【ブログ】全国の市民に考えてほしいこと(廃炉・ALPS処理水・漁業復興)

職場至近の日比谷公園。
 紅(黄)葉はとうに盛りを過ぎていますが、今年は12月半ばになってもツワブキとともに目を楽しませてくれています。

2022年12月19日(月)の午後は、東京・経堂のCSまちデザインへ。
 「福島の『廃炉』とALPS処理水・漁業復興~全国の市民に考えてほしいこと~」と題する市民講座が開催されました。
 講師は福島大学食農学類の林 薫平先生です。

会場とオンラインで20名ほどが参加。
 福島の状況にも詳しいCSまちデザイン理事の行友 弥さん(農林中金総研 客員研究員)の司会により開会。
 資料を画面共有しつつ、林先生から以下のような説明がありました(文責・中田)。

「東電・福島第一原発は廃炉完了までの全期間、『特定原子力施設』として厳重かつ特殊な行政的・社会的な規制が必要とされている。この原点を忘れて『東電vs.地元漁協』の問題としてはならない」

「東電が汚染水漏出の情報を隠していたという問題が発覚し、国は2013年の暮れにトリチウム水タスクフォースを設置。さらに2016年からは小委員会でALPS処理水の取り扱いについて検討を行った。
 その過程で2018年8月に開催された公聴会において、福島県漁連の野口会長は『築城10年、落城1日』と発言。復興を模索しつつ試験操業に取り組んでいた漁業者の悲鳴を、しっかりと受け止めなければならない」

「2019年12月、東電は「廃炉に向けた中長期ロードマップ」を改訂し、『復興と廃炉の両立』を掲げた。復興のためには廃炉を迅速に進める必要があり、そのためにはタンクの水を処分する必要があるとの言い分。復興側と廃炉側の要請を対峙させ、真摯な議論が求められる」

「2020年4月以降は『福島の中で処分先を選ぶ』というルールが敷かれた。意見聴取会では漁連、JA、生協のいずれも反対の意見を表明。復興を盾に地元は翻弄されており、本当にこれで良いのか疑問」

「 “NIMBY” と “NOMBI” という言葉がある。
 “NIMBY” (not in my backyard)とは、『私の地元はお断り、廃棄物は地方に置けばいい』という主張。これは地方自治を毀損するもの。
 “NOMBI” (none of my business)とは、『私は関係ない、難しいことは政府に任せておく』という態度。これは国民主権の放棄に他ならない。
 今こそ“NIMBY”と“NOMBI”を超えて、タンクの水の性急な処分より先に、廃炉工程と放射性物質の国民的な管理に向けて、真面目で先を見据えた国民的議論が必要」

説明の後は、参加者(会場及びオンライン)との間で質疑応答。

IAEAの査察については、
 「これで結論が出たということではなく、透明性が低減され、議論のスタート台に立てたという位置づけではないかと考えている」

最近の新聞やテレビでの政府広報については、
 「一方的な広報は、かえって疑心暗鬼を招き、国民は黙認して下さいというメッセージと受け取られかねない。
 全国の消費者の皆さんには、ぜひ地元を訪ねて、漁協や生協、市民と交流することを通じて現状を知ってほしい。性急に(海洋放出という)簡単な結論を求めるのではなく、ぜひ、支援、連帯をお願いしたい」等と強く訴えられました。

最後に司会の行友さんから
 「現在の私たちの社会は、ともすれば真剣に議論することを避ける風潮がある。しかし、福島の廃炉と復興についても、恐れず臆せずに、周りの人と話題にすることが、私たちが身近にできることではないか」とのまとめがありました。

ここ数日来の大雪により、ご自宅の雪下ろしが大変という林先生。ご多忙のところ上京され、貴重な話を聴かせて下さり有難うございました。
 オンラインではなく、直接、対面でお話を伺う機会は貴重です。
 林先生がおっしゃるように、マスコミやネットの情報だけではなく、直接現地を訪ねることの大切さも、改めて感じることができました。

終了後は東京・大森へ。
 先日の勉強会でレンダリングが話題となり、勉強会のメンバーでモツ煮込みを食べようということに。残念ながら風邪をひいてしまった人もいて、少人数となりました。

 塾長の蔦谷栄一先生(農的社会デザイン研究所)から「命を大切にする資源リサイクル」3冊セットと、先生が山梨で取り組んでおられる「みんなの家・農土香(のどか)」のカレンダーを頂きました。3冊セットはわざわざ製作者から取り寄せて下さったそうです。有難うございます。

激動だった2022年も、慌ただしく終わりが近づいています。