◇フード・マイレージ資料室 通信 No.325◇
2025年9月22日(月)[和暦 葉月朔日]
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◆ F.M.豆知識 農業経営体の経営収支の現状
◆ O.カレント 過去最高となった米の相対取引価格
◆ ほんのさわり 重田園江『ホモ・エコノミクス』
◆ 情報ひろば 「食と農の未来フォーラム」開催中です。
ブログ更新、イベント情報等
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今日は葉月朔日(八朔)。各地では豊作を祈願する祭りが行われますが、年々、気候変動が大きくなっていることが気がかりです。変動激化の要因のひとつは、人類(ホモ・エコノミクス)の経済活動にあるともされています。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-農業経営体の経営収支の現状-
【ポイント】
米など農産物価格は上昇しているものの、農家等の経営収支は厳しい状況にあります。

米、野菜、鶏卵などの農産物価格が上昇(農産物価格総合指数は2022年から23年にかけて6.4ポイント上昇)していますが、農家など農業経営体の経営収支はどのような状況にあるでしょうか。
リンク先の図325は、農業経営体の農業粗収益、農業経営費及び所得(粗収益-経営費)の状況を経営タイプごとに示したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2025/09/325_shusi.pdf
これによると、全農業経営の平均の粗収益は1,248万円となっていますが、経営費(1,134万円)を差し引いた農業所得は114万円にとどまっています。法人化していない農家など個別経営体についてみると所得は115万円となっており、特に水田作経営の所得は5万円に過ぎません。
これは自家用の飯米生産を中心とした小規模農家などすべてを含む平均ですが、担い手と呼ばれる主業経営体(農業所得が主で、自営農業に60日以上従事している65歳未満の者がいる経営体)であっても、所得は270万円にとどまっているのです。
主業経営体(水田作経営)の農業従事者数は5.4人で、うち家族は 2.7人です(雇用者の賃金は経営費に含まれます)。つまり、家族3人近くが従事して所得は300万円に届かないというのが、日本の稲作の担い手の実情です。
なお、法人経営体の所得は個別経営体に比べて低い水準となっていますが、これは家族経営であっても、法人化して経営主や家族が役員となっている場合は、その報酬等は経営費に含まれているためです。
[データの出典]
農林水産省「営農類型別農業経営統計」から作成。
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noukei/einou/index.html
注:主業経営体とは、個人経営体のうち、農業所得が主で、自営農業に60日以上従事している65歳未満の者がいる経営体をいう。
◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-過去最高値となった米の相対取引価格-
【ポイント】
2024年産米の相対取引価格は過去最高値となりましたが、今後、「適正な価格」で推移していくことが期待されます。

去る9月19日に農林水産省が公表した2024年産米の8月の相対取引価格(JA等の集荷業者が卸売業者に販売する価格)は、玄米60kg当たり2万7,179円と前月を1%上回りました。ここ2か月は備蓄米の放出等から値下がりしていたのが、3か月ぶりに上昇に転じました。
また、2024年産米の年間(前年9月~8月)平均価格は2万4,825円となり、前年産比を62%上回り、比較可能な1990年以降で過去最高となっています。
8月は端境期に当たり、米の作況が気になるところですが、本年産米の相対取引価格も高い水準でスタートすることが予想される一方、米の輸入量が増加しているところであり、今後の米価格が、生産者、消費者双方にとって「適正」な水準で推移することを期待したいと思います。
[参考]
農林水産省「令和6年産米の相対取引価格・数量について(令和7年8月)」
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/kikaku/250919_1.html
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
-重田園江『ホモ・エコノミクス-「利己的人間」の思想史』 (2022.3、ちくま新書)-
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480074645/
【ポイント】
著者は、21世紀に人はホモ・エコノミクス(合理的経済人)であってはならないのではないかと問いかけています。

著者は1968年兵庫・西宮市生まれの明治大学政治経済学部教授。現代思想・政治思想史が専門です。
ホモ・エコノミクスとは、自分の経済的な利益や儲けを第一に考えて行動する「合理的経済人」のこと。この人間観が新自由主義経済とともに現代の世界を席巻しているのですが、著者は「なんて浅薄で奥行きを欠いた人間理解」と痛烈に批判しています。
20世紀は、古代から続いていた金儲けと道徳の関係を真剣に問うことがなくなった時代で、経済が成長することが繁栄と平和をもたらすと素朴に信じられた時代でした。しかし先送りされてきた問題が、21世紀になって一気に噴出してきたのです。肥大化した貪欲は資源を食い潰して暴利をむさぼり、環境に深刻な影響を与え、地球上にいる多くの他者を犠牲にしているのです。「富裕と奢侈は世界を腐らせてしまった」と著者は嘆きます。
ホモ・エコノミクスという人間像が農業分野に適用されたのが「緑の革命」です。これは、途上国の慣習的(伝統的)農業を、高収量品種、化学肥料や農薬の使用など「近代的」なものに総取っ替えしようとしたものでしたが、在来種が有していた周囲の環境との多様で複雑なつながりなど、大切なものを喪失させてしまいました。これらは金銭的に評価できず、市場では取引できないものです。また、先進国の援助を介して途上国の資金が先進国のバイオ企業等に還流し、寡占化が進み、貧富の差が拡大したメカニズムについても言及されています。
著者は、ホモ・エコノミクスは根本的な誤った価値観と結びついているのではないか、21世紀に人はホモ・エコノミクスであってはならないのではないかと問いかけています。そして、経済学の自己抑制と社会的な価値観の転換が同時に起こらない限り、人類は存在できないのではないかと警鐘を鳴らしています。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼「食と農の未来フォーラム」、開催中です。
食と農を取り巻く深刻な問題の多くは「食と農の間の距離」が離れてしまっていることに起因しています。都会の一般市民(消費者)の皆さんを主な対象として、食と農の現場の課題を身近に感じ、自主的な行動変容につなげて頂くことを期待して開催する本フォーラム、これまで大友 治さん(本木・早稲谷 堰と里山を守る会、福島・喜多方市山都)、鈴木純子さん(ふくしまオーガニックコットンプロジェクト、いわき市)、榊田みどりさん(農業ジャーナリスト)をゲストにお迎えしてオンライン開催してきました。
(フォーラムの趣旨、これまでの開催概要等)
https://food-mileage.jp/2025/09/27/250922_forum/

今後も月1回程度、現場の食や農の現状に精通したゲストにお迎えして開催していくこととしています。また、リアルでの開催(見学会、料理教室等)も企画しています。
次回(10月中下旬を予定)の内容が決まれば拙ウェブサイト、SNS等で告知させて頂きますので、多くの方のご参加をお待ちしています。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 農あるまちづくり講座のフォローアップ講座など[9/11]
https://food-mileage.jp/2025/09/11/blog-599/
〇 自らを自然から隔離する私たち[9/15]
https://food-mileage.jp/2025/09/15/blog-600/
(祝600号!)
〇 CCC、紙芝居『わたしの命の物語』[9/16]
https://food-mileage.jp/2025/09/16/blog-601/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇 9月定例会・勉強会
日時:9月27日(土)19:00~
場所:東村山市立社会福祉センター
主催:全生園の明日をともに考える市民の会
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1023541959822613/
〇 今夜はご機嫌 銀座で農業 9月
日時:9月30日(火)18:30~20:00
場所:中央区立環境情報センター(東京・京橋)
主催:今夜はご機嫌 銀座で農業
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1282783726280578/
〇 ふくしまオーガニックコットンボランティアツアー2025【収穫編】
日時:10月5日(日)7時15分東京駅集合
場所:福島・いわき市
主催:リボーン(エコツーリズム・ネットワーク)
(詳細、問合せ等↓)
https://reborn-japan.com/domestic/14888
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「内紛と足の引っ張り合いばかり。いよいよ党としての存在意義は失われた感じだね」
「総裁(葬祭)選だしね」
個人のフェイスブックで週3日お披露目中。「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.326は10月6日(月)[和暦 葉月十五日、芋名月]に配信予定です。
正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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