◇フード・マイレージ資料室 通信 No.333◇
2026年1月19日(月)[和暦 師走朔日]
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◆ F.M.豆知識 電源構成別にみた発電量の推移と見通し
◆ O.カレント 原発再稼働の現時点
◆ ほんのさわり 川内有緒『ロッコク・キッチン』
◆ 情報ひろば 第7回 食と農の未来フォーラムの開催について
ブログ更新、イベント情報等
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北日本や日本海側は大荒れになる一方、太平洋側は乾燥が続き各地では山火事も。お見舞い申し上げます。ちなみに師走の語源を「忙しくて先生まで走る月」とするのは俗説のようで、四時(四季等)が果てる「しはつる」月との意のようです。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-電源構成別にみた発電量の推移と見通し-
【ポイント】
原発事故後は減少傾向で推移してきた日本の発電量は、今後、生成AIの普及等により大きく増加すると見込まれており、原発の最大限活動もうたわれています。

日本の電力消費量は、戦後、経済の高度成長、快適な生活へのニーズ等の高まりから、2010年頃まで一貫して伸びてきました。
リンク先の図333は、日本の発電量の長期的推移と見通しを電源構成別にみたものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2026/01/333_dengen.pdf
発電量(棒グラフ)をみると、2011年3月の東京電力・福島第一原子力発電所の事故後、事業所や家庭における節電の取組みもあって減少傾向で推移しており、2024年には2010年に比べて14%減少しました。
ところが、昨(2025)年2月に改訂された国の「エネルギー基本計画」においては、2040年度の発電電力量については23年度の9,854億kWh(速報値)から1.1~1.2兆kWhへと、12~22%と大きく増加に転じると見通されています。また、その理由として、今後の経済成長につながるデータセンターや半導体工場の新増設が見込まれることがあげられています。
基本計画では、この見通しを受け、脱炭素の必要性も強調しつつ、再生可能エネルギー及び原子力を「最大限活用」することがうたわれています。
折れ線グラフは火力、原子力及び再生可能エネルギーの構成割合を示しています。
原発事故後、ほぼゼロとなっていた原子力発電のシェアは、近年は1割弱まで回復しており、さらに基本計画では2040年には約2割まで上昇させることとしています。(再生可能エネルギーは約23%から4~5割に上昇)。
生成AIの出現によって世界のエネルギー事情は大きく変化し、アメリカでも巨大IT企業による原子力発電の活用が進みつつあります。生成AIは(フェイクなど負の側面を含め)広く利用されているようになっているとはいえ、果たして原子力発電を「最大限活用」することのリスクの大きさに見合うものでしょうか。さらなる節電に取り組むことも重要ではないでしょうか。
ちなみに、原発事故後に内閣総理大臣が発出した「原子力緊急事態宣言」は今も解除されておらず、2万人以上が避難を強いられており、帰還困難区域における野菜等の摂取・出荷制限も継続されています。
[データの出典]
経済産業省資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」「エネルギー動向(2025年6月版)」から作成。
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/results.html#headline7
https://www.enecho.meti.go.jp/about/energytrends/202506/html/s-1-4.html
[参考]
経済産業省プレスリリース(第7次エネルギー基本計画の閣議決定)
https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001.html
◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-原発再稼働の現時点-
【ポイント】
原発の再稼働が進んでいますが、審査の過程では多くの不祥事や不備が明らかとなっており、明日、予定していた柏崎刈羽6号機の再稼働も延期されることとなりました。

2011年の東京電力・福島第一原発の事故後、日本のすべての原発は運転を停止しました。その後、2013年に原子力規制委員会が策定した新たな規制基準に基づいて安全対策が強化され、この基準に合致していると認められた原発については、順次、再稼働が進められています。
現在(2026年1月現在)、原子力規制委員会の許可を得て運転が行われている原発は、全国で7発電所、13基となっています。
東京電力・柏崎刈羽原発6号機については、明日(2026年1月20日)起動され27日から発送電が開始される予定となっていました。事故を起こした福島第一原発と同じ沸騰水型の原子炉の再稼働は女川原発2号機(現在、定期点検中)に続く2例目であり、事故を起こした当事者である東京電力の原発の再稼働は初のケースです。
柏崎刈羽原発の安全審査の過程では、運転員による他者のIDカードの不正使用、東電社員によるテロ対策のための機密情報の持ち出し等の不祥事が相次いで明らかとなり、しかも再稼働直前の一昨日にも警報の不具合が見つかり明日の起動は見送られることとなりました。他に避難計画の不備等も指摘されています。
さらに、中部電力による耐震設計の基準となるデータの改ざんは「安全規制に対する暴挙」(原子力規制委員会 山中伸介委員長)と強く非難されているところです。
このような状況の中、国はエネルギー基本計画に定められているように「原発の最大限活用」を推進しているのです。
ちなみに消費者庁「風評に関する消費者意識の実態調査」 によると、原発事故後、放射性物質を理由に「福島県の食品の購入をためらう」とする人の割合は一貫して低下してきたものの、昨(2025)年は6.2%と前年の4.9%から上昇に転じており、いわゆる「風評被害」は払拭されていません。
[参考]
資源エネルギー庁「あらためて知りたい、原発の「再稼働」~なぜ必要なの?ほんとうに安全なの?」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/genshiryoku_saikado.html
原子力規制委員会「原子力発電所の現在の運転状況」
https://www.nra.go.jp/jimusho/unten_jokyo.html
消費者庁「風評に関する消費者意識の実態調査(第18回)」(2025年3月)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms203_250306_01.pdf
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
-川内有緒『ロッコク・キッチン』 (2025.11、講談社) -
https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000418492
【ポイント】
国道6号線沿いに帰還、移住してきた人々への綿密なインタビューによって明らかとなったのは、原発事故被災地のモザイク模様です。

著者は1972年東京生まれ。国際協力分野での勤務を経て現在はフリーのノンフィクション作家。
東京電力・福島第一原発事故から14年。大量の放射性物質に汚染され食の問題で揺れ続けてきた福島・浜通り地方に暮らす人々は、今、何を食べ、どう生きているのか。著者は、それを知るために国道六号線(ロッコク)をたどります。
ぱらぱらとページをめくると美味しそうな料理の写真が多数掲載されており、あたかも旅グルメ本のような体裁です(書店でも料理本のコーナーに置かれていました)。しかし巻頭に置かれた避難指示区域を示す地図は、現在も広い地域が帰還困難とされている現実を示しています。
著者がロッコク沿いで出会ったのは、10年以上の避難から故郷に帰還した方が再開した飲食店(ナポリタン、カツサンド)、インドからの留学生(チャイ)、個人で開設した伝承館のオーナー(餃子)、統合・再開された学校の給食、避難中に夫を看取った中国出身の女性(中華丼)、賑やかな若い移住者の女性たち(ビスク鍋)、東京から移住して復興に取り組んでいる東京電力の元幹部(ざくざく野菜鍋)等々。
著者は取材を通じて「人間とは料理をする生き物。人と人とをつなぎ、人間の暮らしの中心にあるものは食べること」であると実感します。
しかし、著者は執筆中にジレンマを感じていたそうです。
「ポジティブなストーリーを描くことは、今この瞬間にも存在する大きな苦しみや悲しみを見えなくしてしまうのではないか。何を書いても現実とは離れてしまう」と悩みながらも、「私には、ひとつひとつの大切な断片のモザイクを記録することしかできない」と覚悟します。何度か引用されている石牟礼道子の「悶えてなりとも加勢せんば」という言葉が印象的です。
伝承館のオーナーの「ここには100人いたら100人の経験や現実がある」「(東京など)遠くにいる人をいかに引き付けて種を蒔くかが、僕らの仕事」との言葉も紹介されています。実はロッコクは東京・日本橋に通じているのですが、「果たして彼女・彼らの祈りは東京に届くだろうか」と、著者はつぶやきます。
「ロッコク・キッチン」は並行して映画も製作されており、2月中旬に公開される予定とのこと。映像で観られるのも楽しみです。
[参考]
『ロッコク・キッチン』公式サイト
https://www.rokkokukitchen.com/
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 2026年の世界は・・・[1/5]
https://food-mileage.jp/2026/01/05/blog-617/
〇 2026年の始動はヒナタバー、きっかけ食堂から[1/14]
https://food-mileage.jp/2026/01/14/blog-618/
▼ 第7回 食と農の未来フォーラムの開催について(オンライン)
・日時 2026年1月31日(土)午前10時~12時(注:午前中の開催です。)
・テーマ 「限界を迎える限界集落-消えつつある自給自足の農と里山暮らし」
・ゲスト 冨澤太郎さん(やまはた農園、山梨・上野原市西原 )
・開催方式等 オンライン(zoomを利用)
チケットを申し込んで下さった方には、終了後、アーカイブを配信予定。
・参加費 1000円(ゲストの方へのカンパに充てさせていただきます)。
ゲストの冨澤太郎さんは横浜生まれ。東日本大震災後、26歳の時に標高600mの中山間地域である西原(さいはら)地区に移住・新規就農。地元の「師匠」たちに教わりながら野菜や雑穀を栽培し、林業、炭焼き、竹かご作り等にも携わるほか、地元のNPOの運営、消防団活動、祭りの維持・継承、都市住民との交流活動などに幅広く活躍されています。
(参考)
やまはた農園(FBページ)
https://www.facebook.com/yamahatafarm/
やまはた農園の取り組み
https://yamahatafarm.com/farm/
自分たちの食べものを生産する農業・農村の現状、リアルな山里の暮らし等に関心のある多くの方の参加をお待ちしています。以下からお申し込みください。
https://peatix.com/event/4761668/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇 ”Your Next Meal”, Vol.2
日時:1月23日(土) 18:00~21:30
場所:co-ba ebisu(東京・渋谷区恵比寿西)
主催:Feel Good Foods
(詳細、問合せ等↓)
https://checkout.square.site/merchant/ML1JJAFV088TZ/checkout/S4WOC23NA4ODGXQ2O6D56FID
〇 食べながら学ぶ~おいしい料理をいただきながら、食をめぐる深いテーマにふれ、考える講座~レストランで食べる福島産の牛肉
日時:1月24日(土)10:30~13:00
場所:ラ・ピネータTOKYO(東京・世田谷区経堂)
主催:NPO法人 CSまちデザイン
(詳細、問合せ等↓)
https://cs-machi.com/shimokouza14/
〇 2026年1月定例会
日時:1月24日(土)19:00~
場所:東村山市立社会福祉センター(東京・東村山市諏訪町)
主催:全生園の明日をともに考える市民の会
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1191657099286988
〇「菊地事件」再審開始の可否について熊本地裁が判断
日時:1月28日(水)14:00
(参考↓)
https://food-mileage.jp/2026/01/15/hon-332/
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「代議士の皆さん、裏山が火事になっているような気分だろうね」
「えっ、どういうこと?」
「風が気になって眠れないだろうから」
山梨・上野原、大月の山火事は未だ鎮圧できず。お見舞いを申し上げます。一方の解散風は、全くの人災。
コツコツ小咄は個人のフェイスブックで週3日お披露目中。月ごとの「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.334は2月2日(月)[和暦 師走十五日]に配信予定です。
正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見・ご批判、ご要望等をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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