2025年11月25日(火)は、東京・十条にある「ビサン」へ。
2011年1月にオープンした、パレスチナ出身のオーナーシェフが現地から取り寄せた食材やスパイスを使った本格的なパレスチナ料理が頂けるお店です。

食と農の距離を縮めることを目的に、本年7月からオンライン開催してきた「食と農の未来フォーラム」ですが、今回は初めてのリアル(対面)での開催です。
ゲストは写真家の高橋美香さん、テーマは「パレスチナの家族の今」。
飽食・日本に暮らす私たちにとってパレスチナ問題は遠いところにあるように感じられますが、美香さんが何度も「居候」して取材された「家族」の皆さまが、今、どのような日々を過ごされているのか等についてお話を頂き、本場のパレスチナ料理を頂きつながら質疑応答・意見交換等を行うことで、自分たちに何ができるかを考えようという趣旨です。
A4両面1枚の資料を配布させて頂きました。
略年表を作成したのですが、3大陸の結節点にあるこの地域が、これまで、いかに多くの大国の思惑や身勝手な振る舞いに左右されてきたことがを痛感しました。

この日の参加者は15名と満席。
以前にも美香さんの話を聞いたことのある方、自らパレスチナ支援のイベントを主催されている方など、パレスチナに思いのある方ばかりです。名古屋から来て下さった大学教員の方も。
前半は高橋美香さんからのお話です。
美香さんは広島県府中市生まれ。世界の国々を歩き、その地に生きる人びとの「いとなみ」をテーマに撮影、作品を発表されている写真家の方です。第29回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞を受賞した『パレスチナに生きるふたり-ママとマハ』(2023年1月、かもがわ出版)など、パレスチナ関係の著作も多数出されています。
美香さんは何度も渡航したパレスチナでご自身が撮影された写真を映写しつつ、現地で親しく交流のあった(居候させて頂いていたそうです。)家族を例に、現在、パレスチナの人々が置かれている状況について、以下のように話して下さいました(文責・中田)。

一家は、ヨルダン川西岸地区の北部にあるジェニン難民キャンプで暮らしていました。
戦火の下にあっても、人形劇を観て大笑いする子どもたちの姿や、一家の兄弟たちが、がれきになった場所を片付けてオリーヴの木を植えている様子も。
一方、兄弟の親しい友人の一人は抵抗運動に参加して射殺されるなど、悲しい出来事も紹介されました。

昨年12月以降ジェニン難民キャンプは包囲され、電気や水道は止められていました。3~4日毎にイスラエル軍や自治政府の治安部隊による攻撃があるそうで、ヘリやドローンが飛び交い、隣の家も攻撃されて6人の若者たちが死亡したとのこと。朝になって外に出てみると、重機によって街が破壊されていた、といったような状況にあったそうです。
さらに今年1月21日以降はイスラエル軍による攻撃が激化し、ほとんどの住民が避難せざるを得なくなったそうです。目標はテロリストと言いながら、多くの一般市民が巻き添えになって犠牲になっているとのこと。
一家も攻撃の激化によりキャンプから離れざるを得なくなりました。住民は誰も家に戻れずに10か月以上が過ぎているそうです。
美香さんは現地で「残されているオリーヴの木も泣いている」「世界の人々はパレスチナの様子をテレビで観ているだけで、何もしようとはしない」といった声を聞いたそうです。
口調は穏やかながら、美香さんの胸中は、いらだち、怒り、悔しさ、虚無感、情けなさといった感情に満たされている様子です。

後半は食事を頂きながらの意見交換、交流です。
オーナーシェフのマンスール・スドゥキさんが、次々と料理を出して下さいます。重たい話に沈んでいた心がパッと明るくなり、歓声さえ上がりました。
日替わりのスープ。オリーブと野菜がたっぷり入ったサラダ。ホンムス(ひよこ豆)、ムタッバラ(ナスとにんにく)などペーストの盛り合わせ。ピタパンにつけたり挟んだりして頂きます。
ナス、ブドウの葉でお米などを包んだ、手の込んだお料理も。

最後に、大皿の炊き込みご飯(カブサ)を出して下さいました。骨付きのマトン肉がゴロゴロと乗せられています。すごいボリュームですがお肉は柔らかくて骨離れも良く、美味しく頂きました。1日かけて煮込んで下さったそうです。
食後の苦いアラブコーヒーも美味でした。
お料理は母親から受け継いだ家庭のもので、特に日本人向けに手を加えたりはしていないとのこと。みんなお腹が一杯になって食べ切れなかったのですが、持ち帰り用の容器と袋を配って下さいました。

参加者からはスドゥキさんへの質問も。
東イスラエル出身、11人兄弟の7人目とのこと。郷里にはご家族や親類もおられるそうですが、しばらく戻れていないそうです。日本が大好きだとも言って下さいました。
冗談交じりで明るく話されるスドゥキさんですが、悲しくつらい体験もされているそうです。日本のメディアは本当のことを伝えていない、とも話されていました。
この日、美香さんは何冊かの著作を持ってきて下さっていて、求められた方には美香さんはサインされていました。
また、今月末には新刊『シロくんとパレスチナの猫』(かもがわ出版)が出版されるそうです。日本でともに暮らしている猫(シロくん)をストーリーテラーに、パレスチナの難民キャンプで出会った猫たちの姿を通して、パレスチナの人たちが置かれ続けている占領の現実を伝える写真絵本とのこと。
早速、かもがわ書店のサイトで予約させて頂きました。

当日夜、参加者の皆様にお礼のメッセージをお送りしたところ、次のような様々な感想などを返信頂きました。
頭もおなかも大満足。リアルな会は刺激があって良いですね。
オーナーの方の話を直接聞けたことも、とても良かった。
パレスチナ問題についての理解が進み、お料理も美味しかった。
話を伺って改めて複雑な想いになった。さらに理解を深めていきたい。
政治と教育の重要性を再認識させられ、担当している講義のヒントをたくさん頂いた。
美香さんのお話は心にどすんと来たし、皆さんの熱心な様子からも刺激を頂いた。一人の行動を無力と思わず、一人から輪が広がるその力も信じて、微力でも行動し続けていきたい。
美香さんからのメールには、
「すぐに何かを変えられるわけでもないし、きっと生きているあいだに、良い結果が得られるわけではないだろうけど、それでもやるべきことはやる、可能な限り、と思います」との決意が述べられていました。
高橋美香さん、マンスール・スドゥキさん、参加者の皆様。お陰様で充実した会になったと自負しています。どうも有難うございました。
(ご参考)
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