【メルマガ】F.M.Letter No.267 -pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.267◇
  2023年5月20日(土)[和暦 卯月朔日]
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◆ F.M.豆知識  パン食をご飯食に変更した場合の効果
◆ O.カレント  基本法検証部会 中間取りまとめ(案)
◆ ほんのさわり 白川真澄著『脱成長のポスト資本主義』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 広島で開催されている主要7か国首脳会議(G7)に、急遽、ウクライナのゼレンスキー大統領が対面で参加することとなりました。停戦と和平に向かうきっかけとなることを期待します。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−パン食をご飯食に変更した場合の効果−

フード・マイレージ指標を用いると、地産地消や国産農産物を選択することによる、輸送に伴う二酸化炭素排出量の削減効果を簡単に試算することができます。
 リンク先の図は、埼玉県内のある生協から依頼されて、パン食をご飯食に変更することによる効果を試算したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/05/267_gohan-pan.pdf

左の2本のグラフは、現在、1週間の21食(3食×7日)のうち、ご飯を11回、パンを10回食べているのを、1食ずつ、ご飯を増やしパンを減らした場合の変化(輸送に伴う二酸化炭素排出量の削減効果等)を示したものです。
 なお、消費地はさいたま市、お米は新潟・佐渡島産、小麦はアメリカ・カンザス州産と仮定しています。

現状の1週間(ご飯+パン)のフード・マイレージは24,226kg・km、輸送に伴う二酸化炭素排出量は478gですが、一食ずつパンからご飯に変更することによって、それぞれ2,369 kg・km、36.3gずつ削減されることとなります。10回のパン食を全てご飯食に変更した場合には、現状と比べてフード・マイレージは2.2%、輸送に伴う二酸化炭素排出量は24%にまで削減されることとなります(両者に差があるのは、米はトラックで輸送されるのに対して、小麦は主に船舶で輸送されているためです)。

右の棒グラフは、この二酸化炭素排出量の削減効果を「家庭でできる省エネ」(資源エネルギー庁資料)と比較したものです。
 全てご飯食に変更した場合の二酸化炭素の削減量は363gで、「冷房を1℃高く暖房を1℃低く設定」する場合の約半分、「シャワーを1日1分間短縮」する場合の7割弱、「1日1時間テレビ利用を減らす」場合の2.3倍に相当します。
 食材の産地に着目し選択することは、快適で便利な生活を維持することにもつながります。

データの出所:筆者作成。

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−基本法検証部会 中間取りまとめ(案)−

出典:基本法検証部会第15回資料(中間とりまとめ(案)の概要)。なお、第16回で中間とりまとめ公表済み。

昨年11月以来、食料・農業・農村基本法の改正の方向について議論してきた食料・農業・農村政策審議会 基本法検証部会は、5月19日(金)、「中間とりまとめ」(案)について審議し、公表しました。

この中では、今後20年の変化を見据え、国民一人一人の食料安全保障の確立、環境等に配慮した持続可能な農業・食品産業への転換、生産性の高い農業経営の育成・確保、地域コミュニティの維持等が基本理念として掲げられています。
 また、基本的な施策としては、フードバンクやこども食堂等の活動支援、有機農業など環境負荷低減を行う農業を主流化し、生産者の努力や工夫を「見える化」して消費者の行動変容を促すこと、自給的農家も含めた地域の話合いを基にした農地の保全・管理等が掲げられています。
 さらに、不測時の食料の確保・配分のために、制約を伴う義務的措置等の必要性についても検討することとされています。

今後、5月29日には「中間とりまとめ」として公表し、7月以降、パブリックコメントや地方意見交換会の開催が予定されています。
 多くの方に関心を持って頂き、農水省に意見などを寄せて頂ければと思います。

(参考)
 農林水産省HP「食料・農業・農村政策審議会 基本法検証部会」
 https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kensho/index.htmll

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−白川真澄著『脱成長のポスト資本主義』 (2023/4、社会評論社)−
 https://www.shahyo.com/?p=11707

著者は1942年京都市生まれ。かつて60年安保闘争、ベトナム反戦運動、三里塚闘争等に関わり、現在はピープルズ・プラン研究所などで研究・普及、ネットワークづくり等に取り組んでおられます。私も、高坂勝さん(SOSAプロジェクト)と共催されている「脱成長研究会」に何度も参加させて頂くなど、多くの学びを頂いています。
 
 本書によると、現代の世界は深い危機(ウクライナ戦争、新型コロナの流行、気候危機、社会内部の格差の拡大と分断等)のただ中にあり、資本主義という現代の支配的なシステムは行き詰まりを見せているものの、予想以上の強い延命力を持っており、その手直しや自己修正では問題は根本的に解決できないとしています。

処方箋として著者が提示しているビジョンが、脱成長経済への転換です。
 経済活動を自然生態系の循環の中に埋め戻す(グリーン化)とともに、蓄積されたストックを活用する共有型(シェアリング)経済へとシフトするというものです。
 また、経済の中心を、社会的に必要性が高いモノやサービスを供給する部門に移すべきともしています。これは具体的には、ケア(医療や介護、子育て、教育等)の分野で、これらの比重が高まるにつれて経済成長はダウンするものの、今後の労働者の賃金は、社会的必要性という基準によって決定されるべきとしています。
 <食>については、グローバル資本主義に対抗し、その支配に風穴を開けていくうえでカギになるとの記述もあります。食についての市民と農民の自己決定権を取り戻し強化することの重要性が強調されます。
 さらに、住民の参加・協働と地方政府との連携によって、公共サービス<コモン>の民主的管理を実現すべきとして、ヨーロッパ等におけるミュニシパリズムの流れについての興味深い事例も紹介されています。

そして、著者は「多くの地域で市民が主導権を発揮して左翼・リベラル・グリーン派の地方政府を実現」させ、「グローバル資本と国家の支配体制を蚕食する拠点」とし、全国レベルの「よりましな政権」を目指すべきとしています。
 しかし、その具体的なプロセスや手段については必ずしも十分には明確となっていないと感じました。本日(5月20日)の出版記念会で、ご本人に直接伺ってみようと思っています。

(参考)ピープルズ・プラン研究所
 https://www.peoples-plan.org/

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 元木上堰 春の浚い(福島・喜多方市山都)[5/9]
 https://food-mileage.jp/2023/05/09/blog-436/

○ 行き詰まった食の現状を乗り越えるには[5/15]
 https://food-mileage.jp/2023/05/15/blog-437/

▼ 筆者が主催するイベントです。
〇 パレスチナの今 −写真家・高橋美香さんの思い−
 パレスチナ料理を頂きながら、パレスチナの家庭に滞在(居候)しながら人々の暮らしを記録し続けてきた写真家・ジャーナリストの高橋美香さんから、今、パレスチナで起こっていることについてお話を伺います。
 日時:5月25日(木)19:00〜21:30
 場所:47都道府県レストラン 箕と環(東京・神田)

 事前申込みが必要です。23日(水)までにお名前、参加人数を中田までメールでお願いします(このメルマガへの返信で可)。
(詳細)
 https://food-mileage.jp/2023/05/02/230525_palestine/
(FBページ)
 https://www.facebook.com/events/6071283369606886

▼ 筆者が登壇するイベントです。
〇 あなたの食べ方が地球を変える
  〜フード・マイレージ 日本の現状と解決策は?〜
 日時:5月23日(火)10:00〜12:00
 場所:生活クラブ生協埼玉(埼玉・川口市小谷場)及びオンライン
 主催:生活クラブ生協埼玉、大人の学校
 (参考)
 http://otonanogakkou.org/index.html#0523

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 農あるまちづくり講座in世田谷 第6回
  −世田谷農業の歴史−
 日時:5月23日(火)19:00〜
 場所:JA世田谷目黒ファーマーズセンター(東京・世田谷区桜新町2)
 主催:都市農業研究会
 (参考)
 https://www.jacom.or.jp/noukyo/news/2023/03/230309-65243.php

○ 大賀こめづくり(田植え)
 日時:5月27日(土)〜28日(日)
 場所:新潟・上越市大賀集落
 主催:ふるさとラボ大賀

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 今回のG7が再開のきっかけにならないかな〜。
 バックナンバーは拙ウェブサイトに掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.268は6月3日(土)[和暦 卯月十五日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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 ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
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