【ブログ】2022年 稲刈り(新潟・上越市大賀)

2022年10月1日(土)は新潟・上越市吉川区大賀へ。5月の田植え以来です。
 朝7時に東京・たかった馬場駅前ロータリーで待ち合わせ。2台の車に6名が分乗し出発(他に1名は現地集合)。

快晴。関越自動車道はやや混雑。
 上里SAで舞茸うどんの朝食、続いて谷川岳PAで小休憩し「六年水」でのどを潤し、現地に近い上越市大島区では「日本一うまい」ところてん。弘法大師由来の1本箸で頂きます。休日限定の塩むすびも。

国道253号を右折し、次第に深い山間部に入っていく狭い道路を登りつめたところに、吉川区大賀集落があります。戸数4戸という、外形的には典型的な「限界集落」です。

 いつも使わせて頂いている集会所(庵寺)に到着したのは13時過ぎ。
 目に染み込んでくるような青空が広がっています。気温も上昇。
 水田の多くでは稲刈りは終わっており、残っている稲は台風の大雨と強風で倒れてしまっています。

着替えて長靴をはき、集会所の裏の坂道を下っていきます。
 いつも体験させて頂いている棚田では、お世話になっているNさん(私たちは「師匠」と呼ばせて頂いています。)が、奥様、息子さんとともに待っていて下さいました。

ここの稲も倒伏していました。
 師匠の指導の下に思い思いに田んぼに入っていき、畔(あぜ)ぎわから手刈りしていきます。倒れた稲を引き起こしながら刈っていくのは初めての経験で、ちょっと大変です。
 3株を刈って束ね、その上に、もう3株を少し交差させるように置いていきます。

畔ぎわ以外は、手押し式のバインダー(稲刈り機)も併用。どんどんと刈っていきます(機械文明の力!)。
 10月に入ったというのに、ああ、暑い。

手刈りした稲は、6株のまとまり毎に藁を使って縛っていきます。
 師匠の奥様は、空中で稲束をぐるりと一回転させて効率よく縛っていかれるのですが、これが何度教わっても難しく、うまくできません。

6株を束ねた稲束を、さらに16束(4×4)をひとつの山に積み上げ、太いロープで縛っていきます。
 これを抱えて運ぶのですが、なかなか重く、バランスを取りながら持ち上げるのも一苦労。
 軽トラに乗せて、少し離れた場所に運んで、はさ(稲架)掛けします。

いつもはさ掛けする場所は、森の脇、南西に開けた土手の上。師匠が竹を伐り出して「はさ」をしつらえて下さっていました。
 軽トラで3往復して運んだ稲束からロープを外し、どんどんと掛けていきます。稲束を渡す人と掛ける人に分担し、二人一組で作業していきます。乾燥した稲束の芳香が鼻をくすぐります。

陽が傾くころに作業は終了。
 はさに掛けられた稲束が、夕日を反射して輝いていました。

今回もスカイトピア・遊ランドに宿泊。温泉で汗を流してから夕食。
 師匠と谷内さんご一家も参加して下さいました。
 5月の田植えの時は、コロナもあって現地の方との懇親はできなかったのですが、今回は久しぶりに近況を交換するなど楽しい時間を過ごすことができました。
 ちなみに上越市吉川区は、「杜氏の里」とも呼ばれる日本酒の名産地です(やや呑み過ぎました)。

翌日も快晴。
 朝湯を浴びてから周囲を散策。日本海が綺麗に望めます。東北電力・上越火力発電所の大きな建物も。
 振り返ると、ススキの群れの向こうに尾神岳の雄姿。パラグライダー競技の会場となっています(土・日と、ちょうど大会が行われていたようです)。

この日は、谷内さんご一家の稲刈りをお手伝いさせて頂きました。
 杜氏見習い中のご主人(幹典さん)、起業(もんぺ製作所)された奥様(美名子さん)ともに首都から移住された方で、こちらに来てから生まれた娘さんも8歳になりました。
 それぞれ仕事を持ちながらの稲作ですが、地域の高齢の方から田んぼを頼まれることも多いようです。
 移住者ということで色々と注目されており、ご夫妻はこの日も取材を受けながらの作業となりました。

別の田んぼで稲刈りとはさ掛けを行った後、集会所前の田んぼの稲刈りに取り掛かりました。
 昨日の棚田と異なり、ここの田んぼの一部はぬかるんでいて、なかなかの重労働ではありました。

帰りの時間も考え、14時過ぎに作業は切り上げ。畔ぎわの一列を刈り取ったくらいで終了です。畔ぎわ以外は機械で刈り取れるとのことですが、これだけ倒れていると絡まったりして簡単ではないと思われます。
 結局、中途半端で、果たしてお手伝いになったのか邪魔をしただけなのか。

途中、ご自宅でお昼をご馳走になり、さらに帰り際には、集会所の脇の畑から枝豆を抜いて持たせて下さいました。在来種の青大豆だそうです。
 他にも、前日からこの日にかけて、集会所には地元の方々が栗ご飯やミョウガを届けて下さっていました。

田んぼの周りには、おびただしい数のトンボ。ウラギンシジミやアカタテハなどのチョウ。昨夜は大きなガ(クスサン?)が窓に止まっていました。
 ガマズミ(?)の赤い実やシシウド(?)の白い花。ピンクのツリフネソウやミゾソバも。
 豊かな自然にも癒されました。

帰途は松之山温泉(十日町市)に立ち寄ったこともあり(薬湯で癒されました~)、うまく渋滞のピークは避けられたようです。22時過ぎに帰宅。
 さっそく頂いてきた枝豆を茹でました。独特の風味があって、美味です。

大賀の皆さま、お陰様で今回も豊かな時間を過ごすことができました。大変、有難うございました。

ところで、パンデミック、ウクライナ情勢により世界的に食料危機が叫ばれるなか、日本の食料自給率はカロリーベースで38%(2021年度。生産額ベースでは63%)にとどまっています。食料自給率(自給力、供給力)向上のポイントは米ですが、現実には、全国で多くの水田が耕作放棄され、荒廃しつつあります。
 しかも、これだけ食料品の値上げが続いている中、米の国内価格は低迷が続いています。

これらは、なべて米に対する需要が激減(1960年前後に比べて4割台)していることに起因しています。

需要を増加させるため、政府や農業団体では、米粉や飼料用米を含めて様々な需要拡大策が取られています。さらには輸出も推進されていますが、いずれも特効薬とはなっていません。

今回の写真は、拙ウェブサイトの2022年10-12月期のカバー写真に採用してあります。

中山間地など条件不利地において稲作を継続することは、経済効率性の面からは合理的とは言えません。しかし、農業が継続されることによって、地域の環境や景観、防災機能が保全され、人々は定住を続けることができ、地域の伝統的な作物や文化が継承されることになります。
 これらは市場で取引されないために「値段」はつけられない価値です。

そのような価値を認めるのか、その価値を維持するために(個人的な「買い支え」(これはおこがましい言い方ですが)や政策的な直接支払制度等によって)どの程度までのコストを負担するのかが、私たち一人ひとりの行動と判断にゆだねられています。