【ブログ】3年ぶりの「リアル・奥沢ブッククラブ」など

2022年12月8日(木)は休暇を頂き、西東京市の保谷こもれびホールへ。快晴です。

 10時からドキュメンタリ『医師 中村哲の仕事・働くということ』の上映会が開催されました。労働者協同組合法成立記念作品とのことで、主催はワーカーズコープ・センター事業団 東京三多摩山梨事業本部です。

先日、武蔵野市で開催された「川崎平右衛門フェスタ」の関連企画で、その場でチラシを頂いていたのです。
 席はかなり埋まっていますが、平日昼間のためか(私のような)高齢者が中心です。

冒頭の挨拶では蔦谷栄一さん(川崎平右衛門顕彰会、農的社会デザイン研究所)が登壇。来年のフェスタは西東京市での開催を予定しているそうです。

 47分の映画は、アフガニスタンで農業用水路建設に取り組む中村医師と現地の方々の姿を描きます。「人は人のために働いて支え合い、人のために死ぬ。結局はそれ以上でも、それ以下でもない」との中村医師の言葉が印象的です。

アフタートークには、西谷 修先生(哲学、東京外国語大 名誉教授)が登壇。
 「デジタル化、IT化が進むなかで、かつてないほど富が偏在し格差が拡大している。しかし、みんなが力を合わせて働いてこなければ人間の社会は続いてこなかった。中村医師の姿や言葉を、心に刻みたい」等のお話。
 少々、時間が短かったのが残念でした。

天気も良かったので、ひばりが丘団地と滝山団地を経由して帰宅することに。
 先日読んだ原 武史『レッドアローとスターハウス-もうひとつの戦後思想史』は、西武沿線の住民の一人として非常に興味深い内容でした。
 本書でも紹介されているひばりが丘団地のスターハウスは、現在は管理施設として利用されており、皇太子ご夫妻(当時)が視察時に立たれたベランダも保存されていました。
 滝山団地(東久留米市)では、一時、コミューンとも呼べる住民自治が実験していたそうです。

住宅地の間には、ところどころに武蔵野の平地林が保全され残されています。

12月10日(土)の夕方は、自宅近くにある図書喫茶・カンタカへ。「ピアノトリオでクリスマス-黒い森で会いましょう」と題する室内楽コンサートが開催されました。

 三人の演奏者の方は、同じ時期にドイツの「黒い森」のなかにある大学に留学されていたそうです。モーツァルト「三重奏曲 K.502」の和音展開の解説など、お話も楽しい演奏会でした。

12月11日(日)の午後は、東京・世田谷へ。
 初めて下りた東急大井町線の九品仏駅から歩き始めると、すぐ目の前が九品仏浄真寺の参道です。人波に続いて境内に入ってみると、何とも美しい紅葉。今年観た紅葉の中で最も見事かもしれません。
 一方、近くにある奥沢神社の境内は、一面、銀杏の金色で埋め尽くされていました。

15時前に奥沢公和会会館に到着。住民の方達の自治組織が運営されている施設だそうです。

ここの会議室で、オンラインでの開催が続いていた奥沢ブッククラブが、何と3年ぶりに対面(リアル)で開催されたのです。
 この日の参加者は、この会場を借りて下さった地元の方を含めて7名。途中、島根から電話で参加して下さった方も。。

前半は参加者一人ひとりから、おススメ本の紹介。
 大人になって再読した夏目漱石『草枕』が本当に面白かったという方は、樋田 毅『彼は早稲田で死んだ』も紹介して下さいました。
 飲茶『体験の哲学』は、人生で体験こそが最重要であるとの内容だそうで、いつも本書を持ち歩かれているそうです。
 佐藤美由紀『世界でもっとも貧しい大統領-ホセ・ムヒカの言葉』に収録されている前ウルグアイ大統領のスピーチ等に、感じ入ったという方。
 コロナ禍で時間はあったはずなのに気持ちが落ち着かず、あまり本が読めなかったという方。ようやく最近になって読めるようになって、手に取ったのが『アンネの日記』。絶望的な状況のなかでも失わなかった瑞々しい少女の感性に癒されたとのこと。
 映画化もされたオーエンズのベストセラー、『ザリガニの鳴くところ』等を紹介して下さった方。
 松嶋智左『女副署長』を紹介して下さった方は、この日の課題本に触発されて同じ文庫シリーズのゾラ『オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家』も読んだ(怖かった)そうです。

今回も様々な分野の、自分では手を取る機会もなかったかも知れない本を紹介して下さいました。まさに「読書会の幸福」です。早速、翌日には何冊か図書館に予約を入れました。
 ちなみに私からは、『振り返れば未来-山下惣一聞き書き』について、生前に頂いた様々なご縁などを含めて紹介させて頂きました。 

後半は、この日の課題本であるモーパッサン『脂肪の塊』について(この本も課題本にならなければ、私は一生、手に取らなかったかもしれません)。

身分制度や特権意識に対する痛烈な批判が印象に残ったとの感想。戦争や被占領地の悲惨さに現在のウクライナを連想したという方。二人の尼さんは偽善者であり許せないとする方。宗教についての議論の流れで『歎異抄』を課題本として取り上げてはどうかとの提案も。
 あのような「手のひら返し」が、果たして今の自分たちにできるのかといった話し合いも。

私からは、最後に「ラ・マルセイエーズ」が出できた意味がよく分からなかったと感想を述べたところ、自由や博愛などの理想を掲げているフランスという国家への痛烈な皮肉ではないかと解説して下さった方も。なるほど。

また、美味しそうな食事の描写が印象的だったという感想も多くの方が共有。戦時下であろうと人間の食欲は否定できないようです。

最後、恒例のUさんが朗読して下さった絵本は、由美村嬉々/文、松本春野/絵『バスが来ましたよ』。
 通勤に不便を感じていた視覚障害のある方は、ある日、バス停で小学生の女の子に声を掛けられました。やがてその子は卒業しますが、妹や他の生徒による「小さい手のリレー」が続いたという、現実にあった美談に基づいた絵本だそうです(舞台は和歌山市)。
 でも、大人たちは何をやっていたのかなと、私には素朴な疑問も。

終了後は、これも3年ぶりの懇親会。地元の方が美味しい中華料理屋さんを予約して下さっていました。

 オンラインの便利さは、もう手放すことはできないかも知れません。しかし、現実に顔を合わせて行うコミュニケーションの深さ、有難さを、改めて実感することができました(多くの方が、同じような感想を述べておられました)。
 色々と準備して下さった世話人の皆さま(ご家族の事情で参加が叶わなかった方もおられましたが)、有難うございました。
 なお、次回はオンラインで1月10日(火)に開催予定です(課題本は夏目漱石『草枕』)。

さて、以上のように、個人的には心穏やかに年の瀬を迎えつつありますが、私たちの社会は不穏、不安に満ちています。

12月12日(月)のウクライナ避難民についてのウェビナーは、むしろアフガニスタンやミャンマーからの難民の深刻さを浮き彫りにする内容でもありました。
 翌13日(火)の原子力市民委員会の連続オンライン企画は、気候変動対策としても経済性、雇用創出、リスク等の観点から原発は「最悪の選択」であるとの内容。「どんな形でも市民が参加していくことが必要」との主催者の方の言葉が心に残りました。

ちなみに、この日(12月13日)の東京の日の入り時間は、一年で最も早い16時28分。
 翌日から少しずつ、しかし確実に、日の入りは遅くなっていきます。