【ブログ】オーガニックコットンの種まきに、福島に行こう!

2023年のゴールデンウィークの初日・4月29日(土)は、7時15分に東京駅丸ビル前へ。
 NPO エコツーリズム・ネットワーク・ジャパン(旅行運営はリボーン)が主催するふくしまオーガニックコットン種まきツアーの当日です。
 オーガニックコットン関係のツアーはコロナ禍以前は何度も参加していたのですが、本当に久しぶりです。

参加者の一人・Hさんがボランティアで旗を掲げ、バス(運行は東京小田バス)に案内して下さいました。バスの側面には「てんぷら油 BDFで走行中」とあります。 

7時30分、バスは福島・浜通りに向けて出発。参加者は30名ほど。前回(昨年10月)の収穫の際は15名ほどだったそうで、コロナ禍が一段落して人数制限も緩和されたそうです。
 主催者の壹岐健一郎さんから行程等の説明。前回の参加者の感想も紹介して下さり、オーガニックコットンのテレビ番組の映像なども。

予想して(恐れて)いたとおり、東京を出る前から渋滞に巻き込まれました。前途に不安がよぎります。

あぐり~ん東京(ワーカーズコープ東京バイオマス地域福祉事業所)の黒田志保所長から、てんぷら油を燃料に再利用する取組みについて説明して下さいました。詳しい資料も配って下さっています。
 回収した廃食油を精製すると、9割はバイオディ―ゼル燃料、1割はグリセリンができ、再利用できるそうです。

思いのほか流れ始めました。途中、常磐道の友部SAと湯ノ岳で休憩。藤の花が見事です。
 この間に参加者は紙にそれぞれ自己紹介を書き、壱岐さんが読み上げて下さいました。長野や群馬からの参加者も。旧知の方も何人かおられます。ツアーに協力しているオイシックス・ラ・大地の方など、若い人が多いことが印象的でした。

私が書いた5月25日(木)のパレスチナ関係のイベントについても紹介して頂きました。
 持参していたチラシも多くの方が持ち帰って下さり、翌日、早速申し込んで下さった方もおられました。

大和田順子先生(同志社大学大学院ソーシャル・イノベーションコース教授)からは、震災直後、福島オーガニックコットンプロジェクトの立ち上げから関わってこられた経緯、この日訪ねる「天空の里山」の概要等について紹介して下さいました。

11時過ぎ、最初の目的地であるいわき市平窪のコットン畑に到着。予想以上に順調でした。
 出迎えて下さったのは、途中から自家用車で先導して下さっていた吉田恵美子さん((一社)ふくしまオーガニックコットンプロジェクト代表理事、NPO ザ・ピープル理事長)です。
 ツアーではなく個人的に2021年にお会いして以来の再会です。

 「12年が過ぎて大昔のことのようだが、東日本大震災と原発事故をきっかけにオーガニックコットンの栽培を始めた。被災して農業をあきらめようとしていた人たちに、何とか少しでも前に進んで頂きたいという思いだった」
 「この畑は以前は夏井川の河川敷にあったが、多くの犠牲者を出した2019年の台風19号で被災し、住宅地の間にあるこの地に移転してきた」等の挨拶を頂きました(以下も含め文責は中田にあります)。

待機して下さっていたコットンチームの4名の方から指導を受けながら、早速、種まき作業を開始。
 すでにマルチは張られ穴を開けて準備して下さっています。

 流れ作業で、まず腐葉土をひとつかみずつ入れ、スコップで混ぜ合わせ、水をまいて均し、コットンの種を4粒ずつ撒いていきます。種は横向きにして、お互いに重ならないよう、ビニールの縁にもかからないように気を付けます。
 その上から、樹木肥を土を半分ずつ混ぜて被せていきます(腐葉土では強すぎるそうです)。コットン栽培を始めてから10年ほど、栽培方法も色々と進化しているようです。

バスに戻って10分ほど走り、山間いに入ったところで下車。
 さらに徒歩で緑豊かな山道を10分ほど登り、12時20分過ぎに広々とした平坦地に出ました。
 この日のメイン目的地である天空の里山(いわき市四ツ倉町上柳生)です。

青空から陽光が降り注ぎます。やや強い風も、心地よく感じられます。
 交流センター・天空の家にはバイオトイレや風呂も併設されており、電気は太陽光パネルで賄っているとのこと。

まずは昼食。地元の名物らしいソースかつ丼と、吉田さん手作りの地元産野菜たっぷりのお味噌汁です。
 広場にテーブルと椅子を設えて下さっています。思い思いに座り、青空の下での昼食です。

食事を頂きながら、天空の里山・代表の福島 裕(ゆたか)さんのお話を伺いました。
 「妻(故人)の実家であったこの地に移住して40年ほど。74歳になったが、この地域の農業者の中では一番若い。現在、集落の方々から約1万haの農地を預かっているが、まだ多くの耕作放棄地がある」
 「自分に託された土地だけてはなく、次の世代の子どもたちにどう残していくかを考えている。原発事故で痛めつけられたこの地の環境を取り戻していきたい。ぜひ、多くの人にご縁を頂き、手伝って頂きながら活動を続けていきたい」

 「そのためには、まず自分ができることから。ここで生きている私ができることは、幸せに安心して暮らしていける環境を子どもたちに残していくこと。ここではかつかつ、せかせか生きる必要はない。保育所も作りたい」

続いて吉田さんからは、
 「1990年頃から古着リサイクルに取り組んできたが、震災と原発事故をきっかけにオーガニックコットンにも取り組み始めた。古着リサイクル同様、オーガニック栽培が環境に良いことを数字でも証明していきたい。
 私は一度会った人は仲間だと、勝手に思っている。ぜひ皆さんのアイデアを聞かせて下さい。それが次の扉を開くための大きな力になる」等の言葉。

食事後、「天空の家」ではオーガニックコットン製品の販売も行われました。
 なんと布団まで開発されていました(現在は非売品)。私も(何点目かの)手ぬぐいを求めさせて頂きました。手触り、風合いは独特です。

 「編みぐるみ」の熊の人形は、この日の参加者のお一人が東京でのイベントやワークショップで作成されているものだそうです。

そして、天空の里山での種まき。
 コットンチームの皆さんが、ここでも指導して下さいました。
 午前中の畑よりかなり広い面積でしたが、参加者の皆さん慣れたのか、1時間弱で終了。
 見渡すと360度、素晴らしいロケーション。気持ちのいい風が吹き渡ります。東京の風とは違うねと、多くの方が話しておられました。

広場に戻り、参加者一人ひとりから感想等のシェア。
 「現地に来て土を触って、初めて理解できることがあった」「せっかく植えた種がどのように生長していくのか気になる。草取りや収穫にもぜひ参加したい」等の感想。
 「自分でもベランダで作ってみたいと思い、種を分けて頂いた」という方も。
 (私も頂き、帰京後すぐに自宅近くの市民農園にまいてみました。数年ぶりです。)

アメリカ人の女性の方の、
 「穴に種をまく時、土の暖かさが手に伝わってきた。これは地球の暖かさ。母の暖かさのようにも感じた」との言葉が印象的でした。

15時過ぎに天空の里山を出発。
 バスに戻り、吉田さん達に見送って頂き(今回も見えなくなるまで手を振って下さいました。)、帰途へ。

いったん、いわき湯本ICで降りて柏屋湯本店に立ち寄り。郡山に本店がある老舗の菓子店です。名物の薄皮饅頭を試食させて頂きました。
 玄関脇には「願掛け萬寿石」という丸い巨石が鎮座。縁結びや長寿などの願い事を聞き届けて下さるそうです。

16時20分に出発。事故渋滞が激しいとの情報でしたが幸運にも順調で、守屋SAでの休憩を経て19時30分頃に東京駅前に到着、解散です。

本当に久しぶりのオーガニックコットンツアー。
 何より、現地を伺ことの楽しさ・嬉しさを改めて痛感しました。陽光の下、心地よい風に吹かれ、土の暖かさを体感する。そして何より、現地の方々の暖かいおもてなし。
 吉田さんから「仲間と思っている」と言って下さったことは大きな喜びでした。

しかし、その一方で、吉田さんの話にもありましたが、東日本大震災の津波や原発事故によってまだまだもがき苦しんでいる方々がおられます。今も県外に3万人近くの方々が避難したままで、帰還困難区域も残っており、さらには近く処理水の海洋放出が始まり、子どもの甲状腺がん関連など多くの訴訟も係争中です。

暖かい気持ちに浸りながらも、忘れてはならないことがあるということを肝に銘じることができたツアーでした。

福島裕さん、吉田恵美子さん、コットンチームの皆様。それに主催者の壱岐健一郎さん。楽しくて有意義なツアーを有難うございました。ぜひまた参加させて頂きます。
 また、大和田順子先生を始め参加者の皆様、またご一緒できることを楽しみにしています。

追伸:
 このブログ執筆中の5月1日(月)夕刻、小さな頃から可愛がってくれた郷里・徳島から叔母の訃報が届きました。心からの冥福を祈ることしかできません。