-藤原辰史『生類の思想~体液をめぐって』 (2025.10、かたばみ書房) -
https://katabamishobo.com/archives/book/syoruinoshiso
【ポイント】
この世界は生物から滲み出した体液が共有されることで成り立っており、体液を共有するための一つの行為が「食べること」だそうです。

著者は、1976年北海道に生まれ、島根県で育った京都大学人文科学研究所教授。
農業史、環境史を専攻する著者には「環境という言葉がしっくりこない」そうです。その理由は、もともと環境(Umvelt)という言葉が自分(人間)が中心であることを前提としていることに加えて、「内界」(生物の腸内など)を含んでいないためのようです。さらに、「環境」や「持続可能性」といった言葉を使って「なにかを言った気になって」思考を停止している「知の担い手」を、厳しく糾弾しています。
また、現代社会では、環境から切り離されて接触も感染もない「無菌室」に安住しようとする人々が増えているとも指摘しています。このことが免疫力の低下やアレルギーの多発を招き、他者と接することが苦手な人々を増やしているそうです。
著者によると、この世界は生物から滲み出した体液が共有されることで成り立っているとのこと。そして、体液を共有するための一つの行為が「食べること」だそうです。「食べる」とは「他の生きもの(の体液)を食べる」ことであり、常に陰影と摩擦を伴う行為であるとします。この意味で培養肉については、畜産や屠畜の文化、他者の生命について考える精神性が衰弱することにつながると批判的です。
さらに本書は、サツマイモの歴史、新しい農本主義の展望、学校における家庭科の大切さ、人文学と歴史学の融合の必要性など、極めて多岐にわたる興味深いテーマが取り上げられています。現時点における著者の思想の集大成と言えるエッセイ集です。
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.334、2026年2月2日(月)[和暦 師走十五日]
https://food-mileage.jp/2026/02/11/letter-334/
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