◇フード・マイレージ資料室 通信 No.260◇
2023年2月5日(日)[和暦 睦月十五日]
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◆ F.M.豆知識 コロナ禍が外食産業に与えた打撃
◆ O.カレント 47都道府県レストラン 箕と環
◆ ほんのさわり 松尾康範『居酒屋おやじがタイで平和を考える』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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早くも立春。年々、時の流れが早くなっているように感じられます。
本メルマガは、時の流れを体感するため、本年も和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録して下さっている皆様に配信させて頂きます。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−コロナ禍が外食産業に与えた打撃−
2021年1月15日、新型コロナウイルスの感染が国内で初めて確認されて以降、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が累次にわたって発令され、営業時間の短縮等が要請された飲食店は、大きな打撃を受けました。
リンク先の折れ線グラフは、外食産業の売上金額の推移(2000年=100)を業態別に示したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/02/260_gaishoku.pdf
2000年代、なだらかに増加していた売上金額は、新型コロナウィルスが確認された2020年から21年にかけて激減しました。
22年は、3月に営業制限が解除され、価格改定もあったことから前年比113%とやや持ち直しましたが、コロナ禍前の19年の水準には戻っていません(19年比94%)。
この動きには業態間の差が大きく、酒類の提供制限を直接受けたパブレストラン/居酒屋は、コロナ前に比べると半減していることが分かります。
棒グラフは店舗数の推移を示したものです。
パブレストラン/居酒屋は、実は2010年代半ばからなだらかに減少傾向で推移していたのですが、コロナ禍により、店舗数も大きく減少したのです。
残念ながら、とことん生産者や産地にこだわった美味しい料理を提供して下さり、私も何度かお邪魔した飲食店の一軒も、昨年末に閉店となってしまいました。
データの出典:
(一社)日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 令和4年(2022年)年間結果報告」(2023年1月25日公表)から作成。
http://www.jfnet.or.jp/files/nenkandata-2022.pdf
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
−47都道府県レストラン 箕と環
https://minotowa.therestaurant.jp/
東京・神田にある「箕と環」(みのとわ)は、食を通じて、日本各地の生産者や事業者、あるいは地域の活性化に取り組んでいる人を楽しく応援することを目的とした飲食店です。
同様に「東京から地域おこし」をコンセプトとした「なみへい」の後継店として、2019年に立ち上げられました。
ちなみに店名の「箕」(農具)は自然や食物に対する敬いや感謝の気持ちを、「環」は自然の循環や人との縁を表しているそうです。
営業は月〜金曜日。
ランチでは、月替わりで地域の食材を使った郷土料理などの定食がいただけます。2月は、ぼたん鍋と鮎と卵のおまかせ一品(島根・高津川)、石見ポークの味噌漬け焼きと道の駅直送野菜のせいろむし(島根・邑南町)、桜姫鶏の唐揚げと道の駅直送野菜のせいろむし(宮崎・都農町)、直送野菜やエビ等を使ったちゃんぽん(佐賀・鹿島市)の4種類。
また、夜は完全予約制で、地域色豊かなコース料理等が楽しめます。
昨年、3人目の子どもに恵まれた店主の川野元基さんは、「地元や地域を応援している人の力になりたい」「自分たちも日本の食を楽しみたい」との思いで、営業を続けておられます。
なお、このお店も御多分に洩れず、コロナ禍の影響は大きいようです。
日本の食や生産者を応援するお店を、私たちも応援していきたいと思います。
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−松尾康範『居酒屋おやじがタイで平和を考える』(2018年7月、コモンズ)
http://www.commonsonline.co.jp/books2018/2018/07/28/%e5%b1%85%e9%85%92%e5%b1%8b%e3%81%8a%e3%82%84%e3%81%98%e3%81%8c%e3%82%bf%e3%82%a4%e3%81%a7%e5%b9%b3%e5%92%8c%e3%82%92%e8%80%83%e3%81%88%e3%82%8b/
昨年12月18日(日)に東京で開催された「山下惣一さんを偲ぶ会」の呼びかけ人のお一人で、懇親会の進行を軽妙に務められていたのが松尾康範さんでした。私はこの時に初めてお目にかかり、会場で本書を求めさせて頂きました。
1969年生まれの著者は、学生時代から(特非)日本国際ボランティアセンター(JVC)の活動に関わり、94年にはJVCボランティアとして1年間東北タイに滞在。その後、JVCのタイ現地代表、故・山下さんが共同代表を務められていたアジア農民交流センター(AFEC)の事務局長等として国際協力に尽力し、現在は神奈川・横須賀市久里浜で居酒屋「百年の杜」を営んでおられます。
著者は2017年11月、AFECのメンバーとともに改めてタイを訪ねました。「ちょっと真面目に平和って何?」ということを考えながらの旅だったそうです。
そこでタイの農民から、「魚がたくさん獲れた時には周りの人におすそ分けすればいい。そうすれば、獲れなかった時には逆にまわりの人たちが分けてくれる」「日本人から教えてもらったSHINDOFIJIという言葉に平和は凝縮されているよ。人や水、土のなかの微生物たちの均衡がとれた身土不二の世界を取り戻すことが大切」等の言葉を聞きます。
著者は気づきます。
資源の奪い合いから戦争が起こるのであれば、資源を分かち合うことで人と人との関係は深くなるのではないか。
地産地消は、単に健康や地域経済にとって有益ということだけではなく、海外の生産者や資源に迷惑をかけないことにつながる。安心できる食べ物を選ぶという自分本位な行為が、引いては平和構築にもつながるのではないか。
かつて著者がタイで取り組んだ国際交流活動(地場の市場づくり)と、現在営まれている居酒屋は、人と人、生産者と消費者を結び、豊かな食を守っていくという点で共通していたのです。
「僕たちは、美味しいお酒と食べ物を選ぶことから始めよう!」と、著者は訴えます。
久里浜にも、志の高い、素敵な飲食店があることを知りました。一度、訪ねてみたいと思っています。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 311子ども甲状腺がん裁判 第4回口頭弁論[1/28]
https://food-mileage.jp/2023/01/28/blog-416/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
○ 奥沢ブッククラブ第87回−倉田百三『出家とその弟子』
日時:2月13日(月)19:00〜21:00
場所:オンライン
主催:奥沢ブッククラブ
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/489964906603357/
○ 『きみの人生はきみのもの』出版記念トーク
日時:2月16日(木)19:00〜20:30
場所:会場(毎日ホール、東京・千代田区一ツ橋)及びオンライン
対談:荻上チキ、谷本真由美
主催:毎日メディアカフェ
(詳細、問合せ等↓)
https://www.mainichimediacafe.com/event-details/kiminojinseiwakiminomono-shuppankinen
https://www.mainichimediacafe.com/event-details/onrainyo-kiminojinseiwakiminomono-shuppankinen
○ 第12回「小農学会」オンライン定期セミナー
山下惣一『振り返れば未来』の深掘り(その2)
日時:2月17日(金)19:30〜21:00
場所:オンライン
講師:徳野貞雄さん(トクノスクール・農村研究所)
主催:小農学会
(会員及び会員の友人限定です。ご関心のある方は中田まで連絡(本メールに返信)下さい。)
(小農学会HP↓)
https://shounou-gakkai.com
○ 麦踏み体験(湘南小麦・畑ツアー2023年)
日時:2月26日(日)11:30〜15:30
場所:伊勢原市大田公民館(神奈川・伊勢原市下谷)
主催:麦踏み塾
(詳細、問合せ等↓)
http://www.mugifumi.com/
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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
ロシアのウクライナ武力侵攻から、間もなくほぼ1年。コツコツも1年間お休みが続いています。
過去のバックナンバーは拙ウェブサイトに掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.261は2月20日(月)[和暦 如月朔日]に配信予定です。
より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』(今回から2023年版)を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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