◇フード・マイレージ資料室 通信 No.330◇
2025年12月4日(木)[和暦 神無月十五日]
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◆ F.M.豆知識 減少のペースを早める農業の担い手数
◆ O.カレント 農林業センサス
◆ ほんのさわり 高橋美香『シロくんとパレスチナの猫』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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気が付くとカレンダーは12月。和暦ではまだ神無月と自らを慰めようとする季節が、今年も訪れました。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-減少のペースを早める農業の担い手数-
【ポイント】
農業の担い手(基幹的農業従事者)の数は、経済の高度成長期さえ上回る過去最大の減少率を示しています。

去る11月28日(金)、農林水産省が公表した2025年農林業センサス結果(概数値)により、いくつかの特徴的な動向が明らかとなりました。
リンク先の図330は、農業の担い手(基幹的農業従事者)数の長期的な推移を概観したものです。なお、基幹的農業従事者とは「自営農業を主な仕事としている世帯員」のことで、農家における「農業の担い手」に相当します。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2025/12/330_census.pdf
これによると、1960年には1175万人いた基幹的農業者は、経済の高度成長、産業構造の転換、農村部から都市部への人口移動等を背景に、1990年には293万人と実に4分の1にまで大きく減少しました。その後、2010年までは比較的減少のペースは鈍化したものの、2020年以降、再び減少のスピードが早まっており、2025年には102万人となっています(なお、この間に定義が変更されており、厳密には数値は連続しないことに留意が必要です)。
今回明らかになった2020年から25年までの減少率(△25.1%、年率換算で△5.6%)については、経済の高度成長期さえ上回り、過去最大の数値となっています。また、高齢化の進行も顕著であり、日本農業の担い手の現状がさらに厳しいものとなっていることが伺えます。
一方で法人経営体が7.9%増加していること、20ha以上の大規模経営体の面積シェアが初めて5割を超えたこと等も、今回のセンサスで明らかになっています。
[データの出典]
農林水産省「農林業センサス」累年統計表等から作成。
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noucen/index.html
◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-農林業センサス-
【ポイント】
国の統計のなかでも特に重要な基幹統計である農林業センサスは、全数調査であることから、他の標本調査の母集団情報としても利用され、詳細な地域毎のデータも公表されます。

農林業センサスは統計法に基づく基幹統計調査(特に重要な統計調査)であり、国際連合食糧農業機関(FAO)の提唱する世界農林業センサスの趣旨にも従って、1950年から5年ごとに実施されています。
農林業センサスは農林業経営体調査と農山村地域調査の2本立てとなっており、いずれも全数調査(全農業経営体、全市区町村)というところが大きな特徴で、標本調査として実施される各種統計調査(経営、作物等)の母集団情報としても利用されます。
農林業センサスの調査事項や定義については、調査のたびに研究会を開催し、総務省の承認を得て見直しが行われており、今回も農林業の労働力に関する事項等について変更が行われています。これは、農林業をめぐる情勢や利用者のニーズ、報告者負担など調査環境等を踏まえて行われているものですが、結果として長期的にはデータが連続しなくなるというデメリットも生じることとなります。
また、先に述べたように全数調査であることから、今後、都道府県ごとの報告書が作成され、一般的な標本調査では公表できない詳細な地域(旧市町村単位)毎のデータが公表される予定です。地域における農林業のビジョン作成等に活用されることが期待されます。
[参考]
農林水産省HP「農林業センサスの概要」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noucen/gaiyou/index.html#1
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
-高橋美香『シロくんとパレスチナの猫』 (2025.12、かもがわ出版) -
https://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/sa/1403.html
【ポイント】
著者がともに暮らしている元ノラ猫のシロくんを語り手に、パレスチナの難民キャンプ等で出会った猫たちの姿を通して、パレスチナの人たちが置かれ続けている不条理な現実が描かれています。

文及び写真は、広島・府中市出身の写真家・高橋美香さん。
世界の国々を歩き、その地に生きる人々の「いとなみ」をテーマに撮影、作品を発表されている方。特にパレスチナには何度も「居候」して家族の方々の様子を取材、撮影を続けてこられています。去る11月25日(月)、東京・十条のパレスチナ料理店で開催した第6回食と農の未来フォーラムにはゲストとしてお迎えし、直接、お話を伺うことができました(ブログ参照)。
この写真絵本の語り手は、著者が保護し、ともに暮らしている元ノラ猫のシロくん。パレスチナの難民キャンプ等で「アイツ」(シロくんは著者のことをこう呼びます)が出会った猫たちの姿を通して、パレスチナの人たちが置かれ続けている不条理な占領の現実が描かれています。
2023年頃から著者の「家族」が住むジェニン難民キャンプ(ヨルダン川西岸地区)へのイスラエル軍の侵攻が激化し、仲が良かった息子たちの一人が殺害された時には「アイツ」は表情を無くし、泣いてばかりだったとのこと。
お墓詣りのためにキャンプを訪ねた「アイツ」を待っていたのは、一晩中続く銃撃音や、電柱や上下水道管を破壊する軍用ブルドーザーの轟音でした。
パレスチナを去る日には、友だちの一人がバーベキューをご馳走してくれます。匂いにつられて集まってきた猫たちのあどけない姿には、状況が状況だけに心打たれざるを得ません。
著者の胸中を満たしている悔しさや怒り、虚無感等は、恐らくシロくんを語り手にしないと表現できなかったものと思われます。
ともすれば、あまりの事態の深刻さを前に、私たちは立ちすくんでしまいます。
しかし著者は、「何かを変えることはできないかも知れないけれど、可能な限りやるべきことはやる」との決意のもと、これからもパレスチナ等の取材を続けていかれるそうです。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 中欧3か国を訪問してきました。[11/24]
https://food-mileage.jp/2025/11/24/blog-609/
〇 高橋美香さん「パレスチナの家族の今」(第6回 食と農の未来フォーラム)[11/28]
https://food-mileage.jp/2025/11/28/blog-610/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇 『村で生きる』上映
日時:12月8日(月)10:00~、12月14日(日)14:10~
場所:新宿ケイズシネマ(東京・新宿区)
主催:東京ドキュメンタリー映画祭
(詳細、問合せ等↓)
https://tdff-neoneo.com/lineup/lineup-6000/
〇 映画『新・あつい壁』上映会(菊池事件)
日時:12月13日(土)13:00~15:45
場所:国立ハンセン病資料館(東京・東村山市)
主催:国立ハンセン病資料館
(詳細、問合せ等↓)
https://www.nhdm.jp/events/list/8514/
〇 セミナー「地球温暖化と我々の未来」
ゲスト:江守正多さん(東京大学未来ビジョン研究センター)
日時:12月20日(土)14:00~
場所:オンライン
主催:持続可能な森林経営のための勉強部屋
(詳細、問合せ等↓)
https://jsfmf.net/konosaito/zoommt25-4th/zoommt25-4th.html
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「行事などは時間厳守だったらしいね」
「そうなんですか」
「帝国(定刻)だけに」
600年以上続いたハプスブルク帝国は、武力や強権にはよらず、婚姻政策等を通じて超民族的な共同体を形成していたそうです。
コツコツ小咄は個人のフェイスブックで週3日お披露目中。月ごとの「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.331は12月20日(土)[和暦 神無月十五日]に配信予定です。
正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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