【ほんのさわり】徳田靖之『菊池事件』

-徳田靖之『菊池事件-ハンセン病差別の壁をこえるために』 (2025.5、かもがわ出版) -
https://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ka/1374.html

【ポイント】
 ハンセン病患者が証拠不十分なまま逮捕され死刑が執行された60年以上前の事件について、現在、再審請求が行われており、今月中に熊本地裁において判断が下されます。

1951年8月、菊池郡内にある村役場(当時)の職員の自宅でダイナマイトが爆発し、翌年には刃物で刺殺された当該職員の遺体が発見されます。警察は、いずれの事件も、自分をハンセン病患者であるとして県に報告した当該職員に恨みを持った農業・Fさんによる犯行であるとして、逮捕・収監します。当時は国及び県、さらに地域ぐるみによる「無らい県運動」(ハンセン病患者を強制的に療養施設に収容・隔離する運動)が強力に推進されていたことが背景にあります。
 Fさんは一貫して無実を主張したものの、療養所内に設けられた「特別法廷」における裁判を経て死刑判決を受けます。さらにFさんは控訴・上告、再審請求を続けたものの、3度目の再審請求の申立てが棄却された翌日の1962年9月14日、死刑が執行されました。Fさんは40歳でした。

再審は認められなかったものの、裁判の過程で、特別法廷(隔離法廷)は憲法違反であると判断されるとともに、凶器とされる証拠品や供述にも大きな疑義(捏造や誘導)があることも明らかとなりました。
 これらを踏まえて、事件から60年以上を経た現在、改めて遺族等により行われた再審請求が熊本地裁で審理されており、今月(2026年1月)中に判断が下されることとなっています。
 本件の特徴は、既に死刑が執行されていることです。死刑判決が確定した後に再審無罪となったケースはこれまで免田事件、袴田事件など5件ありますが、いずれも死刑が執行される前に再審が開始されたものです。

著者は1944年大分・別府市生まれの弁護士で、菊池事件再審弁護団の共同代表。ハンセン病問題に取り組むようになったのは「自らの余りに長きにわたる不作為の責めを償う」ためであったとのこと。そして、現在もハンセン病に対する偏見と差別が残るなか、少しでも多くの人に菊池事件のことを知ってもらい、何としても再審開始を実現したいと訴えています。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.332、2026年1月4日(土)[和暦 霜月十五日]
  https://food-mileage.jp/2026/01/15/letter-332/
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