2023年度もいよいよ年度末。4月から新たな船出をされる方たちのご多幸を祈ります。
職場至近の東京・日比谷公園では、サンシュユやトキワマンサクは早や盛りを過ぎつつあります。郷里・徳島の農家をしている友人からはニンジンのお届け物。有難うございます。
2024年3月16日(土)は、久しぶりに松戸にある千葉大・園芸学部へ。
冷たくて細かい雨が落ちています。ここ数日の寒の戻りで、桜の開花も遅れている様子。
13時30分から100周年記念戸定ヶ丘ホールへで開催されたのは、第5回東雲会。
千葉大・園芸学部、園芸学研究科のOBや関わりのある方たちによる自主的な研究会で、1年ぶりの開催です(昨年は桜も満開でした)。
斎藤 修先生(千葉大学名誉教授)の開会挨拶。
この研究会では、農業と食品産業との連携等について、事例報告を含めて取り上げることが多かったのですが、今回は「食料安全保障政策の国際的課題と新たな方向」という大きなテーマ。国際情勢の不安定化や農業資材の高騰をめぐって新たな政策体系が構築されつつあることが背景にあります。
最初の基調報告は、内閣府SIP(戦略的イノベーションプログラム)について。
基礎研究から社会実装までを見据えて研究開発を推進するSIPの第3期(2023~28年度)においては、「豊かな⾷が提供される持続可能なフードチェーンの構築」が課題の一つとなっているとのこと。なお、2023年度予算には14課題で280億円という相当の額が計上されているそうです。
続いて、農林水産省の担当者から、食料・農業・農村基本法の改正など日本の食料安全保障政策の新たな展開方向について報告。「食料供給困難事態対策法案」については、強制的に生産転換させようとしている等の誤解も多いとのこと。
国会の開会中であり、おそらく担当課は、連日、深夜まで対応されているものと推察されます。
外務省の担当者(農水省からの出向者)からは、農業環境に関する国際交渉に関わった個人的な経験をもとに、「欧米の主張と日本の立ち位置」と題して興味深い報告。
さらに、鈴木健二さん((株)グリーンハーツ)からは「野菜の契約取引の拡大とネットワーク形成」と題して、実践的な報告。茨城・古河市でグループを結成し、加工用野菜の契約生産に取り組んでおられるそうです。
休憩をはさんで、斎藤先生からの全体コメント(文責・中田)。
「基本的視点として、生産資材以外は新たな課題は盛り込まれていないのではないか。
国際的な資材の現状については、中国のリン資源は供給限界に達しつつあり、インドはロシア、ベラルーシ等との連携を強化。ブラジルの大豆生産はリン不足による収量低下が懸念されている。日本は新たなイノベーション(下水汚泥、バイオマス発電の燃焼灰の活用等)による化学肥料の削減が求められる」等のコメント。
また、競争力がなく自給率の低い畑作(小麦、大豆等)のサプライ・バリューチェーンの構築、森林-農地・里山-里海を生態系サービスととらえた広域的な土地利用の検討等が必要と指摘されました。
さらに農水省の萩原参事官からは、国際交渉の経験を踏まえて「環境問題をより重要視した議論が必要」等とのコメント。
17時からは、緑風会館2階の千葉大学生協食堂で立食での懇親会。
何人かの方と名刺交換。花き生産者の方は、経営上の様々な課題(資材高騰等)があることを直接教えて下さいました。エシカル消費の普及に向けたネットワークづくりに取り組んでおられる方も。
この研究会は、毎回、研究者だけではなく、中央/地方の行政官、関係団体、さらには現場の生産者や流通関係者など、多彩な参加者がおられることが魅力です。改めて、直接お目に掛かっての意見/情報交換の大切さを実感することができました。
次の研究会が待ち遠しく思われました。
ところで全く個人的なことながら、本ブログの枝番が500となりました。もっとも今の形式とする以前からブログは書いていたので、総数は500本を上回っています。
もともと色々な方の話を聞くのが大好きで、学んだこと、心に残ったことを個人として備忘的に記録しておこうと思ったのが、ブログを始めるきっかけでした。時々過去の記録を検索する時など大いに役立っており、最大の受益者は私自身です。
さらに副次的かも知れませんが、「いい話」「ためになる話」は、多くの人に知ってもらいたいと思います。拙い文章と写真で、発言された方の真意をどれほど正確にお伝えできているかは、心もとない面はあります。
それでも、わずかでも「より豊かな未来の食に向けて」貢献できればと情報発信を続けていきたいと思っていますので、これからも読んで頂ければ幸いです。
(拙ウェブサイトのカバー写真も、4月からは春の田んぼに変更予定です。管理して下さっている creativekei さん、いつも有難うございます。)
(参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、登録無料)
https://www.mag2.com/m/0001579997