【ブログ】「脱成長」と食料安全保障

2022年も後半に入りました。一刻も早い停戦を祈るばかりです(このフレーズ、いつまで使わなければならないのでしょうか)。

気候は変動しつつも初夏に向かっており、気が付けば花水木が満開。
 郷里・徳島の友人(農家)が見事なニンジンを送って下さいました。有難うございます。天候不順と資材価格上昇に悩まされているそうです。

4月16日(土)の19時からは、脱成長ミーティングのオンライン公開講座に参加。
 久しぶりの開催は、お二人の発起人の方からの話題提供です。

まず、白川真澄さん(ピープルズ・プラン研究所)からは、「脱成長をめぐる最近の議論」と題したスライドに基づき、脱成長の議論が活発になっている状況について紹介がありました。
 さらに、コロナ禍の経験から脱成長のリアリティ(エッセンシャルワークの重要性の再認識、地方分散等)が導き出せるとし、経済成長なき時代にふさわしい「公正な分配」を追求することの必要性と強調されました。

続いて高坂 勝さんからは「ローカル化と脱成長」と題して話題提供。
 千葉・匝瑳(そうさ)市に移住されてから4年間の、ご自身の実践に基づくお話(稲作体験など都市住民の受け入れ、エネルギー自給、地域内でのなりわいの創造等)だけに、大きな説得力と迫力があります。

正直、参加する前には、戦火がおさまらない中で「脱成長」議論どころではないという気持ちがあったのですが、改めて勉強になりました。
 グローバリゼーションが国家間の経済的な相互依存関係を高めることで平和に貢献するといった希望的幻想(かつては「マクドナルドが出店している国同士は戦争しない」といった言説さえありました)が、無残かつ完全に打ち砕かれているのも事実です。

一方で、今回の武力侵攻によりクローズアップされているのがエネルギーや食料の安全保障(安定供給の確保)の問題。この日の講座でも話題となりました。
 私も指名頂いたので、食料について少し発言させて頂きました。私が言いたかったことを、以下、改めてまとめてみました。

去る4月8日にFAO(国連食糧農業機関)が公表した3月の世界の食料価格指数は159.3と、前月から17.9ポイント(12.6%)上昇し、2か月連続で最高値を更新。
 穀物や植物油価格の高騰は、アフリカ、中東等における社会・政情不安につながるのではないかと懸念されています。

一方、日本では、食料品の相次ぐ値上げがあっても大きな社会不安となっていないのは、主食である米が国内自給できているという安心感によるものと考えられます。

現に、約9割を輸入に依存している小麦(総供給カロリーに占める割合は13%)の輸入価格が大幅な値上げが続いている一方で、米(同21%)の相対取引価格は。最近も低下傾向で推移しているのです。

出典:メルマガ「フード・マイレージ資料室通信」No.239
 https://food-mileage.jp/2022/04/03/letter-239/

米価格の低下は、米に対する需要の低迷に起因するものです。
 長期的にみると、1960年代初頭には120kg近くあった一人当たり年間米消費量は、食生活の洋風化等に伴って大きく減少し、現在はピーク時の約4割の水準となっています。
 トータルの需要量も減少を続けており、特に最近は、人口減少もあって毎年約10万トンと減少幅がさらに拡大しているのです。

出典:農林水産省「米に関するマンスリーレポート」(2022.4)
 https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-6.pdf

消費者の購入先にも変化が見られます。
 購入先の約半分はスーパーですが、比較的価格の高い生協等の割合が低下しているのに対して、相対的に安価なドラッグストアやディスカウントストアのシェアが高まっているのです。
 つまり、米についても消費者の価格志向が高まっていることが伺えるのですが、これは、生産者に再生産可能な価格を保証するという観点からは好ましいことではありません。

出典:メルマガ「フード・マイレージ資料室通信」No.240
 https://food-mileage.jp/2022/04/18/letter-240/

「脱成長」は、これからの経済社会のグランドデザインを考えていく上で重要なキーワードであることは間違いありません。
 しかし一方で、目先の食料安全保障を考えた場合は、ある程度の所得の向上(せめて主食の米くらいは、生産者を支援する思いも込めて、少々高くても買うという経済的余裕)が必要であることもまた、自明のように思われます。