【ブログ】パレスチナの今-写真家・高橋美香さんの思い-

2023年5月25日(木)は、15時過ぎから2時間の休暇を取得。
 まずは、JR御茶ノ水駅前で開催されている御茶ノ水サンクレールマルシェに立ち寄り。いつもお世話になっている方のブースで、青森・八戸のハーブクッキー、長野・佐久の米粉パン、兵庫・JF但馬のホタルイカ、タイの石鹸等を求めさせて頂きました。

17時前に東京・神田へ。気が付くと、もうアジサイが咲いています。

 この日、19時から「47都道府県レストラン 箕の環-MINO TO WA-」で予定していたのは、「パレスチナの今-写真家・高橋美香さんの思い」と題するイベント(案内チラシはこちら)。個人で主催している「食と農の市民談話会 」Season3 の第2回です。

お二人のスタッフとともに仕込み中のオーナー・川野元基さんと相談しながら、会場を設営。17時過ぎにはこの日の講師の高橋美香さんが到着、機器を接続し動作を確認。
 配席を決めて、ネームカードと資料などを配布しました。

 パレスチナ・オリーブ代表の皆川万葉さんからは、パンフレット、レシピとともに、ザアタル(ハーブミックス)の瓶を一人1本ずつ提供頂きました。
 皆川さんは、生産者を継続的に訪問・交流しながら、製品の背景や生産者の暮らしを伝えるなど、顔の見える関係で販売することを大事にしておられる方。美香さんとの共著『パレスチナのちいさないとなみ』(2019、かもがわ出版)もあります。

会場の一隅には、販売用の美香さんのご著書、トルコ出身の日本在住クルド人(難民認定申請中)のお母さん手作りの工芸品・オヤも配置しました。

18時半に受付をオープンすると、早速、美香さんのご友人二人の姿。開会の19時近くになって続々と参加者の方々が到着。お一人からは体調不良とのことで残念ながらキャンセルの連絡。
 好みのドリンクを手に席に着いてもらいました(2杯目からはキャッシュオン)。19時過ぎ、遅れている一人を除いて集まったので開会することに。

 私(司会)からは、参加へのお礼、自己紹介(前回と異なりこの日は初対面の方も多数)に続き、
 「私自身、何度か高橋美香さんのお話をお聞きしたが、そのたびに無力感にさいなまれた。パレスチナが厳しい状況にあることを知っても、何もできない。せめて、美香さんの話を一人でも多くの方に聞いて頂きたいと思い、今日のイベントを企画した」との趣旨を説明させて頂きました。

早速、美香さんにマイクをお渡ししました。
 現地でご自身が撮影された写真を映写しながらのトークです。最新著の『パレスチナに生きるふたり ママとマハ』(2023年1月、かもがわ出版)に沿った内容を中心に、最新の情勢が加えられています(文責は全て中田にあります)。

バスマ(ママ)とマハは、美香さんが居候として共に生活を送ったパレスチナの女性たち。彼女たち自身や家族の様子が、写真とともに、どちらかと言えば淡々とした口調で紹介されていきます。

 イスラエルの入植・分離壁の造成への反対運動のなかで、頭を撃たれて重傷を負った息子。殺害された親戚の人たちも。子ヤギを取り上げて嬉しそうな表情を見せていたお父さんは、土地と生きがいを奪われ、健康を損なってしまいます。家族を支えるためにオリーブ農場等で働くお母さんの姿。
 たび重なる軍事侵攻に苦しめられている難民キャンプでの暮らしの様子。息子たちの親友の何人かも殺害されたそうです。 

さらに最近、コロナ禍で現地を訪ねることができない中、現地からのニュース映像の犠牲者の中に、親しい知人の顔を見つけた時の衝撃なども。

パレスチナの家庭に「居候」して撮影を続けて来られた美香さんのお話は、国際政治の評論家や戦場カメラマンによる解説にあるような、上から俯瞰するような内容ではありません。
 実際に美香さんが親しく交流された、一人ひとりの個人の名前が次々に出てきます。彼女・彼らの身の上に起こっている現実を、美香さんはご自分の言葉で伝えて下さっているのです。

複雑で語りつくせない内容を、美香さんは予定の70分でまとめてくださいました。
 参加者からは、早速、何人かから熱心な質問。それぞれの方の心に、美香さんの言葉は深く響いたようです。

後半は、食事を頂きながらの懇談。
 パレスチナ料理を頂きながら美香さんの話を聞きたい、との私からの無茶なリクエストに、元基さんは完璧に答えて下さいました。美香さんに提供してもらったレシピを見て、実際に店舗で試食もされたそうです。さらにはパレスチナのことを知っておきたいと、事前に勉強もされたそうです。

説明の入った献立表も各テーブルに配って下さいました。
 トマトやキュウリをオリーブオイルで和えたサラダ、フムス(ひよこ豆のペースト、ピタパンとともに頂きます)、ファラフェル(辛めのトマトソースで頂くコロッケ)、鶏肉のケバブ風です。
 パレスチナ料理を食べ慣れている美香さんも、「明日も食べたい」と絶賛でした。

懇談の途中で、参加者の一人ひとりにマイクを回し、自己紹介や感想等のシェア。
 何度もパレスチナを訪ねられた方、パレスチナ支援に関わっておられる方、中東移住を目指してヘブライ語やアラビア語の勉強をされている方など。

「宗教的な対立の少ない日本で暮らしていることの有難さを感じた」との感想には、美香さんは「宗教が悪いわけではなく、政治が宗教の名を借りて煽っているだけ」と回答。
 別の参加者の方からは、「聖地が集中するエルサレムは紛争の地のようにも思われているが、共存のシンボルと捉えることもできるのでは」との意見も。

 図書館に置いて子ども達にみてもらいたいと、美香さんの著書を購入して下さった司書の方もおられました。

予定の大幅に過ぎて、22時近くになって、美香さんにもう一度マイクを取って頂きました。

 「このような話をしていったい何になるのだろう、と空しさも感じる。親しい友達の命さえ守ることはできないではないかと。今日も結論めいたことは言えなかったが、私は伝えることをやめる訳にはいかない。パレスチナの状況がきちんと日本に報道されることは少ない。このような人たちがいることを、ぜひ、覚えておいてほしい」

 パレスチナの状況は悪化するばかりで、希望は見られない様子。占領、入植、暴力といった基本的な構造は、何ら変わっておらず、やはり気分は沈みがちになります。

 しかし美香さんは、帰られる途中、以下のようなツイートをして下さっていました。
 「お互いに言いたいことを伝え合える、ステキな会でした。あったかーい気持ちで帰途についています」

 パレスチナオリーブの皆川さんが送って下さった箱には、ザアタルと一緒に「かえってお手間をかけますがよろしくお願いします」とのメッセージカードも入っていました。「伝えたい」という思いが、皆川さんからも伝わってきました。

不慣れな主催者の企画と進行で、美香さん、元基さん、参加者の皆さんには色々と不便をお掛けしたかもしれません。コロナが完全に収束していない中、食事つきのイベントには二の足を踏まれた方もおられたのも当然ですが、参加者の皆さんの活発な意見交換などにより盛り上がりました。
 開催できて本当に良かったと思っています。皆様に改めて感謝申し上げます。

 何より、パレスチナを思う方たちのネットワークづくりに少しでも貢献できたとすれば、これに勝る喜びはありません。

なお、募集の時にお約束していた通り、代表して避難民支援のためにUNHCRを通じて寄付させて頂きました(10,000円=500円×20人)。

次回の「食と農の市民談話会」は、日程も内容も未定ですが、できれば7月頃に開催したいと思っています。決定すれば、改めてご案内させて頂きます。