【メルマガ】F.M.Letter No.269 -pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.269◇
  2023年6月18日(日)[和暦 皐月朔日]
────────────────────
◆ F.M.豆知識  東京圏在住者の地方移住への関心
◆ O.カレント  高坂 勝さん
◆ ほんのさわり 辻 信一『ナマケモノ教授のムダのてつがく』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
────────────────────
 和暦では今日から皐月。梅雨前線が活発化し全国的に強い雨が降ると思うと、その合間には真夏日も。ウクライナではダムが決壊し戦闘も激化。落ち着かない日々が続くなか、地方への移住やローカリゼーションについて考えてみました。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−東京圏在住者の地方移住への関心−

内閣府は、新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関するインターネット調査を定期的に行っています。
 リンク先の図269は、本調査における東京圏在住者の地方移住への関心の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/06/269_iju.pdf

これによると、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2020年5月の段階では、東京圏在住者(全年齢)のうち地方移住に関心のある人は30.2%でした。この割合はコロナ禍の下で徐々に増加し、2023年3月調査では35.1%(強い関心がある4.5%、関心がある9.7%、やや関心がある21.0%)となっています。
 これを20歳代についてみると、地方移住に関心のある人は2020年5月時点で39.2%と全年齢平均より9ポイント高く、コロナ禍の下で平均を上回って上昇し、2023年3月時点では44.8%(強い関心がある7.1%、関心がある13.5%、やや関心がある24.3%)と、平均を10ポイント近く上回っています。
 なお、別の問によると、地方移住に関心がある理由としては「人口密度が低く自然豊かな環境に魅力を感じたため」「テレワークによって地方でも同様に働けると感じたため」をあげる者が多く、一方、「仕事や収入」を懸念している人が多くなっています。

コロナ禍など社会情勢の変化の下、若い世代を中心に田園回帰への関心が高まっている状況が伺えます。

データの出所:
 内閣府「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(2023年4月)から作成。
 https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/index.html

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−高坂 勝さん(千葉・匝瑳市)−

高坂 勝(こうさか・まさる)さんは、1970年神奈川・横須賀市生まれの横浜市育ち。30歳の時に大手百貨店を退職して国内外をめぐった後、社会的な活動を本格化されていきます。
 2004年、池袋にオーガニックバー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」をオープン。私が初めて高坂さんにお目に掛かったのもこのお店で、「退職者量産バー」の異名もあった独特の雰囲気は今も忘れられません。客として来られていた多くの方との出会いもありました。

高坂さんは、その後、千葉・匝瑳(そうさ)市との二地点居住を始め、2011年には米作りや移住あっせんを行うNPO“SOSA Project”を創設。さらに2018年にはバーを閉店して完全移住し、古民家や自宅を改修しての農泊、ソーラーシェアリングによるエネルギーの地域自給への付随サポートなど幅広い活動に取り組んでおられます。
 現在は地域の村つくり協議会の代表も務めておられ、また、『減速して自由に生きる−ダウンシフターズ』等のご著書、メディアへの出演や寄稿も多数あります。

その匝瑳を初めてお訪ねしたのは、本年6月4日(日)のことでした。
 都会の人たちの米作り体験の場を見学させて頂いた後、高坂さん主催の辻信一先生(ナマケモノ倶楽部代表)のトーク/ドキュメンタリ映画『君の根は。』上映会に参加。地域で有機農業に取り組んでおられる方など参加者との間での意見交換は盛り上がりました。
 高坂さんの活動を貫いている思想は、脱成長とローカリゼーションです。経済成長至上主義から脱し、地域における実践の積み重ねから社会を変えていくという「次の時代を先に生きる」壮大な実験が、本格化しつつあります。

注:高坂さんの「高」の字は、正確には「はしごだか」です。
 参考:
  高坂 勝さんホームページ「次の時代を先に生きる」
   https://masaru-kohsaka.com/
  拙ブログ「次の時代を先に生きる人々(千葉・匝瑳)」
   https://food-mileage.jp/2023/06/10/blog-441/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−辻 信一『ナマケモノ教授のムダのてつがく-「役に立つ」を超える生き方とは』(2023/1、さくら舎)−
 https://namakemono.shop-pro.jp/?pid=171926845

著者は1952年東京生まれの文化人類学者、NGO「ナマケモノ倶楽部」代表、明治学院大学名誉教授。インドのサティシュ・クマールの思想や南米の民話「ハチドリのひとしずく」を日本に紹介した方としても著名です。

本書で著者は、コロナ禍のなか「不要不急を避けよ」と叫ばれるなど、ムダに対する風当たりが強まり、ムダが忌避・敵視されることで、世の中はずいぶんと生きづらくなっているのではないかと警鐘を鳴らしています。
 著者によると、ムダというのは、ある特定の視点(効率化や合理化)からの「ひとつの」価値判断に過ぎないものとのこと。計測可能な指標のみによって計算されるGDPからは「幸せ」がすっぼり抜け落ちているとします。その上で、社会が曲がり角にある現在、「役に立つ」という発想を超え、遊びやゆとりといった「ムダ」(計測不能な価値)を取り込んでいくことが必要ではないか、と問題提起しているのです。

また、「わかりやすさ」ばかりを求めるのではなく、「わからないという宙ぶらりん」の状態に耐えることも重要であるとし、「ネイティブ・ケイパビリティ」という概念も紹介されています。
 さらに著者は「答えは足もとの土にある」とした上で、土壌微生物の働きを重視するリジェネラティブ(大地再生)農業の世界的な広がり、これまでのグローバル化の流れを転換するローカリゼーションの動きに希望を見出しています。

最後に著者は、「時間をムダにするとは、自分の時間を生き、自分の人生を生きること。愛とは、惜しげなく相手のために時間を使うこと」であるとし、「あなたは効率的に愛されたいですか」と読者に問いかけています。

参考:ナマケモノ倶楽部ホームページ(辻先生のブログも)
  https://www.sloth.gr.jp/

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 次の時代を先に生きる人々(千葉・匝瑳)[6/10]
 https://food-mileage.jp/2023/06/10/blog-441/

○ ぶらり歴史散歩(房総)[6/12]
 https://food-mileage.jp/2023/06/12/blog-442/

▼ 筆者が協力するイベントです。
 〇 親子で食農体験−採りたて夏野菜を食べてみよう!
 (食と農の市民談話会 SEASON3 (実践・対話篇) 第三回)
 日時:7月15日(土)10:00〜12:00
 講師及び会場:白石好孝さん、練馬区白石農園
 主催:コミュニティスクール(CS)・まちデザイン
 (詳細、申込み先等↓)
 https://www.facebook.com/events/2582962815178305/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ エシカルの奇跡〜イタリアと日本の食・農、暮らしムーブメントに学ぶ
 日時:6月20日(火)20:00〜
 登壇:島村菜津、末吉里花、辻信一
 場所:オンライン
 主催:ナマケモノ倶楽部
 (詳細、申込み等↓)
 https://0620ethical.peatix.com/

○ 高橋美香『パレスチナに生きるふたり-ママとマハ』スライドトーク
 日時:6月25日(日)15:00〜16:30
 場所:神保町ブックハウスカフェ(東京・千代田区神田神保町2)
 主催:ブックハウスカフェ
 (詳細、申込み等↓)
 https://www.facebook.com/events/1469522960247748/

○ 農あるまちづくり in 世田谷(最終回)
 日時:6月27日(火)19:00〜
 場所:JA世田谷目黒ファーマーズセンター(東京・世田谷区桜新町2)
 主催:都市農業研究会
 (参考)
 https://www.jacom.or.jp/noukyo/news/2023/03/230309-65243.php

○ ひととむらの物語
 記録映画『出稼ぎの時代から』上映会&トークショー
 日時:7月1日(土)13:30〜16:00
 登壇:大野和興さん(農業ジャーナリスト)、白石好孝さん(練馬農家)
 場所:生活クラブ館(東京・世田谷区経堂)及びオンライン
 主催:CSまちデザイン
 (詳細、問合せ等↓)
 https://cs-machi.com/kamikouza3/

────────────────────
*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 昨年2月のロシアのウクライナ武力侵攻以降、お休みしています。バックナンバーは拙ウェブサイトに掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.270は7月2日(日)[和暦 皐月十五日、半夏生]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
────────────────────
◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
 (購読(無料)登録はこちらから)
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
 発行システム:『まぐまぐ!』
  https://www.mag2.com/
 バックナンバー
  https://food-mileage.jp/category/mm/
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  https://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
  https://food-mileage.jp/category/blog/