【メルマガ】F.M.Letter No.288-pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.288◇
 2024年3月24日(日)[和暦 如月十五日]
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◆ F.M.豆知識  ふくしま心のケアセンターへの相談件数等の推移
◆ O.カレント  「廃炉」が完了するのはいつか
◆ ほんのさわり 青木美希『なぜ日本は原発を止められないのか?』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 カレンダーは間もなく新年度。新たな門出を迎える皆様のご多幸をお祈りします。東日本大震災から14年目に入っていますが、今号のテーマは「原発事故は終わっていない」です。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−ふくしま心のケアセンターへの相談件数等の推移−

【ポイント】
 原発被災者等からの相談件数は、近年もほぼ横ばいないし増加傾向で推移しており、相談内容は多様化、複雑化するとともに深刻化しているとのことです。

「ふくしま心のケアセンター」は、福島県から事業委託を受けた(一社)福島県精神保健福祉協会が設置・運営する機関で、看護師、保健師、臨床心理士、精神保健福祉士、社会福祉士、作業療法士等が相談を受けること等により、原発被災者等の総合的な心のケア対策を行っています。

リンク先の図288は、2013年以降の相談件数等の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/03/288_sodan.pdf

2022年度における相談支援件数は5,847件となっており、相談者の90%近くの震災前の居住地は、広範な避難指示が出された相馬・双葉地域です。
 相談の背景(複数)については、健康上の問題が71%、家族・家庭問題が54%、居住環境の変化が44%等となっており、また、67%の方が精神的・身体的不調の症状を訴えておられるそうです。

相談支援件数(棒グラフ)の推移をみると、2017年度にかけては減少傾向で推移していたものの、原発事故の自主避難者への住宅支援が見直されるなかで18年度から増加に転じ、ここ数年は相談支援件数、実相談者数(下の折れ線グラフ)ともにおおむね横ばいで推移しています。
 一方、実相談者一人当たりの相談支援件数(青い折れ線グラフ)は、2017年度までは4〜5件程度だったのが、近年は10件以上と上昇傾向で推移しています。

また、被災者相談ダイヤル(ふくここライン)への相談件数(赤い折れ線グラフ)は2022年度で242件と、これも増加傾向で推移しています。2022年度は再相談が8割を占め、一人で何度も相談される方が増えているそうです。

避難指示の解除が進み、徐々に帰還される方も増えていますが、センターは「被災者からの相談内容は、多様化、複雑化するとともに深刻化している」としています。

[データの出典]
 「ふくしま心のケアセンター活動記録誌2022(令和4)年度」から作成。
 https://kokoro-fukushima.org/activityreport/

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−「廃炉」が完了するのはいつか−

【ポイント】
 仮に当初の計画通りに進んでも「廃炉」が完了するまで今後30年程度を要します。さらに、核燃料デブリの取り出しは着手すらできていないなど、不透明さを増しています。

「中長期ロードマップの進捗状況」(2024.2/29、廃炉・汚染水・処理水対策チーム会合資料)より。

「廃炉」とは、原子力発電所の原子炉の運転を終了させ、施設を解体し、放射性廃棄物も処分してリスクのない状態に戻すことを指します。
 3つの原子炉がメルトダウンするという世界最悪レベルの事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所については、2011年12月、廃炉作業の基本的な考え方や主要な工程ごとの目標等が「中長期ロードマップ」として、東京電力と政府により決定・公表されています(直近の改定は2019年12月)。

廃炉のためには、使用済み核燃料の取り出し、汚染水対策、原子炉施設の解体など様々な工程が必要ですが、特に溶け落ちて周囲の構造物と混ざって冷え固まり、高い放射線を出し続けている「核燃料デブリ」の取り出しは、世界でも前例のない極めて難易度が高い作業です。
 当初は10年以内(2021年まで)に取り出しを開始するという計画でしたが、何度も延期され、いまだに着手できていません(技術や手法も確立していません)。

東京電力と政府は、長くても40年後(2051年)までに廃炉を完了させるという当初の目標を現在も堅持していますが、その実現性については不透明さが増しています。いずれにしても、少なくとも今後30年程度(あるいはそれ以上の期間)は、私たちは廃炉作業と共存していかなければならないのです。これはむろん、福島だけの問題ではありません。
 なお、現在も福島第一原発では、毎日4千人の作業員の方が廃炉作業に従事されています。

[参考]
 中長期ロードマップ等について(経済産業省ホームページ)
 https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning.html

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−青木美希『なぜ日本は原発を止められないのか?』(2022.11、文春新書)−
 https://bunshun.jp/articles/-/67655

【ポイント】
 日本が原発を止(や)められないのは、原子力ムラが存在しているから。しかし原発は巨大だから変えられないというのは嘘で、推進する勢力は一部だけ。

著者は札幌市出身。地元新聞社を経て全国紙に入社後は東日本大震災・原発事故の現場を取材し、「手抜き除染」の告発報道等に携わられました。現在も個人の立場で、学生時代からのライフワークである原発問題の取材を続けておられます。ちなみに祖父は電力会社勤務、父親は大学工学部の教授として原発に代わる発電方法の研究をされていたそうです。

昨年、政府は「原発回帰」に舵を切りました。「世界で最も厳しい規制基準」といった新たな安全神話も作られつつあります。
 あれほどの事故を経験し、現在も被災者には(避難者も帰還者も)厳しい状況が続いているにもかかわらず、なぜ日本は原発を止(や)められないのか。疑問を持った著者は、政治家、官僚、電力会社、研究者、マスコミ関係者など、意見の異なる人たちを含めて数百人に会い、話を聞きました。怒鳴られたこともあったそうです。

取材で改めて明らかになったのは、内閣総理大臣を村長とし、政・官・業・学・メディアの五角形から成り立っている「原子力ムラ」の存在でした。
 電力会社による政治家への献金(原資は電気料金)と、経産省等からの天下りの受け入れ(“互助会”システム)。学会・大学には研究費等を支出し「御用学者」を養成します。
 マスコミは、原子力PR広告や、電力会社・政府の発表を鵜呑みにした記事を掲載することで原発を容認してきました。情報を得るためという口実で、あえて電力業界に取り込まれ一体化する記者も存在するそうです。

そして「おわりに」には、本書の出版に当たって著者自身が経験した、所属する新聞社との「確執」が赤裸々につづられています。一時は出版不許可とされ、所属する新聞社名や肩書はすべて削除したそうです。

最後に著者は「本書で描いたのは、原発は巨大だから変えられないというのは嘘だということ。原発を推進する勢力は一部だけ」であるとし、「村長である総理が変えると決めれば変えられる。そのために投票に行く人が一人でも増えてほしい」と訴えています。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ パレスチナの現状[3/14](高橋美香さん報告会など)
 https://food-mileage.jp/2024/03/14/blog-496/

○ 3.11 ともしび「被災地にとどけ歌の力」(青木美希さん)[3/17]
 https://food-mileage.jp/2024/03/17/blog-497/

○ チャレンジ「江戸東京野菜」(大竹道茂さん講演)[3/19]
 https://food-mileage.jp/2024/03/19/blog-498/

○ 節目の第200回「霞ヶ関ばたけ」[3/8]
 https://food-mileage.jp/2024/03/22/blog-499/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

○ 食の総合科学研究会 第1回読書会
 (テキスト)真田純子『風景をつくるごはん』
  https://toretate.nbkbooks.com/9784540231247/
 日時:4月2日(火)10:00〜12:00
 場所:オンライン
 主催:NPO市民科学研究室
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/foodrg/

○ Present Tree in くまもと山都 植樹ツアー2024
 日時:4/6(土)〜7日(日)
 場所:熊本・山都町
 主催:環境リレーションズ研究所
 (詳細、問合せ等↓)
 https://blog.presenttree.jp/2024/01/12/13165/

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 いつまでお休みが続くのでしょうか。過去のアーカイブは以下に掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.289は4月9日(日)[和暦 弥生朔日]に配信予定です。
 正確でより役に立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』(今年は北斎手帳)を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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