◇フード・マイレージ資料室 通信 No.283◇
2024年1月11日(水)[和暦 師走朔日]
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◆ F.M.豆知識 能登の農業
◆ O.カレント 「能登はやさしや土までも」
◆ ほんのさわり 写真集『いつもののと』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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ウクライナやパレスチナでの戦火が激化する中、国内では大地震と航空機事故が発生するなど、何とも不穏な年明けとなってしまいました。今号は実は別のテーマを考えていたのですが、急きょ、能登の特集に変更しました。
かつて2年間、金沢に在勤・在住したこともあり、能登は何度も訪ねたことがある地です。厳寒・降雪のなか、これ以上被害が拡大しないことを祈ります。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−能登の農業−
【ポイント】
能登の農業生産条件は必ずしも恵まれたものではありませんが、多彩で特徴的な農業が営まれており、日本で最初の世界農業遺産にも認定されています。
石川県の能登地方(七尾市、輪島市、珠洲市、羽咋市、志賀町、宝達志水町、中能登町、穴水町及び能登町)における農業の生産条件は、必ずしも恵まれたものではありません。
リンク先の図283は、能登の農業についてのいくつかの指標について、石川県平均、全国平均と比較したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/01/283_noto.pdf
経営耕地面積1ha未満の農業経営体の割合(53%)、農産物販売金額300万円未満の農業経営体の割合(87%)はいずれも全国平均を上回っており、規模の小さな農家が多いことが分かります。また、農業従事者のうち65歳以上の方の割合は72%と全国平均を上回っており高齢化が進むとともに、後継者が確保されていない経営体の割合(74%)も全国平均を上回っています。
また、地域類型別にみると、能登の市町村の89%(9市町のうち8)は中山間地域に分類されます。
このような条件不利下でも、能登では「里山里海」とも呼ばれる多彩で特徴的な農業が営まれてきました。2011年6月には、新潟・佐渡市とともに日本で最初の世界農業遺産(FAO)に認定されています。
一日も早い地震被害からの復旧・復興を祈ります。
資料:
農林水産省「2020年 農林業センサス」及び「農業地域類型」から筆者作成。
https://www.maff.go.jp/j/tokei/census/afc/2020/030628.html
(石川県及び市町村データは第1巻(石川県)、全国のデータは第2巻参照)
https://www.maff.go.jp/j/tokei/chiiki_ruikei/setsumei.html
参考:
「世界農業遺産・能登の里山里海」
https://noto-satoyama.com/
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
−「能登はやさしや土までも」−
【ポイント】
やさしいはずの能登の大地が、今回は牙をむきました。被災地では、厳しい現実を前に被災者同士が助け合っている様子も報じられています。
「能登はやさしや土までも」という美しい言葉があります。
能登では人だけではなく風土までも優しいという意味ですが、現実には深い雪に閉ざされるなどの厳しい自然環境の下で、互いに支えあいながら暮らしてきた能登の人びとの強さと温かさを表している言葉です。
初出は元禄九(1696)年の加賀藩士・浅加久敬の紀行文『三日月の日記』だそうです。浅加は険阻な峠道を行く馬子の笑顔を見て、杵つき歌にある「能登はやさしや土までも」とはこのことかと思ったと記しています。同じ歌詞は童謡にもあるなど、能登地方には古くからあった言葉のようです。
そのやさしいはずの大地が、今回は牙をむきました。被災地からは、厳しい現実と同時に、被災者同士が助け合っている様子も報じられています。今は思いを馳せることしかできません。
参考:
レファレンス協同データベース
「能登はやさしや土までも」の言葉の原典について(金沢市図書館)
https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000190040
ちなみに『三日月の日記』の原本(『能登路の旅.続』所収)は、利用登録すれば国立国会図書館デジタルコレクションで無料で閲覧することができます。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1226241
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−写真集『いつもののと』(2013.6、ゆるり能登GIAHS写真部)−
https://notostyle.shop-pro.jp/?pid=87686937
【ポイント】
人が自然と調和し、ともに生きる能登の暮らしを映しとった美しい写真集の頁をめくるに、ざわついていた心も次第に静まってきました。
被災地からの映像に重苦しくなった心を抱えて図書館を訪ねたところ、偶然、見つけて手に取ったのが、この小ぶり(A5版)の写真集でした。
解説文には「人が自然と調和しともに生きる能登の暮らしのなかで、生まれ、育まれ、守られてきた姿をうつしだしたもの」とあります。
最初の章は「さとのたんぼ」と題されています。大きな松明をかざして歩く穴水町の虫送り、日本海に面した輪島市の水田、能登町の棚田での田植え、実り始めた小さな稲穂の写真等は、心に沁みるような美しさです。
「うみのけしき」の章には、舳倉島の海女さんや冬の海に漕ぎ出す漁師の姿。「はれのひ」の章には、各地の火祭りの様子や神を迎える「あえのこと」の行事食等の写真。
「まいにち」の章には、赤いランドセルを背負った穴水町の子ども、直売所に並べられた色鮮やかなかぼちゃ、能登上布を織る手仕事の様子など。
頁をめくるうちに、ざわついていた心も次第に静まってきました。
解説文には「これら景色は二度と出会うことができない、はかないろうそくの火のようなものかも知れない」とあります。確かに全く同じ景色は二度とないかも知れませんが、もう一度、同じような景色を見に行きたいと強く思っています。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 2024年は波乱のスタート。肉食のことも。[1/7]
https://food-mileage.jp/2024/01/07/blog-481/
○ ドイツの大規模農民デモに思ったこと[1/9]
https://food-mileage.jp/2024/01/09/blog-482/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
○ 体験落ち葉掃き
日時:1月13日(土)9:00〜12:00
場所:多福寺地蔵堂集合(埼玉・三芳町大字上富)
主催:三芳町
(詳細、問合せ等↓)
https://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/work/nougyou/2018-0112017-ochibahaki.html
○ 奥沢ブッククラブ第99回−小川 糸『つるかめ助産院』
日時:1月15日(月)19:00〜21:00
場所:オンライン
主催:奥沢ブッククラブ
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1728539354316628/
○ 今こそ停戦を Cease All Fire Now ! プレゼン&トーク
日時:1月24日(水)19:00〜
場所:東京ウィメンズプラザホール(東京・渋谷区神宮前)
主催:Jazz HIKESHI
(詳細、問合せ等↓)
https://ceasefirenow1.peatix.com/
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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
ウクライナ、パレスチナに加えて能登地震。2024年のコツコツはどうなるのか私にも分かりません。
過去のアーカイブは以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.284は明年1月25日(木)[和暦 師走十五日]に配信予定、年末から準備していた「お肉」の話題になると思います。
正確でより役に立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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