【メルマガ】F.M.Letter No.242

去る2022年5月15日(金)[和暦 卯月十五日]、登録下さっている読者の皆様に以下のメルマガを配信させて頂きました。
 なお、ウェブ掲載にはタイムラグがあるため終了してしまったイベント等もありますので、よろしかったら以下から登録(無料)して頂ければ幸いです。
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html
────────────────────
 ◇フード・マイレージ資料室 通信 No.242
 2022年5月15日(日)[和暦 卯月十五日]配信
────────────────────
◆ F.M.豆知識  沖縄の耕地面積の長期推移
◆ O.カレント  若年ママ応援シェルター「おにわ」
◆ ほんのさわり アキノ隊員『ぼくたち、ここにいるよ』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
────────────────────
 ウクライナにおける戦火が続くなか、日本では沖縄復帰50周年の日を迎えました。今号は沖縄の特集です。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録して下さっている皆様に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−沖縄の耕地面積の長期推移−

先の大戦は日本の農業生産にも甚大な影響を及ぼしました。農業従事者の多くが出征・戦病死し、復員できた方も直ちに農業生産を再開することはできず、国民の多くが「餓死」の危機に直面しました。
 リンク先の図242は、1925年以降の全国、北海道及び都府県、そして沖縄県の耕地面積の推移を表したものです(注)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/05/242_kotisuii.pdf

太平洋戦争が始まった1941年における全国の経営耕地面積は568万ha。これが終戦直後の47年には501万haへと一気に86万ha(14.6%)減少しました。なお、これは混乱期で把握し切れなかった農地もあったと考えられます。
 その後、1970年頃まではほぼ横ばいで推移していましたが、70年代に入って以降は経済が高度成長する中で減少傾向を強め、2020年では戦前から約半減(1941年比 55)しています。
 地域別にみると北海道のみは増加(同112)しており、都府県は減少幅が大きく(同45)、いずれの地域でも減少しています。

戦後、アメリカの統治下に置かれていた沖縄県において、戦後最初の農林業センサスが実施されたのは、本土復帰に2年先立つ1970年のことでした。この時点で耕地面積は1941年比77と、全国(88)、都府県(86)を下回っており、その後、全国と同様の減少傾向で推移しています。
 沖縄では多くの地域が戦場となり、激しい地上戦も行われました。住民も含めて多くの人命が失わるなか耕地も荒廃し、さらに戦後には多くの耕地等が軍用地として接収されました。
 沖縄県における耕地面積の減少の背景には、これらの事情があります。

(資料)
 農林水産省「農林業センサス累年統計‐農業編‐」
 https://www.maff.go.jp/j/tokei/census/afc/past/stats.html

 (注)耕地面積の動向をみる場合は作物統計の数値(実測値)を用いるのが一般的ですが、本稿では長期的な推移をみるため農林業センサスの数値(農家等が自ら記入するため過少となる傾向がある)を用いています。
 なお、耕地(農林統計における用語)と農地(農地法による法令用語)は、ほぼ同じものです。

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−若年ママ応援シェルター「おにわ」−

昨年(2021)10月1日、沖縄本島中部に若年ママの出産・子育てを応援するシェルター「おにわ」がオープンしました。
 DV等を避けるために一人で赤ちゃんを産んで育てることになった若いママ達(10代の妊娠8か月から赤ちゃんの生後100日までの方)に、出産の前後を過ごす場所を24時間体制で提供する取組みです。
 琉球大学の上間陽子さんと本村真さんが共同代表となり、琉球大学附属病院や助産師さん(寮母さん)がサポートする体制になっているとのこと。

『裸足で逃げる』『海をあげる』等でも知られる上間さんは、風俗業界で働き、暴力を受け、若年出産するなど、凄惨としか言えないような生き方をしている少女たちへのインタビューを続けるなか、調査・研究に留まらず、自ら社会の中に「避難できる場所」をつくる決心をされました。
 その時の思いを、上間さんは、「私の手にあまる。でもつくらないときっとたぶん後悔する。間に合わなかった子たちもいる。それでも動けばなにかは変わる。なにかが変われば、これから間に合うこともあるだろう」とエッセーに記されています。
 「私たちがつくるのは小さな場所だ。でもおにわで赤ちゃんが笑うなら、ママもきっと笑うだろう。ママが笑うなら、おにわは必ず渦になる」とも。

このシェルターは(公財)オリオンビール奨学財団の事業として開設されましたが、日々の運営は寄付で賄われているとのこと。多くの方に知ってもらい、関心を持っていただきたいと思います。

(参考)
 ブログ「お庭日記」
 https://oniwaok.blogspot.com/
 同(ご寄付のお願い)
 https://oniwaok.blogspot.com/2021/09/blog-post_71.html
 上間陽子さんエッセー「おにわはまわる」(webちくま)
 https://www.webchikuma.jp/category/oniwa

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−アキノ隊員(写真・文)『ぼくたち、ここにいるよ−高江の森の小さないのち』(2017.8、影書房)−
 http://www.kageshobo.com/main/books/bokutachikokoniiruyo.html

作者の宮城秋乃さんは、沖縄・うるま市の浜比嘉島出身のチョウ研究家(日本鱗翅学会・日本蝶類学会会員)。
 本書では、県北部・やんばる地方(2021年、世界自然遺産に登録)の森にくらす生きものたちの姿が、美しい写真と分かりやすく楽しい文章で紹介されています(子どもでも読みやすいように、ルビも振られています)。

日本最小クラスのチョウであるリュウキュウウラボシシジミの交尾、産卵、ふ化、羽化などの連続写真は、息をのむような繊細な美しさがあります。オキナワカブトムシ、オオシマゼミ、ナミエガエル、オキナワハイ(色鮮やかな毒蛇(怖い!))など、次々と珍しい生きもののたちが現れ、ページをめくるのが楽しみになります。

ところが本の終わり近く、突然、木々が切り倒された空間の写真が現れショックを受けました。米軍ヘリパッドの建設現場で、森の上を低空飛行するオスプレイの写姿もあります。
 作者は仲間とともに周辺の生物分布を調査したところ、希少なチョウやカエルの生息地が破壊されていることが判明したとのこと。また、返還された訓練跡地に、不発弾や化学物質が入ったドラム缶が廃棄物として放置されたままになっていることも発見します。
 反基地運動にも参加し、基地ゲート前に廃棄物を並べたことで在宅起訴までされているとのことで、裁判を支援する市民団体もできているそうです。アキノ隊員は「早くチョウチョの研究に戻りたい」と悲痛な声を上げておられます。

(参考)
 ブログ「アキノ隊員の鱗翅体験2」
 https://akinotaiin.blog.fc2.com

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 2022年 堰浚いボランティア 前日(猪苗代など)[5/9]
 https://food-mileage.jp/2022/05/09/blog-375/

○ 2022年 堰浚いボランティア、しあわせな豚(福島・喜多方市山都)[5/11]
 https://food-mileage.jp/2022/05/11/blog-376/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 沖縄復帰50周年記念式典
 日時:5月15日(日)14:00〜
 会場:沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市真志喜)
 主催:沖縄県
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.pref.okinawa.lg.jp/site/chijiko/hisho/okinawa50hukkisikiten.html

○ ネーネーズ【ライブハウス島唄】生中継
 日時:5月15日(土)19:00〜
 場所:ライブハウス島唄(沖縄・那覇市国際通り)から生配信
 (詳細、問合せ等↓)
 https://twitcasting.tv/c:nenez/shopcart/153880

○ 第1回 食と農の未来を考える〜青梅から〜
 日時:5月21日(土)10:30〜
 場所:ネッツたまぐー(東京・青梅市上町)
 登壇:鈴木宣弘教授、柳川貴嗣さん、石川敏之さん
 主催:青梅の農業を考える会
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/502662864979321

○ 「Present Tree in 笛吹芦川」植樹イベント
 日時:5月21日(土)13:10〜14:50
 場所:山梨・笛吹市
 主催:NPO環境リレーションズ研究所
 (詳細、問合せ等↓)
 https://presenttree.jp/blog/2022/04/26/9850/

────────────────────
*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 ウクライナの戦火がやむまでお休み中です。(早く再開したい!)
 過去のバックナンバーは拙ウェブサイトに写真入りで掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.243は5月30日(月)[和暦 皐月朔日]に配信予定です。心穏やかに配信できることを祈っています。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
────────────────────
◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
 (購読(無料)登録はこちらから)
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
 発行システム:『まぐまぐ!』
  https://www.mag2.com/
 バックナンバー
  https://food-mileage.jp/category/mm/
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  https://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
  https://food-mileage.jp/category/blog/