【メルマガ】F.M.Letter No.238

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.238◇
 2022年3月17日(木)[和暦 如月十五日]配信
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◆ F.M.豆知識  世界の植物油生産
◆ O.カレント  福島ひまわり里親プロジェクト
◆ ほんのさわり 映画「ひまわり」(1970年)
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 ロシアによる武力侵攻から3週間が経過、未だ戦火はやみません。
 そのようなか、昨夜は宮城・福島で震度6強の地震が発生。東京地方もかなり揺れ、あたかも11年前を忘れるなという大地からの警告のようでした。震れが大きかった地域の方々にお見舞い申し上げます。
 今号のテーマは、ひまわりです。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さった皆様に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−世界の植物油生産−

サラダ油等と呼ばれることもある植物油は、私たちの食生活に欠かせない食材であり、同時に世界の農業・食品産業のなかでも重要な地位を占めています。

世界の植物油の生産量は2億13百万トン(2021/22年度見通し。以下、同じ)。
 その内訳は、リンク先の図238の右側の円グラフにある通り、パーム(アブラヤシ)油が36%と最も多く、次いで大豆油が28%とこの両者で全体の6割以上を占め、次いで菜種油が13%となっています。なお、パーム油はインドネシアやマレーシア、大豆油は中国やアメリカが主な生産国です。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/03/238_vegeoil.pdf

これらに次ぐのがひまわり油(10%)です。
 ひまわり油は日本ではあまり馴染みがありませんが、実は世界の植物油市場では大きな地位を占めています。

左側の円グラフは、ひまわり油の国別の生産量のシェアを表しています。
 これによると、最も多いのはウクライナの31%、次いでロシアの28%と、現在、武力紛争下にある両国が全世界のひまわり油生産量の6割近くを占めています(輸出量では約8割)。
 アメリカ農務省の最新(2022年3月)のレポートでは、黒海の港湾及び搾油施設の閉鎖に伴い、ウクライナのひまわり油の輸出は前月の予測に比べ14%減少すると下方修正されています。

小麦の価格上昇が日本の食卓を直撃していますが、同様にほとんどを輸入に依存している植物油についても、今回の紛争が大きな影響を及ぼすことが懸念されます。

[資料]
 USDA(アメリカ農務省)“Oilseeds: World Markets and Trade”(March 2022)
 https://apps.fas.usda.gov/PSDOnline/Circulars/2022/03/Oilseeds.pdf

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−福島ひまわり里親プロジェクト−
 https://www.sunflower-fukushima.com/

2011年3月11日に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は、福島県の産業や暮らしに大きな打撃を与えました。
 福島県産の農林水産物については、現在は野生の山菜・きのこや鳥獣、川魚など一部を除いて安全が確認されていますが、当時はいわゆる「風評被害」により、例えば福祉作業所でお菓子を詰めていた障がい者の方まで仕事を失ってしまうなど、深刻な状況となりました。
 そこで、全国の人々に“里親”になってもらって、復興のシンボル“ひまわり”を育て、採れた種を返送してもらうことで、福島県における雇用創出、絆づくり(交流イベント「ひまわり甲子園」の開催や絵本の作成など)、搾った油のバスの燃料としての利用、防災教育等につなげる「福島ひまわり里親プロジェクト」が開始されたのです。

これまでのプロジェクトへの参加者は55万人以上、学校は5,900校を超えるとのこと。大震災から11年を経て、プロジェクトは広く全国に浸透しています。

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−映画「ひまわり」(1970年)−
 http://himawari-2020.com/

(映画『ひまわり 50周年HDレストア版』公式サイトより http://himawari-2020.com/)

今回は久々に映画を紹介します。皆さんがよくご存じの名作「ひまわり」が、現在、全国で緊急上映されています。
 この映画は、イタリア、フランス、ソ連、アメリカの合作により、1970年に公開されました。地平まで続くひまわり畑の印象的なシーンは、ウクライナ南部のヘルソン地方で撮影されたそうです。

第二次世界大戦のロシア戦線に出征し消息不明となった夫(マルチェロ・マストロヤンニ)を、主人公(ソフィア・ローレン)は生きていると信じ、単身、ロシア・ウクライナの大地を探し歩き、広大なひまわり畑に行き当たります。その一角には墓碑。現地の女性は「ひまわりの下には多くの戦死者や捕虜が眠っている」と彼女に告げます。

この映画が描いているのは、夫婦や親子など人々を切り離す戦争の悲劇と残酷さです。
 その公開から50年余。3月15日(火)には、そのヘルソン地方をロシア軍が制圧したとのニュースが入ってきました。一刻も早く戦闘行為がやむことを祈ることしかできません。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 2022年3月前半。ウクライナ。[3/16]
 https://food-mileage.jp/2022/03/16/blog-367/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 『タネとヒト 生物文化多様性の視点から』出版記念執筆者トーク〜語ろう タネとヒトの関係〜
 日時:3月20日(日)13:30〜15:30
 講師:宇根豊さん、田村典江さん、西川芳昭さん
 場所:オンライン
 主催:たねと食とひと@フォーラム
 (詳細、問合せ等↓)
 https://nongmseed.jp/archives/5286

○ 企画展「北条氏展vol.1 伊豆から鎌倉へ─北条氏の軌跡をたどる─」
 日時:1月4日(火)〜3月26日(土)10:00〜16:00
 場所:鎌倉歴史文化交流館(鎌倉市鎌倉市扇ガ谷1)
 主催:鎌倉歴史文化交流館(鎌倉市教育委員会)
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/rekibun/20220104houjouvol1.html

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 戦火がやむまでお休み中です。
 バックナンバーは拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.239は4月1日(金)[和暦 弥生朔日]に配信予定、カレンダーでは年度が替わります。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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