【ほんのさわり325】重田園江『ホモ・エコノミクス』

-重田園江『ホモ・エコノミクス-「利己的人間」の思想史』 (2022.3、ちくま新書)-
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480074645/

【ポイント】
 著者は、21世紀に人はホモ・エコノミクス(合理的経済人)であってはならないのではないかと問いかけています。

著者は1968年兵庫・西宮市生まれの明治大学政治経済学部教授。現代思想・政治思想史が専門です。
 ホモ・エコノミクスとは、自分の経済的な利益や儲けを第一に考えて行動する「合理的経済人」のこと。この人間観が新自由主義経済とともに現代の世界を席巻しているのですが、著者は「なんて浅薄で奥行きを欠いた人間理解」と痛烈に批判しています。

20世紀は、古代から続いていた金儲けと道徳の関係を真剣に問うことがなくなった時代で、経済が成長することが繁栄と平和をもたらすと素朴に信じられた時代でした。しかし先送りされてきた問題が、21世紀になって一気に噴出してきたのです。肥大化した貪欲は資源を食い潰して暴利をむさぼり、環境に深刻な影響を与え、地球上にいる多くの他者を犠牲にしているのです。「富裕と奢侈は世界を腐らせてしまった」と著者は嘆きます。

ホモ・エコノミクスという人間像が農業分野に適用されたのが「緑の革命」です。これは、途上国の慣習的(伝統的)農業を、高収量品種、化学肥料や農薬の使用など「近代的」なものに総取っ替えしようとしたものでしたが、在来種が有していた周囲の環境との多様で複雑なつながりなど、大切なものを喪失させてしまいました。これらは金銭的に評価できず、市場では取引できないものです。また、先進国の援助を介して途上国の資金が先進国のバイオ企業等に還流し、寡占化が進み、貧富の差が拡大したメカニズムについても言及されています。

著者は、ホモ・エコノミクスは根本的な誤った価値観と結びついているのではないか、21世紀に人はホモ・エコノミクスであってはならないのではないかと問いかけています。そして、経済学の自己抑制と社会的な価値観の転換が同時に起こらない限り、人類は存在できないのではないかと警鐘を鳴らしています。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.325、2025年9月22日(土)[和暦 葉月朔日]
  https://food-mileage.jp/2025/09/29/letter-325/
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