【ほんのさわり329】渡邉雅子『共感の論理』

-渡邉雅子『共感の論理-日本から始まる教育革命』 (2025.9、岩波新書) -
https://www.iwanami.co.jp/book/b10144356.html

【ポイント】
 世界的に様々な深刻な問題が顕在化するなか、日本が育み広く継承されてきた価値観(共感的利他主義)がこれらを克服する鍵となるとしています。

著者は、知識社会学、比較教育等を専門とする名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授。
 現在、格差の拡大、社会の分断、戦争・紛争の頻発、気候変動、生態系の破壊等の深刻な問題が地球規模で顕在化しています。著者によると、これは経済一辺倒の価値観が行き詰まっていることを示しているもので、新しい価値観への転換と、それに即した社会の構築(パラダイムシフト)が迫られているとしています。
 そして、これらの矛盾を克服する鍵となるのが、これまで日本が育み広く継承されてきた価値観(共感的利他主義)であるとしているのです。

日本の価値観とは、自然を収奪・搾取の対象と捉える個人主義・利己主義的な近代西洋の価値観(これまで資本主義と経済成長を支えてきた価値観)とは異なり、人間も自然の一部と捉え、勤勉と倹約に加えて「正直」(私欲のなさ、人々との信頼の構築)を行動規範とするもので、今後の世界のモデル(基準・規範)となる可能性が大きいとしています。

また、世界的に科学の分野で要素還元主義からの脱却(複雑性等)が進んでいること、共同体の必要性が再認識されつつあること、日本の感想文教育は利他を意識するなど道徳的倫理的な意識を育てる面で優れていること等についても指摘されています。

以上のように本書は教育についての提言書ですが、教育関係者のみならず、今後の経済社会、さらには食や農のあり方について考える人にとっても多くの示唆に富んでいます。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.329、2025年11月20日(木)[和暦 神無月朔日]
  https://food-mileage.jp/2025/09/17/letter-324/
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