(前回から続く。)
2023年4月9日(日)は6時過ぎに起床。
温泉に行こうと談話室の前を通ると、何とそこには二人の大学院生と鈴木理事長の姿。大学院生達は、ほとんど寝ずにプロジェクト案を練っていたそうです。
外に出ると気持ちのいい青空。
冷え込んだようで、草花には霜が降りています(昨夜、お茶農家の下田美鈴さんが心配されていたのを思い出しました。)。
7時半からゆっくり、たっぷりと朝食(ご馳走様でした)。
8時半、この日は2台のバスに分乗して、いよいよ植樹の会場に向かいます。
約1時間で荒谷地区にある会場に到着。入り口の看板も、昨年よりバージョンアップしているような。
風が気持ちのいい山道を20分ほど歩き、昨年の植栽地を右側に見下ろしながらさらに進んだところが、今年の植栽地です。
10時から開会式。
私たちの方が斜面の上にいるので、見下ろすような形になってしまいました。
鈴木敦子理事長からは、山都町の方々への感謝の言葉とともに、
「今年は45名が参加。半数はリピーターで半数は初めての方。プレゼントツリーは10年の協定により、地元の皆様と力を合わせて森を支えていく。林業だけではなく、地域を丸ごと元気にして行ければと思っている。参加者の皆さんは、山都町の良さを実感しつつ、木だけではなく、心も育てて頂きたい。山都町が第二、第三の故郷になるよう、これから何度も通ってもらいたい」等の開会あいさつ。
昨年に続いて梅田町長も参加され、
「山都町はSDGs未来都市宣言をしており、プレゼントツリーはこの方向に一番沿った活動。ぜひ今後も多くの方に来町頂き、交流を続けていきたい」等と歓迎の挨拶を頂きました。
町で林業、観光を担当する職員の方。
この森林の地権者は、まだお若い方です。
「永く父親が管理していたが、高齢になり、数年前に皆伐して、この跡地を託された。どうしようかと考えていた時にプレゼントツリーのことを聞き、皆さんの力を借りつつ植林することを決めた」等の話をして下さいました。笑顔を浮かべるご両親の姿もありました。
プレゼントツリーという取組みがなければ、この林地も荒廃してしまったかもしれません。
保育管理を担当して下さる緑川森林組合の方など、地元の方も多く参加して下さっています。
具体的な植樹方法等を指導して下さったのは、昨年に続き(昨日の見学でもお世話になった)西野文貴先生(林学博士、東京農業大学特別研究員)。
ちなみにご実家は、大分で苗木生産等を営んでおられます。
「日本の自然は豊かで、本来であれば放置していても森に戻るのだが、近年は鹿の食害が深刻化しており、植樹活動がより重要になってきている。鎮守の森を参考に作成した『森のレシピ』に沿って、今日は30種類以上の広葉樹の苗を植えていく。単に樹を植えるだけではなく、心にも残る豊かな森を皆さんと作っていきたい」等のお話に続き、森林組合の方とともに植樹を実演・説明して下さいました。
昨年と異なりクワを使って開けた穴に、苗を入れ、しっかりと周りを踏み固めていきます。
参加者は思い思いに斜面に散らばり、クワと苗を受け取って植樹を始めます。
植える場所は、あらかじめ地元の方が竹で目印をつけてくれています。
青空で、気温も上がってきました(昨夜の寒さが嘘のようです)。谷を渡ってくる風が心地よく感じられます。
それにしても、目をあげると見事な景観。山は若葉で覆われています。足元に目を転じると様々な草花。
スタッフの方から声が掛けられ、気が付くと11時半。大自然の中での1時間半の作業は、あっという間でした。
予定していた本数は、ほぼ植え終えたようです(見落としている目印が残っているかも知れませんが)。
閉会式。今年も地元の皆様には、大変、お世話になりました。
通潤橋へ。江戸時代後期に惣庄屋・布田保之助が私財を投じて建設した農業用水路のための石橋です。ここで各自、自由に放水等の見学。
まずは、大切な水分を個人的に補給(南阿蘇の地ビール、美味!)。
橋は昨年渡ったので、この日は左手にある岡の上へ。
頂上は平坦になっており、「岩尾城 二の丸跡」の標柱が立っていました(同室だった詳しい方に聞いていた通りでした)。15世紀に阿蘇氏が築き、九州の戦国時代の混乱の中、甲斐氏、小西氏、加藤氏と次々と支配者は変わったそうです。
放水する通潤橋を見下ろすことができました。
通潤橋には何度も来ていますが、初めて見る見事な景観でした。
橋の近くまで降りてみると、多くの観光客が気持ち良さそうに水しぶきを浴びています。
通潤酒造に移動。
築200年の「寛政蔵」は、昨年は外からの見学だけだったので中に入るのは初めてです。
12代目蔵元の山下泰雄さんが出迎えてくださいました。
寛政蔵も2016年の熊本地震で大きな被害を受け、リノベーションして2019年春に「おもてなしの蔵」として再開したとのこと。
ここで昼食。地元の名店のお弁当。通潤酒造さんの日本酒2種類を飲み比べ(美味!)。
明るい室内。軒下には庭にある池の波影が反射して映っています。昔のままの重厚な梁も見事です。
地元の方との交流会。
藤川里奈さんは、Uターンして独自ブランド(ARBOL)を立ち上げ、アイスクリーム等の開発・販売をされている方。
豊かな自然が育んだ果物や野菜を使ったアイスサンド(乳製品、白砂糖不使用)はこの日の会場でも販売されており、好評でした。
下田円美(まろみ)さんは、地元のオーガニック農産物の力を広げようと株式会社 円(まろ)を立ち上げ、学校での食育活動にも取り組んでおられる方。
下田美鈴さんのお嬢さんで、昨年は味噌作りを指導して下さいました。
「食に厳しい母のもとで育ち、今までほとんど病気をしたことがない。山都町の食料自給率は300%以上。近くでとれたオーガニック食材だと輸送時のコストや環境負荷もかからない。何より新鮮でおいしい地元産、旬の食材を大切にしていきたい」等と、具体的なデータも交えながら話して下さいました。
自分が話す間は外に出ているようにと娘に言われたという美鈴さんも、出入り口近くで、お嬢さんのプレゼンに聞き入っておられたようです。
最後は、山都でしかの皆さん。
主に説明して下さったのは、神奈川県出身の鳥越靖基さん。東日本大震災をきっかけに農業に向き合いたいと思い、色々とネット等で調べたところ、山都町は日本一有機農業が盛んな地であることを知り、訪ねてみると多くの先輩達もいたことから移住を決意されたとのこと。
「その後、仲間とともに『山都でしか』できないワクワクを生み出していきたいと株式会社を設立。クラフトビールの開発、「畑 de サウナ」など様々なイベントの実施など、自身たちが楽しみながら山都町の魅力を多くの人に伝える活動をしている。
昨年は、有機農業に特化した「有機の学校 ORGANIC SMILE」も開校。全国から新規就農希望者等を受け入れている」
「何が一番やりたいか、多くの人と共感しながら未来を作っていきたい」と力強く語られました。
販売会も開催して下さいました。
下田茶園の干しシイタケ、まろみさんの梅干し、ARBOLのクッキー等を求めさせて頂きました。
力いっぱい手を振って下さる地元の方々に見送られ、15時過ぎにバスは出発。
1時間ほどで阿蘇くまもと空港に着。今年は最後まで天候にも恵まれました。新ターミナルは、検査場を通過した先にお土産屋さんや飲食店が並んでいます。ここでは、昨年度に農林水産祭・天皇杯を受賞されたPASTRALの焼き菓子を購入。
羽田行きJAL634便は出発も10分ほど遅れ、到着したのは定刻より30分ほど遅い1930頃。
混雑した電車で帰宅の途へ。一気に現実が戻ってきたような。それとも、本当の真実は山都の方にあるのかも。
充実した、心に残る2日間でした。昨年とは違うプログラムで楽しませて頂きました。
地元・山都町の皆様、主催者・スタッフの皆様、そして一緒に参加した皆さん。本当に有難うございました。
せっかくのご縁を大切に、また、来年も機会があればお目に掛かりたいと思います。