(国重文)には色鮮やかな彫刻も施されています。
 白萩の名所だそうですが、残念ながら花はすでに散っていました。

厚かましくも、石川さんのご自宅までお邪魔させて頂きました。
 テレビで放映されたとおり、秋川渓谷に張り出すようにベランダがあります。河原まで降りてみると、澄んだ水の中に多くの魚影。シラサギとアオサギの姿も。

庭には京都・龍安寺にあるものと同じ「知足の蹲踞(つくばい)」。
 「吾唯足知」(われただたるをしる)という言葉は、かねて石川さんも大好きだったそうで、偶然、以前に住んでいた大家さんが置かれたものだそうです。

冷たい麦茶(暑かったので格別美味!)を頂いた後、駅まで送って下さることに。
 しかもせっかくだからと、遠回りして黒茶屋を案内して下さいました。三百年前の庄屋造りの古民家を活用した著名な料理屋さんで、秋川の渓谷が望め、門前には立派な水車が回っています。

16時前に武蔵五日市駅まで送って下さいました。
 石川さん、お忙しい中をほとんど一日がかりで案内して下さり、本当に有難うございました。

ところで、農園入り口の看板にも市内案内図にもあるゆっくり農縁のロゴは、お知り合いのデザイナーの方に作って頂いたものだそうです。
 文字を囲む少し歪んだ丸の周りを、色とりどりの野菜たちが取り囲んでいます。

伺ったところによると、4年前にこの地に農園を開くことになったのは、偶然、この場所を通りかかって地主さんと知り合ったのがきっかけだったとのこと。
 また、まさに「人生の楽園」のような最高のロケーション家を借りることができたのは、庭にある「知足のつくばい」が引き寄せた縁だったのかも知れません。

ちなみに石川さんの野菜は、知り合いの飲食店や消費者に販売されていますが(地元産の固定種・自然栽培の野菜の人気は高いそうです)、直売所やネットなど、販売規模を拡大する予定はないとのこと。

 それよりも、この農園という場をきっかけとして、多くの方たちとの「ご縁」を結び、紡いでいきたいというのが石川さんの思いのようです。ミニシアターなど新たな構想もあるとのこと。
 石川さんとゆっくり農縁の取組みに、今後も期待したいと思います。

最近「ローカル」という言葉が気になっています。
 何もカタカナで言うことはないのですが、地方、地域、地区といった日本語とは若干ニュアンスが違うような気もします。「場」が近いのかも知れません。

 あきるの市のゆっくり農縁を含め、様々な「場」を舞台に、正に「地に足を付けた」取組みが拡がりつつあります。これらローカルな取組みが、ナショナル、グローバルな社会や経済を変えていくことに期待したいと思います。