去る2022年4月1日(金)[和暦 弥生朔日]、登録下さっている読者の皆様に以下のメルマガを配信させて頂きました。
なお、ウェブ掲載にはタイムラグがあるため終了してしまったイベント等もありますので、よろしかったら以下から登録(無料)して頂ければ幸いです。
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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◇フード・マイレージ資料室 通信 No.239
2022年4月1日(金)[和暦 弥生朔日]配信
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◆ F.M.豆知識 米と輸入小麦の価格の推移
◆ O.カレント 農業・農村の多面的機能
◆ ほんのさわり 足達太郎ほか『農学と戦争』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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年度は替わりましたが、未だウクライナでの戦火はやまず、私たちの生活にも様々な影響を及ぼしています。戦争というものを意識せざるを得ない日々が続きます。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さった皆様に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−米と輸入小麦の価格の推移−

総供給カロリーの13%を占める小麦の価格は、4月以降、大幅に値上げ改定されています。
小麦は約9割を輸入に依存していますが、輸入小麦については、政府が計画的に買い入れて製粉企業等に売り渡す仕組みとなっており(買入価格と売渡価格の差額は国内産小麦の生産振興等に充当)、その売渡価格は、直近6か月間の国際価格、海上運賃、為替レートの動向等を反映して半年ごとに改定されます。
2022年4月期の輸入小麦は5銘柄加重平均価格(税込み)で72,530円と、前期に比べ10,710円(17.3%)の引き上げとなりました(リンク先の図239の上のグラフ)。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/03/239_beibaku.pdf
今回の引き上げ改定の主な要因は、昨年夏の高温・乾燥による米国・カナダ産小麦の不作の影響であり、今後、さらにロシアのウクライナ侵攻の影響が出てくることが懸念されます。
一方、総供給カロリーの21%を占める米の相対取引価格(出荷業者と卸売業者との間での契約価格)は低下傾向で推移しており、近年、下落の度合いが大きくなっています(リンク先の図239の下のグラフ)。これは、長期的に継続する需要の減少を反映したもので、全国の米生産農家は苦境にあります。
それでも主食である米を作り続ける国内の生産者がいるからこそ、輸入小麦等が値上がりしても、日本の食料安全保障は相対的に確保されていると言えるのです。
[資料]
農林水産省プレスリリース「令和3年産米の相対取引価格・数量について(令和4年2月)」(2022年3月18日)
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/kikaku/220318.html
同「輸入小麦の政府売渡価格の改定について」(2022年3月9日)
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/boeki/220309.html
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
−農業・農村の多面的機能−

農業・農村は、食料の供給だけではない様々な重要な役割を果たしています。
例えば、水田には雨水を一時的に貯留することで洪水や土砂崩れを防ぐ機能があります。全国の水田に貯留できる水の量は約50億立米(東京ドームの約4千杯)とも言われています。
さらに、河川の流量安定と地下水の涵養、生物多様性の維持、農村景観の保全、伝統文化の継承、体験学習や教育の場の提供など、様々な役割を果たしているのです。
これらの機能は基本的に貨幣換算できるものではなく、お金で買うこともできないものですが、2001年の日本学術会議の答申によると、洪水防止機能が3兆5千億円、河川流況安定機能が1超5千億円、土砂崩壊防止機能が約5千円、保健休養・やすらぎ機能が2兆4千億円等と試算されています。
これら機能がもたらす恩恵は、都市住民を含めて広く国民全体に及んでいます。そして、これらの機能が維持・保全されているのは、言うまでもなく、先祖からの農地を守り、あるいは新規就農して、経済的にはペイしない山間部の棚田等を含めて耕し続けて来られた生産者の方々の営みによるものです。
食料の安全保障に危機感が高まっているなか、特に私のような都市部に暮らす非農業生産者は、改めて生産者の方々に対する畏敬の念を強くする必要があると思います。
[参考]
農林水産省HP「農業・農村の有する多面的機能」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/nougyo_kinou/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−足達太郎、小塩海平、藤原辰史『農学と戦争−知られざる満州報国農場』(2019.4、岩波書店)−
https://www.iwanami.co.jp/book/b450153.html

ロシアのウクライナへの武力侵攻により、食料安全保障の重要性に対する認識が高まっていますが、食料や農業は、ある意味、戦争と強い「親和性」があります。戦争遂行に当たって、食料の確保は不可欠の条件であるためです。
第二次世界大戦中の日本も、食料確保のための国策を強力に推進しました。
国内では少年たちを食糧増産隊として動員して全国に報国農場を設けると同時に、植民地であった満洲(中国東北部)には「満洲報国農場」という制度をつくり、府県や農業団体に政府公認の農場(むろん、本来の所有者の現地の人たち)を割り当て、入植・移民させたのです。
敗戦の年には70近い農場があり、約4600名(ほとんどは13〜20歳程度。うち4割は女性)が派遣されていました。そしてソ連の参戦により、満蒙開拓団の人たちと同様、多大の犠牲者を出したのです。本書が描いている東京農業大学の湖北報国農場(東安省)では、87名の実習生のうち53名が死亡または行方不明となったそうです。
本書が冷徹に描いているのは、命を支えるはずの食料や農業が、戦争遂行の口実とされたという歴史の事実です。
そして、その国策を推進した政府高官や大学当局、農学者たちは、戦後、戦争責任を認めるどころか、関係資料を破棄するなど説明責任さえ放棄した事実を明らかにし、指弾しています。
丸山眞男の「日本ファシズムの特色は、農本主義的特質が非常に優位を占めていること」という言葉が思い出されました。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 森 歩さんの「川湊の暮らし・港町の仕事」(第9回 食と農の市民談話会)[3/21]
https://food-mileage.jp/2022/03/21/blog-368/
○ Present Tree in くまもと山都2(1日目)[3/29]
https://food-mileage.jp/2022/03/29/blog-369/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
○ 反貧困ネットワーク全国集会2022「コロナ禍、3年目 生きさせろ」
日時:4月10日(日)19:00〜20:30
場所:文京区民センター(東京メトロ丸ノ内線 後楽園駅)
主催:反貧困ネットワーク
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1109105823254604/
○ 第40回 市民科学入門講座−自己免疫疾患とは何か
日時:4月11日(月)14:00〜18:50
場所:オンライン
主催:市民科学研究室
(詳細、問合せ等↓)
https://www.shiminkagaku.org/csijwebinar_introduction/
○ 脱成長ミーティング
日時:4月16日(土)19:00〜21:30
話題提供:高坂 勝さん、白川真澄さん
場所:オンライン
主催:脱成長ミーティング
(詳細、問合せ等↓)
http://umininaru.raindrop.jp/datsuseichou/tuo_cheng_zhangmitingu/tuo_cheng_zhangMTGtoha.html
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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
戦火がやむまでお休み中です。
バックナンバーは拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.240は4月15日(金)[和暦 弥生朔日]に配信予定です。
より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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