【ブログ】インドにゆかりのあった一日

2025年8月18日(月)。
 お昼のNHKテレビを見ているとこの日はチャンドラ・ボースの命日で、杉並のお寺で法要が営まれるとのニュース。ちょうど夕方には都心に出る用があったので、途中、寄ってみることに。

 メトロ丸の内線・東高円寺駅に降りたのは16時過ぎ。この日の都心の最高気温は37℃と蒸し暑く、雲行きも怪しくなってきました。
 駅に隣接する蚕糸の森公園を抜けていきます。農林水産省・蚕糸試験場が筑波研究学園都市に移転した跡地につくられた防災公園とのこと。レンガ造りの旧正門も残されています。
 それにしても、水辺はもう少しは涼しげに見えてもいいのでは。

公園を抜けて数分のところに頂光山蓮光寺がありました。想像していたより小ぶりな寺院です。
 「チャンドラ・ボース忌法要」との立て看板。脇にある説明板によると、文禄三年(1594)開創の日蓮宗の寺院で、インド独立運動の指導者チャンドラ・ボースの遺骨が安置されていることから、記念碑〔昭和50年(1975年)〕と胸像〔平成2年(1990年)〕が建立されています。

13時から行われた法要はすでに終わっていて、境内に人の姿はありません。
 ネタジ・スバス・チャンドラ・ボース(ネタジは尊称)の碑と胸像がありました。碑にはネルー首相やインディラ・ガンディー首相の名前も刻まれています。胸像の首にはインド国旗が巻かれ、花束が備えられています。
 チャンドラ・ボースはインドの独立運動家で、国民軍を率い、1943年には日本の支援を得て自由インド仮政府の国家主席に就任。しかし終戦直後の1948年8月18日、台北で飛行機事故により死亡。遺骨は日本に送られ、ここ蓮光寺に安置されているそうです。
 碑の脇に置かれたノートには、インド文字のメッセージも。

蓮光寺の境内を出てすぐのところには「被爆アオギリ二世」。
 少し離れた福相寺の境内には米俵に乗った2匹のネズミの彫像。広大な妙法寺の境内には日清・日露戦役の犠牲者の慰霊碑がありました。

雷鳴がとどろく中、メトロで京橋に移動。何とか降られずに済みました。
 18時30分から中央区立環境センターで開催されたのは「今夜もご機嫌@銀座で農業」と題する月1回の勉強会。8月のゲスト講師はガンディー研究者の石井一也先生(香川大学法学部)です。

 『ガンディーの文明観と理想の村落像』と題する詳しいスライドを用いて、1時間ほど説明して下さいました。なお、スライドのファイルは事前に参加者に配布して下さっています(以下は中田の印象に残った部分のみ。文責は中田にあります)。

 冒頭、「ガンディーの本名(モーハンダース・カラムチャンド・ガンディー)は、覚えておくと居酒屋でビールを6本追加注文するときに便利(もう半ダース)とのジョーク。サービス精神旺盛です。
 ちなみに2028年はガンディーの没後80年、29年は生誕160年、30年は「塩の行進」から100年と、記念となる年が続くとのこと。

ガンディーの含蓄ある多くの言葉も紹介して下さいました。
 「インドを踏みにじっているのは近代文明(物質主義)で、これは道徳や宗教には注意を払わない文明。経済的進歩(際限のない物質的発展)が真の進歩(道徳的発展)の妨げになっている」
 「真の意味での文明とは、必要物の拡大ではなく、その慎重・自発的な削減によるもの」「一国が他国を支配することを許す経済学は非道徳」等々。

また、ガンディーは、インドの事情は独特なものであるため他国の歴史を参考にする必要はないとして、手紡ぎ・手織りなど村落工業のを重視したとのこと(チャルカー運動)。

 1929/30年のインドにおける全ての綿布生産量に占める手紡ぎ・手織りのシェアは0.3%に過ぎないものの、「市場」外のものを含めると3~5%となるとのこと。労働集約度に着目すると機械織りの63倍となり、仮に全ての綿布生産を手作業で行えばに5000万人の貧者を養えるとガンディーは考えていたそうです。
 一般的に「生産性」といえば労働生産性(生産物/労働力)を指すことが多いですが、この数式を逆転させて労働集約度(労働力/生産物)を計算すると、労働生産性の低い産業ほど雇用吸収力が大きいと見ることができるのです。まさに逆転の発想、日本の稲作等にも当てはめることができそうです。

ガンディーと国民的詩人・タゴールとの論争(1921年)の様子と、これについてのアマルティア・セン(1998年にノーベル経済学賞を受賞)の評価についても説明して下さいました。
 石井先生によると、センの考え方は基本的に市場による経済的繁栄、分業、「自由」等の諸価値を歓迎しており、「特権的な人々」が享受している「自由」の幅が、貧者の「自由」を制限することによって確保されている可能性を想定していないと批判的です。

 関連して、ガンディーの「世界の貧困は、大量生産(mass-production)によってではなく、大衆による生産(production by mass)によって解決される」との言葉を紹介して下さいました。

最後に「ガンディー思想の現代的意義」は、資源を奪い合う「グローバル化」ではなく持続可能な社会づくりを目指すべきところにあるとのこと。
 そのためには「特権的な人々」が「必要物」を自発的に削減し、より簡素な生活に満足を見出すことが必要であり、人間の身の丈の経済へと大きく旋回する以外に「近代」の矛盾を打開する道はない等と主張されました。

 そして最後に「この言葉だけは覚えて帰ってほしい」と、ガンディーの「地球は、すべての人々の必要を満たすのに十分なものを提供するが、すべての人の貪欲を満たすほどのものは提供しない」という言葉を紹介して下さいました。

後半は参加者との間で質疑応答・意見交換。
 「手仕事の大切さは、縄文文化とも共通するのでは」「キリスト教の滅私・利他・博愛などの精神に相通ずると感じた」「改めてグローバル化の問題を認識できた。できるところから自給に努めていきたい」「日本の場合は、豊かな自然や農業を受け皿とした仕組みができたらと考える」等の感想。

 「自分たちは世界の中でみれば『特権的』な方に入ると思うが、自分がどのような行動ができるのかと考えていた」との感想には、石井先生は
 「自分もガンディーの思想を完全に実践できている訳ではない。しかしガンディーの言葉が、あたかも北極星のように、いつも自分を照らしてくれていると意識するだけでもいいのではないか」との回答がありました。

蔦谷栄一先生からは「改めてガンディー思想について体系的に学ぶことができ感謝。生産消費者として社会的参画を積み上げていくことの大切さを実感した」等の感想がありました。
 なお、蔦谷先生からは「農あるまちづくり講座」フォローアップ講座の案内もありました。第1回は9月9日(火)で、以後、隔月で開催する予定とのことです。

終了後は、いつもの地下の餃子屋さんで懇親会。
 暑い日が続くせいかビールのピッチが速くなり、たちまち追加の注文「もう半ダース」!

(ご参考)
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