◇フード・マイレージ資料室 通信 No.334◇
2026年2月2日(月)[和暦 師走十五日]
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◆ F.M.豆知識 地方で加速する農地面積の減少
◆ O.カレント 恵方巻と食品ロス
◆ ほんのさわり 藤原辰史『生類の思想~体液をめぐって』
◆ 情報ひろば 第8回 食と農の未来フォーラムの開催について
ブログ更新、イベント情報等
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明日は節分。節分に恵方巻を食べることはあたかも年中行事になったかのようですが、毎年、大量の売れ残り(食品ロス)が発生していることが社会問題化しています。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-地方で加速する農地面積の減少-
【ポイント】
近年、担い手が急激に減少していることが明らかになっていますが、同時に農地面積も減少を続けており、特に地方で減少が加速化しています。

日本の農地面積は1965年の600万4千haから2025年には423万9千haへと、△29.4%と大きく減少しています。リンク先の図334は、日本の農地面積の10年ごとの減少率を地域別にみたものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2026/02/334_nouchi.pdf
農地面積は1965年から75年の10年間にかけて△7.2%と大きく減少しました。地域別にみると三大都市圏で△21.6%と特に大きくなっており、三大都市圏では1975年から85年でも△12.0%と大きく減少しています。
一方、農業生産地帯である北海道では1995年頃までは農地面積は増加しており、東北の減少率も比較的小さなものでした。
ところが1985年頃から地方においても農地の減少率は三大都市圏と肩を並べるようになり、最近(2015年から25にかけての10年間)は、特に西日本(中国、四国、九州)の農地の減少率は三大都市圏を3~4割上回っています。
かつての高度成長期においては、都市を中心に工場や住宅用地として多くの農地が転用されましたが、最近は農業生産地帯である地方における農地面積の減少が顕著となっています。日本農業の構造が大きく変化しつつあることを示唆しています。
[データの出典]
農林水産省「作物統計(面積調査)」から作成。
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/menseki/index.html#l
◆ オーシャン・カレント
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-恵方巻と食品ロス-
【ポイント】
節分に恵方巻を食べることは年中行事化したかのようですが、大量の売れ残り(食品ロス)の発生が社会問題化しています。

節分の日にその年の「恵方」を向いて食べると縁起がいいとされる恵方巻は、江戸時代末期に大阪の商人が商売繁盛を祈願したことが起源とされているようです。それが1970年代以降、大阪の海苔問屋組合やコンビニエンスストア・チェーンによって行われたキャンペーンによって全国に広がり、今や節分に恵方巻を食べることは年中行事となっているかのようです。
同時に毎年、大量の売れ残りが発生していることが社会問題化しており、農水省も事業者に予約販売等の取組みの推進を呼び掛けています。
ジャーナリストの井出留美さんによるコンビニ大手3社を対象とした調査によると、昨(2025)年の1店舗当たり平均売れ残り本数は4~19本、金額では2,700~9,600円となっており、完売した店舗の割合は27~66%にとどまっています。
井出さんはこの調査結果を基に、コンビニ全体で3億円以上の損失が出た可能性があるとし、さらに食品廃棄物を含む一般廃棄物の処理費に年間2兆円以上の税金が投入されていることも指摘しています。
行事食は日本の伝統や季節のめぐりを感じることができる大切な習慣ですが、恵方巻に限らず、商業的に行き過ぎた場合は経済社会、さらに環境にも大きな負担を与えることとなります。
さて、今年の節分、果たして恵方巻のロスは減少するでしょうか。
[参考]
井出留美「2025恵方巻廃棄の損失はコンビニだけで推計3億円超-2019年からの7年間で捨てる量は変わったか」(Yahooニュース)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5e88deb9e95c353ba5a807472b150a2a841b2442
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
-藤原辰史『生類の思想~体液をめぐって』 (2025.10、かたばみ書房) -
https://katabamishobo.com/archives/book/syoruinoshiso
【ポイント】
この世界は生物から滲み出した体液が共有されることで成り立っており、体液を共有するための一つの行為が「食べること」だそうです。

著者は、1976年北海道に生まれ、島根県で育った京都大学人文科学研究所教授。
農業史、環境史を専攻する著者には「環境という言葉がしっくりこない」そうです。その理由は、もともと環境(Umvelt)という言葉が自分(人間)が中心であることを前提としていることに加えて、「内界」(生物の腸内など)を含んでいないためのようです。さらに、「環境」や「持続可能性」といった言葉を使って「なにかを言った気になって」思考を停止している「知の担い手」を、厳しく糾弾しています。
また、現代社会では、環境から切り離されて接触も感染もない「無菌室」に安住しようとする人々が増えているとも指摘しています。このことが免疫力の低下やアレルギーの多発を招き、他者と接することが苦手な人々を増やしているそうです。
著者によると、この世界は生物から滲み出した体液が共有されることで成り立っているとのこと。そして、体液を共有するための一つの行為が「食べること」だそうです。「食べる」とは「他の生きもの(の体液)を食べる」ことであり、常に陰影と摩擦を伴う行為であるとします。この意味で培養肉については、畜産や屠畜の文化、他者の生命について考える精神性が衰弱することにつながると批判的です。
さらに本書は、サツマイモの歴史、新しい農本主義の展望、学校における家庭科の大切さ、人文学と歴史学の融合の必要性など、極めて多岐にわたる興味深いテーマが取り上げられています。現時点における著者の思想の集大成と言えるエッセイ集です。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 京筍から紡ぐ食の未来(第221回 霞ヶ関ばたけ)[1/22]
https://food-mileage.jp/2026/01/22/blog-619/
〇 ”Your Next Meal”, Vol.2(於 東京・恵比寿)[1/26]
https://food-mileage.jp/2026/01/26/blog-620/
〇 2026年の始動はヒナタバー、きっかけ食堂から[1/14]
https://food-mileage.jp/2026/01/14/blog-618/
▼ 第8回 食と農の未来フォーラムの開催について
・日時 2026年2月17日(火)19時~21時
・テーマ「「日本人ファースト」って?『武士の娘』から考える」(仮題)
・ゲスト 釘島浩子さん
・開催方式等 オンライン(zoomを利用)
チケットを申し込んで下さった方には、終了後、アーカイブを配信予定。
・参加費 1000円(ゲストの方へのカンパに充てさせていただきます)。
現在、「日本人ファースト」との言葉に象徴されるように、外国人を排斥し多様性を否定するような言葉が声高に叫ばれています。一方、第2次世界大戦前のアメリカでは、各地で日本人移民に対して排他的な運動が展開され強制収容が行われました。そのような状況のなか、旧長岡藩家老の娘・杉本鉞子(えつこ)は英語で『武士の娘』を発表し、日米関係の修復に大きく貢献しました。
今回は、このテキストを基に、これからの誰もが生きやすい社会のあり方について考えます。詳細が決定次第、ウェブサイトやSNSで案内させて頂きますので、多くの方の参加をお待ちしています。
こちらからお申し込み下さい。
https://peatix.com/event/4846182/
(参考)杉本鉞子『武士の娘』
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480027825/
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-82778-0
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇 きっかけ食堂@オンライン-能登で続ける(下野農園の2年間)
日時:2月11日(水)18:30~20:30
場所:オンライン
主催:きっかけ食堂
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/2050089762391472/
〇 たべっぺし!いわてをカタライ、ひろがるカカワリ
日時:2月14日(土)17:00~21:00
場所:Salon de Zuppa(東京・千駄ヶ谷2)
主催:きっかけ食堂
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1195333226054071/
〇 『原発回帰を考える』出版記念イベント
日時:2月16日(月)19:00~
場所:渋谷 LOFT HEAVEN(東京・渋谷2)
主催:日本ペンクラブ
(詳細、問合せ等↓)
https://japanpen.or.jp/event-20260116/
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「所長、燃料棒を操作しようとするたびに警報が鳴るんです」
「抜き差しならない状況になるとは」
東京電力・柏崎刈羽原発6号機はようやく再稼働するも、不具合がありわずか1日で停止。
コツコツ小咄は個人のフェイスブックで週3日お披露目中。月ごとの「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.335は2月17日(火)[和暦 元旦]に配信予定です。いよいよ和暦でも新年を迎えます。
正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見・ご批判、ご要望等をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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