2025年12月8日(月)10時から、新宿 K’s cinemaでドキュメンタリ『村で生きる』を鑑賞しました。
東京ドキュメンタリー映画祭2025での上映です。

熊本・産山(うぶやま)村であか牛を中心に生産している井 信行さん、雅信さん親子の姿を描いた長編ドキュメンタリ。雄大な阿蘇の景観、野焼きの様子、放牧されて草を食む牛たち、厳しいながらも充実感もありそうな畜産農家の日々の労働の様子等が、淡々と描かれます。
井 信行さん(撮影時は86歳)は、笑顔で「牛は草資源で育てるのが本来の姿」と語ります。「自信と誇りをもって、楽しんで畜産をやっている」とも。一方で販売(消費者と結びつくこと)の難しさに直面していること、畜産農家が減少していること等も紹介されます。
私事ながら、20年近く前の熊本在勤・在住中には信行さんには公私にわたって大変お世話になりました。映画にも出てくる御湯船温泉につかり(熱かったな~)、「山小屋」でバーベキューを頂いたことなどが懐かしく思い出されました。
上映後は、小林瞬、中村朱里 両監督による舞台挨拶がありました。
約1か月にわたって井さん宅に泊まり込んで撮影したという両監督。雨や土のにおいがある農家の暮らしの日々、牧野を駆ける凛とした牛の姿、温泉に入った時に見た信行さんの筋骨隆々とした背中など、それぞれ印象に残ったことを紹介して下さいました。
また、2日ほど前に信行さんに電話連絡を入れられた時の様子も紹介して下さいました(11月25日(月)には産山村で震度5強の地震が発生)。
今は90歳になられましたが、「村の記録を残してくれて感謝している」等と話しておられたそうで、お元気な様子を伺い私も安心しました。
最後には、実施中のクラウドファンディング「『村で生きる』を多くの人へ届けたい」の紹介も(私も些少ながら協力させて頂きました)。
ぜひ多くの人に(特に都会の消費者の方々に)観てもらいたい、素晴らしいドキュメンタリです。

その後は、有楽町の東京国際フォーラムに立ち寄り。農家支援のキッチンカー「eat for」の前に、Iさんの姿がありました。
これまで「食べることが、社会貢献に」という想いで、様々な食に関連する活動に取り組んでこられた方。キッチンカーはほぼ6年間にわたって続けてこられました。難民支援の募金箱等も置かれています。
新しい人生の門出に際して、いったんキッチンカーは閉店するとのこと。お疲れ様でした。近い将来、どのような新しいことにチャレンジを始められるかを注目しています。

続いて、本年9月にオープンした高輪ゲートウェイシティへ。いつの間にか、空を衝く2棟の高層ビルができています(さらにもう1棟が建設中)。
お目当ては、地上150mという最上階に設けられた「LUFTBAUM」(空中庭園)。日本各地の500本以上の植物が配置され、30台以上のスピーカーによる立体音響によって「自然の可能性を極限まで引き出」している空間とのこと。オープン時には新聞等でも取り上げられていました。
専用エレベータで28階へ。平日の午後ながら多くの人で賑わっています。しかし正直、私には期待外れというか・・・。
所詮は「人工的な自然ごっこ」の空間に過ぎず、自然の風もにおいも感じられません。快適でおしゃれで清潔で、もちろん害虫などはおらず、おそらく都会の消費者が求めている「自然」とは、このようなものなのでしょう。

足元に広がる東京の景観を見下ろしても、アスファルトとコンクリートばかり。
目がくらんだのは高所恐怖症のせいだけではなく、先ほど観た映画の産山村の光景との、あまりの落差に愕然としたためです。
以前にも書きましたが、霊長類学舎の河合雅雄は35年前の本で「現代の子どもたちは森などから駆逐されて家の中に閉じ込められ、あたかも家畜のように精神を衰弱させられている」と警鐘を鳴らし、「永遠のいのちの相にふれること」の大切さを強調しています。
私たちは、自らをどんどん自然から隔離することで、「自らの手で墓穴を掘」っているのかも知れません。

ところで、この大規模再開発事業の事業費は約6000億円とのこと。
比較しても意味のないことながら、ちなみに産山村の予算額(2023年度歳出額)は約23億円。産山村における肉用牛飼養頭数は1584頭(2020年)で、仮に事業費を肉用牛の直接支払いに充てれば1頭当たり3.8億円(!)。
都心で大規模開発が進む一方で、地方、特に中山間地では人口も農家も減少、災害からの復旧もままならない状況・・・って、果たして健全な(持続可能な)国の姿と言えるのでしょうか。
夕方まで時間があったので、徒歩10分ほどのところにある泉岳寺へ。
赤穂浪士討入りの日も近く、墓所は線香の煙に包まれています。一人、熱心に祈る若い男性の姿も。私も入口で線香を求め、50基ほどある墓石に数本ずつ捧げさせて頂きました。その姿も高層ビルから見下ろされていたことでしょう。
続いて板橋駅近くにある近藤勇の墓へ。100名以上の新選組隊士とともに供養されています。まだ17時前でしたが、すっかり日が落ちていました。
そのまま30分ほど歩いて十条のパレスチナ料理店・Bisanへ。先月25日のフォーラム(写真家・高橋美香さんのお話会)以来です。
この日は、月1回開催している銀座での勉強会のメンバーを中心とした忘年会。この日もオーナーシェフ・スドゥキさんの心づくしの手料理を堪能させて頂きました。ご馳走様でした。

なお、翌12月9日(火)の夜は、大阪で開催された高橋さんと佐藤彗さん(フォトジャーナリスト)によるトークイベントをオンライン視聴。『パレスチナの猫』写真展の関連企画とのこと。
高橋さんからのパレスチナの話に加えて、佐藤さんからはシリアやウクライナの話も。世界には私たちと同じ「普通の市民」が戦争の惨禍に見舞われている現実があることに、またも声を失うしかなかった次第。
(ご参考)
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